34.王都編⑩~仲間なんだから!〜
──世の中は理不尽にもオレの思ったようにはならない。
明日はオレとケルベルトの一騎打ちの模擬戦となってしまった。
どうやらあの第一王女、イチカさんはオレに勝たせる気はハナからないらしい。
ケルベルトはこの国の兵士長、オレにはどうやっても叶わないのだ。
「──お、お兄ちゃん、ちょっといいですか?」
今日は宿屋ではなく、明日の模擬戦のため王城に泊めてもらえることになった。
「あぁ、構わないよ」
そう言うと部屋のドアを開けてサエがオレの部屋に入る。
「──もしも、もしもですよ? 明日ケルベルトさんに一騎打ちで勝ったとしたら、リッカさんとけっ、結婚とかしたりするんですか?」
サエは言いながら扉を閉めて、オレの前に歩いて来て正座する。
「そ、それはだな……」
「──ヒ、ヒラガ? ちょっと話があるんだけれど」
──サエに続けてアンリィも部屋に入ってきたと思ったら、サエの横に少し不自然な格好で座ったあと、サエと全く同じことを聞いてくる。
「──だ、大丈夫だよきっと、これからも仲間として楽しく生きて行ければいいと思っているだけだし」
「本当にそうなんですかね? リッカさんもどこか満更でもない顔をしていた気がしますし」
「『も』ってなんだよ? オレは別に満更でもない顔をしていた訳ではないだろ?」
「あなたは何に関しても本当に自覚がないのね」
オレってもしかしてリッカのこと好きなの?
そんな顔してたの?
……てか酷いなその言われようは。
「まぁ、私はいいですけどね、家族が一人や二人増えるくらい」
「一人や二人ってなんだよ! 結婚するとは言ってないだろ?」
「まぁ、私もまた四人で冒険がしたいだけだし、家族が一人や二人増えても大丈夫だぞ。ヒラガには絶対に勝ってもらわないといけないのは変わらないし……そうね、ヒラガの意見が聞けてよかったよ、私はもう寝るわ。明日の模擬戦、頑張ってくれよ?」
「それでは私ももう寝るとします」
「あぁ任せとけ!」
──あの時任せとけとは言ったものの、勝てる自信が本当にない。
何かとっておきの秘策でもあれば良かったのだが。
「──ヒラガ、ちょっといい?」
もう皆寝たはずでは?
オレは恐る恐る扉を開けると、そこにはリッカが一人立っていた。
「──ちょっとだけいいかしら?」
そう言いながらリッカはオレの返答も聞かずにそのままオレの部屋に上がる。
何を意識してるんだ鈴木平賀!
理性を、理性を保つんだ!
オレは別にロリコンではないはずだ。
「……ど、どうしたんだ? こんな夜遅くに」
「もし、もしもよ? 明日ケルベルトに一騎討ちで勝ったとしたら、けっ、結婚とかって……どうするつもりなのよ?」
「へっ? 結婚!?」
落ち着け、落ち着くんだ……ただリッカはどうするのか聞いてきているだけだ。
……てかお前もその話かよ。
「サエには家族が一人や二人増えても構わないとは言われたが、オレは別に──」
「──か、家族が一人や二人!? そんなに先のことまで考えていたの!? わ、私はそうね……」
リッカは頬を赤らめながら動揺し始める。
「話は最後まで聞けよ、アンリィも言っていたがオレはまたみんなで冒険とかしながら気ままに人生楽しめればなと思ってるんだよ、別に結婚とかはまた別の話で」
「そ、そうよね……でも私はもう外には出れないわ、ケルベルトに散々説教されてやっと分かったの、私は皆が嫌う禁忌の魔法を操り誇っているようなやつだから、存在しちゃいけないんだって……」
「リッカ、存在しちゃいけない人間なんていないんだ、ケルベルトに何を言われたかわからないけど、オレはお前が必要なんだ、だって……仲間なんだからさ?」
言うとリッカは涙をグッと堪えたような顔をする。
「……ヒラガ?」
「オレがケルベルトをぶっ倒したら、リッカを連れて王都を出る、これは絶対だ、あとはさ──」
ヒラガの言葉を聞くだけで、もう逃げてしまいたいという気持ちが高まり、リッカは涙をこぼしてしまう。
「──もうやめて! 私は、私は………才能も何もない、私だって! 私だってお姉ちゃんみたいな凄い人になりたかった! でも私にはやっぱり……才能なんかなくて……それで──」
リッカは何かに落ち込んだような暗い顔をする。
「──禁忌の魔法に……手を染めてしまったのよ!」
「……だから家出したのか?」
「──そうよ、そんな犯罪者なんて国の、お姉ちゃんの名前を汚すだけ、だけど私はもう外には出ないと誓ったの、被害が出ないようにって」
「そんなの──」
「もうやめて! じゃ、じゃあ私はもう寝るわね、また明日」
リッカは涙を飛ばしながら部屋を出ていき走って行ってしまった。
「──禁忌の魔法に手を染めた、か」
リッカも色々と思うことところがあったんだろうな。
クラスメイトの才能のあるやつには多少憧れたり嫉妬したりもしたものだ。
──勝てる自信なんてこれっぽっちもないはずなのに、またオレは勝利宣言をしてしまったな。
まぁ、やれるだけやってみるしかないよな。
そう自分に言い聞かせてふかふかのベッドの上に寝そべり目を閉じた。
オレはこの時、リッカのこれからの人生を左右する存在になってしまっていたのだ。
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