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二人目は、馬車馬の如く働かせてしまう様です。

 異世界生活八日目。

 朝、目が覚めると、トウカさんに絡み付かれておりました。

 昨日あんな事があっただけに、思わずお互いの衣服の乱れを確認してしまいましたよ。

《動揺し過ぎです。何事もありませんでした》

 うん。そうは言われても、動揺するでしょう?普通。

「···おはようございます、ご主人様」

「うん、おはよう。とりあえず、解放してくれる?」

 非常にゆっくりとした動きでベッドから這い出し、着替え始めた。

 理性フル稼働中。

 俺はささっと着替えを済ませ、何の気なしにに窓の外に目を向けると、暗い雲がたちこめていた。

「雨でも降るんかな?濡れる前に帰って来られると良いんだけど」

 朝食を済ませ、ギルドに向かう。

 昨日よりはやや落ち着いているものの、それでも騒々しい事に変わりはなかった。

 いつになったら落ち着くものやら。

 掲示板から、いくつか依頼を選ぶ。

 主に、期限が近いものや長らく放置されていたであろうものを中心に。

「あの、昨日も思ったのですが、なぜご主人様はこのような依頼を選ばれるのでしょう?もっと、簡単に稼げる仕事もある、と思うのですが」

「うん、なんとなく?この手の依頼なら、他の冒険者と競合する事も無いし、ギルドからの評価も悪く無いだろうし」

 ま、理由は後付けですが。

 今回の仕事は廃鉱山の調査と、その近辺の魔物の討伐です。

 いつまでもギルドに長居して、ガラの悪い冒険者にからまれるのも嫌なので、さっさと出発する事にした。

 少々距離があるらしいので、軽く走って行こうかな。

 レベルが上がった事で体力も上昇、長距離のランニングも余裕です。

 トウカの速度に合わせ、休憩もしっかり挟みつつ、それでも二時間ちょいで到着した。

《一般的な速度なら、移動だけで半日はかかる距離です。自重して下さい》

 移動手段も考えるべきかな。

 馬車的な、なにか。

 でも車体だけじゃなく、それを引く生き物、普通だと馬、の維持費とかかかるしなぁ。

 悩みどころですよ。

 うん、これが済んだら本格的に考えよう。

 今回の仕事、廃鉱山に何故調査が必要かというと、定期的に見回って変なものが住み着かないように、との事らしい。

 だったらそんな場所は、塞いでおけと言いたい。

 普通は、暗い穴を好む魔物であったりするのだが、今回はどうもハズレを引いたようだ。

 早々に【忍びの心得】を使っていて良かった。

 古びた坑道の入り口に、隠れるように立つ二人の男達。

 詳しく【分析】してみると、共にLv.10の称号『盗賊』だった。

《坑道内部に、十二人の盗賊がいるようです。また盗賊とは別に、獣人族も確認しました》

 う~ん、十四対二か。

 大分不利だな。

 せめて、魔法以外の遠距離攻撃手段があれば良かったんだけど。

 そこらの石でも投げつけてやろうかな。

「ご主人様、奴らが動くようです。どう致しますか?」

 心配そうに見つめられてしまった。

 しっかりしないと。

「まず、見張りの二人を制圧する。なるべく命は奪わない方向で」

 こんなの作戦じゃないし甘い考えだけど、そこまでの覚悟はまだ出来てない。

 まぁ仮に?トウカの命が危険な時は、一線を踏み越える覚悟はあるけれど。

 姉さん、サポートよろしく。

《了解しました。いつでもどうぞ》

 足元から手頃なサイズの石を拾い上げ、『手加減』と念じながら見張りめがけて投げつける。

《スキル【投擲】を習得しました。【忍びの心得】に吸収統合されました》

「がっ」「ぐっ」

 小さく呻き声を上げて、見張りの二人は倒れ込んだ。

 急いで近寄り、二人のベルトを利用して拘束する。

 うん、生きてて良かった。

《一度に大量のHPを失うと『気絶』という状態異常にかかる事があります》

 どうかしばらく、目、覚ましませんように。

 坑道は、なだらかに下っているようだ。

 下に行けば行くほど道も枝分かれしていて、侵入するには分が悪い。

 うん。さっき捕まえた二人を囮にするか。

 奴らに仲間意識があれば良いんだけど。

 トウカに二人を預け、坑道の入り口部分に細工を施す。

 そして、わざと大きな声を内部に響かせた。

「敵襲だ!」

 坑道の奥から、足音が響いてくる。

 囮の二人を入り口から見えやすい位置に放置し、全体を見渡せる岩影に身を隠す。

 周囲を警戒しつつも口汚く罵りながら、囮の周りに集まり出した。

 そのタイミングを見計らい、仕掛けておいた魔法を発動させる。

「土魔法『ピット』」

 囮の二人を残し、その周囲を深さ四メートルほどのドーナツ状に陥没させた。

 最悪、運が悪ければ命も危ないだろうが、まぁ怪我ぐらいは覚悟して貰おう。

 因果応報ってやつだ。

「スゴいです。一網打尽ですね、ご主人様」

 そう感心してくれたけど、イマイチ腑に落ちない。

 あっさりし過ぎてないか?

《穴の底の盗賊の数が一致しません。三人取り溢した模様です》

 二人が入り口の影から外を警戒し、残る一人が奥からナニカを引き摺り出してくる。

 囚われていた獣人族を指し示す光点が、その一人と重なっていた。

「おらぁ!聞こえてるか、このクソ共が!」

 うん、ありがちデスヨネー。

 自分の身に危険が迫ったら、他人を盾にする親玉って。

 盾にされた獣人族は、人の上半身に馬の胴体の、いわゆるケンタウロスと言われる種族でした。

《正しくは、人馬族と呼称されています》

 しかも、と言うかなんと言うか。

 鎖に繋がれた、ほぼほぼ全裸の女性です。

 正直、目のやり場に困る。

 そんな状態で、喉元に剣を突き付けられていた。

「ご主人様、どう致しましょうか?」

 う~ん。ステータス上では、俺もトウカも奴等より上なんだけど。

 ぼやぼやしてたら、穴の底の盗賊達から、動ける奴が出てくるだろうし。

「私が囮となって、奴等の目を引き付けましょうか?」

「いや。隙は俺が作るから、トウカはあの人馬族をお願い。」

 うん、この期に及んで、しり込みしてる場合じゃないね。

 痺れを切らした盗賊達が、ジリジリと顔を出し始めていた。

「土魔法『ストーンハンズ』」

 岩肌から出現した、石で出来た複数の右手が、三人の四肢をそれぞれ拘束する。

 何で右手なんだろう?利き手だからかな。

 パッと見、ホラーチックです。

 慌てる盗賊達のその隙を突いて、トウカは人馬族の女性を離れるよう誘導する。

「オレ様の大事な商品になにしやがる!このクソ亜人が!」

 そんなに大事なもんなら、盾にするなと突っ込みたい。

 放置してても五月蝿いだけなので、さっさと気絶させて縛り上げておこう。

 穴の底の奴らも『ストーンハンズ』で引き上げ、纏めて拘束する。

 その際、新しいスキル【縄術】を習得した。

 糸や紐、縄などの扱いが上達するスキルらしい。

《【忍びの心得】に吸収統合しました。どのような縛りプレイも思うがまま、です》

 俺にそっち方面の趣味はありません。

 ぽっかりと空いた穴も、魔法で元に戻しておいた。

 使用済みの穴は、埋め戻すのが基本です。

 これでこっちの問題は片付いたかな。

 残りは、と。

「ご主人様、彼女の処遇はいかが致しましょう?」

 目の前には、人馬族の女性の姿があった。

 うん、頭痛が痛い話です。

 というのも、トウカの説明によれば、盗賊を捕縛した場合、彼らの所有物は捕縛した者に所有権が移るんだそうだ。

 その上で、盗難届け等が出されていた場合は、元の所有者が買い取ったりする事もあるのだとか。

 今回は俺とトウカの二人に所有権がある、らしいけど。

 でも彼女は「奴隷の所有物は全て主人の物」と言い張っているので、結果、全部俺の物らしい。

 隷属の首輪を嵌められていた、人馬族の女性自身も含めて全部。

 もう一度言います、頭痛が痛い話です。

 確かに、移動手段として馬とか馬車とか考えてたよ?

 でもそれは、こういう事じゃあ無い。

 すると、人馬族の女性はその場に跪くと、おもむろに口を開いた。

「くっ。これ以上、誇り高き戦馬一族を辱しめるつもりなら、いっそ殺せ!」

「いや、何もしませんよ!?」

 まさかのくっ殺さんですか?

「わかっております。様式美、というやつです」

 そんな様式美は捨ててしまえ。

「それよりも、戦馬いくさば、ですか?」

「はい。わたくしは、人馬族の中でも一際武芸に長けた、戦馬という一族の出身なのです」

 こっそり彼女のステータスを確認すると、確かに戦馬族とある。

 能力値的には、盗賊達より強そうに思えるんだけど。

 スキルも良さげなの持ってるし。

「わたくし、遥か東の国から武者修行の旅の途中だったのですが、ある村人に騙されてしまい···」

「奴隷にされた、と」

「はい。その人の本性を見抜けなかった、わたくしが悪いのです。ですが良かった点も一つありますから」

 うん、俺を見る目に嫌な予感がするね。

「安心して下さい。わたくしの身体は、清らかなままです」

「うん、それについては訊いてないからね?えぇと、これからの身の振り方は」

「わたくしの所有者は、貴方様です。どうか、貴方様のお側に」

 どうも話が早すぎる。

 ふと、トウカに視線をやれば。

 あからさまに視線をそらされましたよ?

 いったい何を吹き込めば、こんな態度になるのやら。

《詳しく聞きたいですか?後悔しませんね?》

 姉さんは知ってるらしい。

 俺、ハブられてます。

 まぁ、慣れてるけどね。

《戦馬族の女性を仲間にしますか? はい/YES》

 俺の目が悪くなった訳では無く、そもそも選択肢が用意されていない様だ。

 つまり、俺に拒否権は無いらしい。

「分かった。その代わり、後で後悔しないように」

「えぇ、大丈夫です。早速ですが、わたくしに新しい名前を戴けないでしょうか?」

 あぁ、また名付けかぁ。

 なんか良いの、出て来ないかな。

 頑張れ俺の頭脳。

 150cm近い体高とか、黒くも見えるほど濃紺の毛色とか、見た目で連想するにも限界ってもんがあるんですよ?

 どうしても馬の品種名しか出て来ない。

 バレないよう、しっかりもじっておいて、と。

「フリーシャ、ってのはどうだろう?」

「まぁ、可愛らしい名前。わたくし、気に入りました」


 名前 フリーシャ         性別 女

 種族 戦馬族           状態 疲労

 Lv.27            称号 魔王(仮)の配下

 HP  270/540 MP  185/185 ST  43%

 STR  40  VIT  42  INT  16

 MND  40  AGL  42  DEX  21

 所有スキル

 【両手槍Lv.21】【長弓Lv.16】【体術Lv.11】【蹴術Lv.18】【重鎧行動軽減】【悪路踏破】


 いくつか初見のスキルがあるね。

《【重鎧行動軽減】は読んで字の如く、重鎧に分類される装備を身に付けた際、重量による制限を軽減します。例えば、スタミナの減少速度の遅延やAGLの制限解除等が代表的です。また【悪路踏破】は、ぬかるんだ道や砂利道等でも、安定して走れる様になるスキルです。これも、スタミナの減少速度遅延効果があります》

 うん。馬車を引かせる気満々のスキル構成の様です。

 馬車そのものを手に入れてないので、まだ先の話だとは思うけど。

 ですよね?

 拘束した盗賊達を二人に任せ、坑道の内部を確認する事にした。

 決して、ほぼ全裸状態のフリーシャの、目のやり場に困ったからでは無く。

 盗賊達が溜め込んだとされる、お宝の回収がメインです。

 それはまぁ、姉さんのお蔭であっさり見つかったんですが。

「こんな街から近いのに、よくもまぁ溜め込んだもんだ」

 いや、逆かな?

 片手剣と中盾、ハーフプレートアーマー?のセットが五十組。

 狩弓が同じく五十張。それと矢は、それぞれ百本ぐらいは行き渡る本数がある。

 他にも、槍だとか斧だとか、怪しげな薬品だとか、色々物騒な感じ。

 それに混じって、申し訳程度の美術品や宝石の類いがちらほらとあった。

 もしかして、換金した後だったのかな?

「どこか襲撃する予定でもあったのかな?」

《おそらく、その予想は正しいかと》

 見つけてしまいましたよ、襲撃計画書。

 意外としっかり計画出来る知恵はあった様です。

 それとも、外部からの入れ知恵、とか?

「まさか、ね」

 とりあえず、全部回収です。

 判断は、上の人に投げましょう。

 今の俺に必要なのは、盗んで来たと思われる品、を包んでいた大きな布の方です。

 フリーシャ用の服を作る為に。

 彼女は下半身が馬な為、予備の服は一切役に立たないからだ。

 それと余談だけど、フリーシャはトウカと違い、体の一部分がたゆんたゆんです。

 そんな彼女がほぼ全裸状態なんだから、色々困るのは仕方ないよね?

 元気な男の子ですもの。

《貴方の希望した通り、下半身の馬の部分も含めた衣服の製作が終了しました》

 いわゆる馬着ばちゃくって奴です。

 でもこうして見ると、胸の部分の布地がすんごい。

《渾身の立体裁断です》

 姉さんがドヤ顔してる光景が浮かびます。

 うん、取りこぼしも無いね?

 上に戻ろう。この中、結構臭うし。

 一応出る際に、全域に『クリーン』をかけておいたけど、どこまで臭いが消えるのかね。

 まずはフリーシャを『クリーン』で隅々までしっかり洗浄してから、下着も含めて渡し、着て貰う。

 しっかりと、長い濃紺の髪をすき束ねる辺り、長い洞窟生活を思わせた。

 布にそれほど余裕が無かったので全体的にシンプルだけど、これで一応は大丈夫。

 何が?とは訊かないで欲しい。

「では改めまして。戦馬族がひとり、わたくしフリーシャは、この命ある限り、時に若様の剣となり、時に盾となり、共に戦場を駆けましょう。末長く、宜しくお願い申し上げます」

「こちらこそ、よろしく···若様?」

 流せませんでした。

「はい。それとも『殿』の方がお好みでしたか?」

「いやいや、城主じゃ無いんだから『殿』はちょっと。じゃなくて何で和風?」

「わふう、とは何でしょう?これはわたくしの故郷に伝わる、お仕えする方への敬称ですが?」

 いくら説得しても変えてくれないので、その辺はもう好きにさせる事にした。

 呼び方で何が変わるって訳でもないしね。

 その後、盗賊達が近くに隠していたボロい馬車を見つけた時は、もう絶望しましたよ。

 運命論者じゃ無いけどさ、ここまでお膳立てされたらもう、フリーシャに引かせろって言われているみたいだ。

 ご都合主義は基本的に嫌いです。

「わたくしが早速お役に立てるとは。戦馬族冥利につきます」

 喜んでいるっぽいのが、唯一の救いか。

「それにしても、元々の馬はどうしたのでしょうか?」

「車体の傷から察するに、これはどっかの商会の物を盗賊達が奪ったんだろうな。馬はその時に」

 もったいない。馬に罪は無いのに。

 フリーシャの指導とリーディア姉さんのサポートの下、車体とフリーシャを繋ぐ。

「初めて運ぶ荷物、があんなもので悪いけど」

「構いません。若様の役に立つ事こそ誉れですから」

 荷台には、総勢十四名の盗賊がみっちりと詰められていた。

 御者台に座り、形だけの手綱を握る。

「それじゃあ、フリーシャ。お願い」

「かしこまりました。では出発します」

 彼女の歩みに合わせて、車体が進んで行く。

 足回りにガタが来てなくて、本当に助かった。

 もしこれが無かったら、街まで徒歩でコイツらを連行しなきゃいけなくなっていた。

 街に戻ったら、本格的に直すか、新しいのを手に入れるか、考えないと。

 行きに二時間ほどの距離を、帰りはその倍の時間をかけて進んだ。

 後ろから「酔った」とか「尻が痛い」とか甘えた台詞が聞こえて来たけど、一切無視ですよ。

 ちなみに休憩中、もう一つの依頼の魔物が姿を表したので、サクッと討伐しておきました。

 人と同サイズの蟷螂って怖いよね?

 蟷螂の鎌の部分が欲しかったらしい。

 魔物素材を使用した、武器職人からの依頼でした。

 確かに、武器に転用出来そうなくらい鋭いけれども。

 個人的には、見た目がイマイチです。

「今さらな疑問だけど、このまま街に向かって大丈夫かな?盗賊満載だし、馬車はこんなだし」

「盗賊に関しては、外門の衛兵に話せば問題無いのではないでしょうか?」

「馬車も、平気です。商会の、証が、記されて、いるような、特注品では、ありませんから」

 結論。

 心配する事ありませんでした。

 盗賊達は、懸賞金が付いている様な大物じゃ無かったので、一人につき銀貨一枚。

 大物になると、金貨レベルの懸賞金が付くらしい。

 うん、関わり合いになりたくないね。

 フラグにならない事を祈ろう。

 盗品に関しては、ギルドで管理している、と教えられた。

 ギルドに向かうその前に、あの古着屋へと足を向けた。

「あんちゃん、俺ぁ頭が痛ぇよ」

「奇遇ですね、俺もです」

 フリーシャを見たおっちゃんの第一声でした。

 流石に店内に連れ込む訳にもいかないので、代わりに出てきて貰ったら。

「もう、何から突っ込めば良いんだ?!」

「あなた、騒がしいわよ」

 奥さんの、ボディへの一撃で沈むおっちゃん。

 前にも見たな?

「それで?今回は何が欲しいの?」

「上半身用のは、サイズさえ合えば問題無いと思うんですが」

「そうねぇ。かなりおっきいけど、ね。問題は別よね」

 馬部分を見上げ、溜め息を吐く奥さん。

「なので、どこかで生地を購入出来れば、と思いまして。心当たりありませんか?」

 それなら、と紹介して貰った主に生地を扱う商会で、色んな種類の生地を見せて貰ったけど、古着屋の奥さんの紹介じゃなかったら、きっとカモられていたんじゃないかな。

 専門用語で説明されても分からないので、色んな種類の生地を大量購入です。

 一応、用途は伝えてあるので、そう変な物は見せられて無いとは思うけど。

 必要経費とは言え、なかなかの出費です。

 後は、姉さんの腕の見せ処ですね。

《仕方無いですね。この優秀な姉に、まかせておきなさい》

 うん、頼れる姉を持って幸福者です。

 次はギルド、ですね。

 フリーシャは今回も中に入れないので、外で待っていて貰ってる。

「···は?」

 ギルドカードを確認した、赤毛の職員の第一声が、これでした。

「頭が痛いわ」

「それは大変ですね、早く休んだ方が良いと思います」

「誰のせいよ!?」

 はい、俺ですね。

「何で、調査に行って盗賊捕まえてくるのよ。普通、さっさと逃げ帰ってくるものよ?」

「次があったら、そうします」

「いやいや、そういう話じゃなくて。はぁ、もういいわ」

 調査と討伐の報酬を受け取り、残る問題は盗賊達のお宝。

「ギルドに預けて貰えれば、諸々の手続きはやっておくけど?」

「それ以外に方法あるんですか?」

「···それもそうよね」

 ただ、それの目録を作るのだけが少し面倒だった。

 一度荷台に出し、倉庫に運び込んで確認しながら、だからね。

 ちなみに、フリーシャを見た赤毛の職員さんの態度はというと。

「チッ」

 何が気に入らなかったんでしょうね?

 目録も作り終わり、空になった馬車を引かせるのもなんだし。

 いっそ【道具箱】に入らないかな?

 うん、入りませんでした。さすがに大き過ぎるか。

《フリーシャと繋がっているのが原因です。外せば問題ありません》

 入るんかい。防犯面では、確かに助かるけれども。

「それで?あの子も冒険者登録するつもりなの?」

「えぇ、そのつもりですよ?何か問題でも?」

「大有りよ?床が抜けても、責任取らないからね」

 幸い、その様な事態にはならなかったものの、別の問題が発生した様な気がする。

 周囲の囁く声が聞こえて来る。

「あいつ、何で亜人ばっかり」

「まさか、そういう趣味?」

「でも、片方馬だぞ?」

「あの胸を見てみろよ」

「あれなら他には目ぇ瞑れる」

「最低」

 うん。酷い言われようです。

 さてと、そろそろ良い時間だし、宿に戻ろうかね。

 宿、大丈夫だよね?

「うわぁ、初めて見ました。馬の亜人さん」

「ごめんなさいね、流石にうちでも、あの子は上げられないわ」

 アタリマエデスヨネー。

「裏に小さいけど馬小屋があるから、そっちに回ってくれる?」

 一緒に裏に回ると、四頭が入れば一杯になる馬小屋があった。

 他に馬はいないものの、キチンと掃除されているようだった。

「心配いりません、若様。わたくし達人馬族にとって、これが普通です」

 不安というか不満?が顔に出ていたらしい。

 心苦しいけど、どんなに悲しくても腹は減る。

 と、そこで一つ大きな疑問が。

 フリーシャの食事、どうしよう?

 出会った時は、何も考えずに俺達と同じ物を提供したし、彼女も何も言わずに口にしてたけど。

 種族的に食べちゃいけないものとか、無かったんだろうか?

「個人的な好みはありますけど、基本的に無いと思います」

「良かった。いや、ごめんね?不勉強なもんで」

 本当に良かった。この時ばかりは謎仕様万歳ですよ。

 三人一緒の食事を済ませ、フリーシャに『クリーン』をかけてから、部屋に戻った。

 うん、色々疲れた。

 体もそうだけど、精神的に、が主だと思う。

 今ならぐっすり眠れる気がする。


 名前 シオン・クレナイ     性別 男

 種族 人族           状態 疲労

 Lv.8            称号 異邦人

 HP  620/640  MP  220/460  ST  33%

 STR  58  VIT  57  INT  69

 MND  72  AGL  58  DEX  61

 所有スキル

 【武芸の心得Lv.8】【魔導の心得Lv.5】【盾魔法Lv.7】【付与魔法Lv.8】【物理耐性Lv.4】【全属性耐性Lv.1】【毒耐性Lv.2】【魔梟の瞳Lv.8】【忍びの心得Lv.6】【MP自然回復Lv.6】【錬金Lv.9】【合成Lv.4】【加工Lv.7】【習得】【分析】【道具箱】


 名前 トウカ          性別 女

 種族 爬鱗族          状態 普通

 Lv.7            称号 異種族に求愛された者

 HP  220/222  MP  149/149  ST  50%

 STR  28  VIT  29  INT  23

 MND  23  AGL  27  DEX  27

 所有スキル

 【斧槍の使い手Lv.2】【格闘術Lv.2】【物理耐性Lv.2】【全属性耐性Lv.1】【警戒Lv.2】【料理Lv.9】


『頭痛が痛い』は、誤字でも誤表記でも無いので、許して下さい。

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