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短編、明るめ

告白計画

作者: すもも

暗がりの会議室にパソコンの明かりがぼんやりと浮かび上がり、青白い光を浴びてサングラスの男は両手を顎の下に組んでいた。両端に座る男のひとりは唾をごくりと飲み、もうひとりは視線を真っすぐに一点を見つめていた。


「この度集まってもらったのは他でもない。そこに座る雨宮の告白計画のためだ」


ブルーライトがサングラスに反射して画面を映し出していた。ひとりの男はよろしくお願いしますと頭を下げ、もうひとりは頭をがくんと下げ机に頭をぶつけ、額をこすりながら顔を上げた。


「雨宮。お前の提案を聞こう」

「はい。会うのは夜の8:00。仕事終わりの金曜日です。高級レストランに予約をし、シャンパンで君の瞳に乾杯」

「バカ者!!」


怒鳴り声と共に拳が机に付けられ、コップのなかの水が揺れた。


「そんなデートしたいと思うか?俺は思わないな!付き合ってもいない男女がいきなり高級レストランに入って、シャンパンで乾杯だと?舞い上がりすぎていて気持ちが悪いわ!」

「ひぃ!では!付き合ってくださいと、指輪を渡すのはダメですか!?」

「ダメに決まっているだろう!」


再び机が叩かれる、コップが飛び上がって床に水がこぼれた。男は気にしない。


「付き合ってもいないのに指輪だと?女子の気持ちを言ってやろう。「あいつさー付き合ってほしいって指輪を渡してきてさーマジありえなくない?キモイんだけど」」


髪を指でくるくる巻き付ける仕草をしながら男が裏声で喋った。


「彼女はそんな喋り方しません!!今時珍しくヤバイって言葉も使わないくらいなんですよ!」

「それはヤバイな!」

「彼女はおしとやかな人なんです。怒鳴ることもしないし、清楚で清純で、なにひとつ汚れのない…そんな、そんな!この世の絶滅危惧種のような可憐な女性なんです!」

「ふむ。であればこそ、普通に食事に誘い、交流を持つのが一番だ」

「だから食事にって、」

「高級レストランではない!普通の店でいい!」

「それは…俺が普段行くような、大衆食堂でよろしいですか?」

「バカ者!!」


再び机が叩かれコップが床に落ちて転がったが、プラスチックなので割れることはない。


「きちんとネットを利用しようよ。女子が好みそうなカフェとかそういうのがあるでしょう!どうして君の選択肢はそう極端なの?」

「そ、そうですよね。…それがいいですね。分かりました!そうします!―あともうひとつ言わせてください。実はおれ、女の子がきゅんとしてしまう最後の切り札を持っているんですよ」

「ほほお」


サングラスの男は腕組をして興味深そうに男を見た、ノートパソコンがセーフモードに入って画面が暗くなってしまったので、サングラスの男はエンターキーを押した。


「おれフクロウを飼っているんです!うちに珍しいペットがいるから来てみない?と伝えるのはどうでしょう!」


机に両手をついて前のめりで雨宮が言うと、サングラスの男は拍手をした。


「いい!実にいい!ペットをダシに女性を家に連れ込む計画は素晴らしい!だが、早まるな。時期は大切だ」

「はい!!」


サングラスの男に褒められた雨宮は満面の笑顔を浮かべた。


「して、君の意中の開いての名前はなんだったかな」

「え、は、はい」


男は照れながらも思い人の女性の名前を告げた、サングラスの男はお似合いだ。と満足そうに頷いて、頑張れ、これからも応援していると強く、硬く、握手を交わした。そこに今までずっとつまらなそうに何もしゃべらずに聞き手に専念していた男が口を開いた。


「あのさ。言いにくいんだけど、その子金持ちの彼氏がいて、もうすぐ結婚するって言ってたよ」


握手を交わしたまま二人は凍り付く。


「清純とか言っていたけど、彼女かなりやり手だよ。合コンとか、婚活とか行きまくってて、ステータス高い男じゃないと近づかないうえ、やり方がかなりえげつないって女子にすげー言われてたし。女に夢見すぎじゃないですか?」


言いながら男は立ち上がってぱちりと電気をつけた、会議室、もとい会社の事務室に男がふたり、お粗末な蛍光灯の下にさらされた。


「じゃ、お先です」


手を上げて男は去っていった。しばしの沈黙の後、嗚咽を漏らして雨宮は泣きだした。サングラスの男はサングラスを外して同僚の背中を優しくたたいた。

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