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スキル【習得】さん、頑張った様です。物理編

 訓練二日目。

 今日も、昨日と同じように暗殺メイドさんに叩き起こされ、講義に向かった。

 昨日までとは違い、朝からワクワクが止まらない。

 そう。今日は魔法についての講義なのです。

 異世界に来たのなら、魔法は外せません。

《ハシャギ過ぎです。もう少し落ち着きましょう》

 っと、姉さんに叱られちゃったよ。落ち着け、俺。

《魔法についてなら姉である私が、懇切丁寧に指導してあげても良いんですよ?》

 ひとまず、向こうの講義を聞いてから、ですよ。姉さん。

「それでは、勇者様方に魔法についての講義を始めさせて頂きます」

 そう前置きして始まった講義の内容について。

《ほとんど間違っています》

 姉さんご立腹です。

 例えば。

 魔法とは、呪文を詠唱し、MPを消費して精霊の力を行使する術である。

《禁術クラスや古代魔法ならともかく、現在の魔法の場合、イメージさえしっかりしていれば詠唱は必要ありません。また、通常の魔法に精霊は一切関係ありません。別口で、精霊魔法が存在します》

 小清水が二重詠唱スキルを持ってなかったっけ?あれも意味無いの?

《あれは、二種類の魔法を同時発動する為の補助スキルです》

 属性毎に下級、中級、上級の三等級に分かれている。

《下級と上級の二種類です。力量不足を棚に上げて、勝手に等級を増やさないで頂きたいものです》

 属性は、火、水、風、土、光、影の下位六種。炎、氷、雷、大地、神聖、闇の上位六種の合計十二種。

《下位では無属性が、上位では純属性が抜けています。合計十四種です》

 その内、影属性と闇属性について、人族には適性がなく使用出来ない。

 使えるのは魔族や魔物のみ。

《適性がなくても、使用は可能です。適性はあくまで得意分野の一つ、でしかありません。適性と合致する属性の場合、威力は120%、消費MPは80%となります。人族が潜在的に忌避しているだけで、使用は可能です》

 生活に便利な魔法、例えば着火や乾燥、洗浄等の生活魔法がある。

《その様な魔法区分は存在しません。いずれも、各属性魔法の一部に含まれます》

 それにしても、ずいぶん詳しいんですね。姉さん。

《スキル【習得】には、過去の所有者達が獲得済みのスキル情報が蓄積されています》

 その中に、魔法が得意な方が居た、と。

 じゃあ、もしかして魔法覚え放題とか?

《いいえ、スキル獲得の為には、そのスキルに則した行動を取る必要があります》

 あれ?じゃあ、魔法スキルを覚える為には魔法を使わないといけない?

 ちょっと矛盾してない?

《はい、そうなります。ですので、魔法スキルを習得する場合、方法はいくつかに分かれます。一つは、覚えたい属性の魔法を体験する事。一つは魔法を封じた巻物を使用する事。もう一つは魔導書を読む事、の三つが主な手段です》

 あとは神様から授かる、とか。勇者達はこっちだね。

 それぞれ問題点も有りそうだけどね。

 覚えたい属性魔法を使って来ないとか、巻物は高価な使い捨て品とか、魔導書は貴重で手が届かないとか、容易に想像出来る。

 図書室の使用許可は貰えたから、その辺の問題が解決出来れば良いんだけど。

「では、これより皆様の魔法適性を調べさせて頂きます」

 講師が取り出したのは、謁見の間で見た物に良く似ている気がする。

《鑑定機能を魔法適性に特化させた物の様です》

「カザマ様からお願いします」

「分かりました」

 風間が宝玉に手を乗せると、透明な宝玉が緑、黄、白の輝きを放った。

 所有スキルで考えると、風、雷、光だろうか。

 焔藤が、不安定な明滅を繰り返す赤。火属性か?

 小清水は、水色と濃い青の二色。こうなると水と氷で間違い無さそうだ。

 石動は薄茶色。土属性だろう。

 こうなると、俺は何色なんだろうね?

《鑑定を行う前に、一つ確認したい事があります》

 宝玉に手を置く直前に、リーディア姉さんが話し掛けてきた。

《貴方は、力を知らしめたいですか?それとも、隠しておきたいですか?》

 姉さんがそんな事聞いて来るなんて、珍しい気がする。

 う~ん、出来れば隠しておきたい、かな。

 今目立っても、良い事は無さそうだし。

《分かりました。では、鑑定の宝玉に干渉します。宝玉に手を置いて下さい》

「勿体ぶったって、どうせ大した事無ぇんじゃね?」

 宝玉に触れると一瞬輝いたものの、その後は反応する事は無かった。

「今のは何だったんでしょう?今まで見たことも無い反応でしたが」

 講師が触れると何事も無く光ったので、そういう光り方だった、と結論づけたみたいだ。

 その結果、俺には魔法適性は無い、と判断された。

「勇者でも無ぇ、魔法適性も無ぇなんてダッセェ」

 魔法の基本講義はこれで終わり、次は着替えて訓練所に集合と言われた。

 着替えに戻るまでの間に、姉さんにさっきの事を訊ねてみた。

 干渉、とか言ってたし。

《はい、その通りです。鑑定機能に干渉し、その効果を一時的に無効化しました。目立ちたくないとの希望でしたので》

 そんな事も出来たんですね。姉さん凄い。

 因みに、俺の魔法適性って、何だったんですか?

《気になりますか?では、教えてあげますね?貴方の魔法適性は、全属性に適性があります》

 ゼ、全属性デスカ。チートデスカ?

 これも魔王候補の影響ですかね?

《おそらくその通りかと。優秀な弟を持って、姉は鼻が高いですよ》

 うん。鼻、あるんだ。


 訓練所は、100×150メートル程の広さで、ちょっとしたグラウンドを連想させた。

 その周囲を、高い壁と観客席が取り囲んでいた。

 無人の観客席っていうのも、変な感じがする。

 魔法の訓練を免除された俺は、一足先に武具を使った訓練を受ける事になっている。

 そこで待っていたのは、騎士のリリトアさんだった。

「貴方の指導教官を務めさせて頂きます、リリトア・フラムヴェルです。改めてよろしくお願いします」

「よろしくお願いします」

「先ずは、自分に合った武具を選ぶところから始めましょうか?」

 ズラリと並んだいくつもの武器に、ワクワクが止まらない。

《どんなに落ち着いて見えても、そういう所は男の子ですね》

 色々あるけど、まずは自分では選ばなさそうな物から手にしてみる。

 両手槌。持ち上がるけれど、重さに振り回される。却下で。

 片手槌。両手用に比べれば、遥かに扱い易いけど、趣味じゃ無いので却下。

《スキル【両手槌】【片手槌】を習得しました。二つのスキルを統合して、スキル【戦槌の使い手】に進化しました》

 両手斧。槌ほどじゃないけど、重さに振り回されます。却下で。

 片手斧。う~ん、あれば便利なんだろうけど、イメージ的にあんまり良くない。

《スキル【両手斧】【片手斧】を習得しました。二つのスキルを統合します。スキル【戦斧の使い手】に進化しました》

 両手槍。長過ぎて扱い難い。却下で。

 片手槍。短槍ともいう。軽くて扱い易い。リーチもそこそこあるし、保留かな。

《スキル【両手槍】【片手槍】を習得しました。スキルを統合します。スキル【武槍の使い手】に進化しました。続けて【戦槌の使い手】【戦斧の使い手】【武槍の使い手】を統合します。スキル【斧槍の使い手】に進化しました》

 長弓。射程は広いけど、弦を引くのに力が必要かつ取り回しが大変。却下。

 短弓。速射性能は優れるけど、射程は短い。ソロでどうしろと。却下で。

 狩弓。射程や扱い易さに関しては、バランスは良い。う~ん、保留で。

《スキル【長弓】【短弓】【狩弓】を習得しました。スキルを統合します。スキル【戦弓の使い手】に進化しました》

 長杖。魔法威力の強化に重きを置いている。魔法が使えない事になっているので、却下。

 短杖。消費MPの減少に重点を置いた、某魔法映画にも出ていそうなアレ。やっぱり却下で。

《スキル【長杖】【短杖】を習得しました。スキル統合し、スキル【魔杖の使い手】に進化しました》

 両手剣。両手斧と同じくらい重く、やっぱり振り回されます。却下で。

 長剣。バランスは良いんだけど、風間と同じ物を選ぶのもな。却下。

 細剣。いわゆるレイピアとかエストックとか。なんかナルシストな騎士とかが使ってるイメージが強い。却下です。

 小剣。長剣より短く、扱い易さは抜群。剣に慣れるにはちょうどいいかも。

 短剣。ナイフや少し大振りなダガーなどの事で、汎用性は一番。だけど、焔藤と一緒になるのが目に見えてるので却下。

《スキル【両手剣】【長剣】【細剣】【小剣】【短剣】を習得しました。スキル統合します。スキル【闘剣の使い手】に進化しました。続けて【斧槍の使い手】【戦弓の使い手】【魔杖の使い手】【闘剣の使い手】を統合進化します。スキル【武器の心得】に統合進化しました》

 おおぅ、なんか一気に来たな。

 複合スキルなのは大体分かったけど、斧槍って?

《斧、槍、槌の特性を兼ね備えた、ハルバードと呼ばれています》

 複合武器か。ロマン武器とか言われちゃうんだけど、俺はそういうの結構好きなんだよね。

 でも、ここには無いから小剣を選択。

 うん、良い感じ。

 大盾。俺の身長でも、すっぽり隠れてしまえるほど大きくて、扱いが大変なので却下。

 中盾。これも風間と一緒になりそうなので、却下です。

 小盾。手首から肘までの大きさ、動き易さもちょうどいい。これかな。

《スキル【大盾】【中盾】【小盾】【盾魔法】を習得しました。【大盾】【中盾】【小盾】を統合。【剛盾の使い手】に進化しました。【武器の心得】に【剛盾の使い手】が吸収統合されました》

 また増えた。自分のスキルを把握するのも一苦労です。

 今度は【盾魔法】?

《【盾魔法】とは、いずれかの盾を装備時に使用可能になる魔法です。様々な効果の盾を生み出し、一定ダメージを肩代わりします》

 ソロでの活動を余儀なくされる身としては、守りを固める術は多い方が良い。

「使用する武器は決まりましたか?」

「あ、はい。小剣と小盾を」

 左腕に盾を、右手で剣を構え、教官に正対する。


 名前 リリトア・フラムヴェル  性別 女

 種族 人族           状態 普通

 Lv 38           称号 落ちこぼれ

 HP  310/310  MP  112/112  ST  99%

 STR  38  VIT  35  INT  33

 MND  40  AGL  39  DEX  25

 所有スキル

 【長剣Lv.33】【中盾Lv.28】【指揮Lv.26】


 あ。教官て、女性だったんだ。ずっと線の細い男だとばかり。

「では、基本中の基本。素振りから始めましょう。でも、ただ闇雲に振るのでは無く、キチンと相手をイメージしながら、ですよ」

 なんとなく人の形を想像しながら、袈裟斬り、逆袈裟、斬り上げ、斬り下ろし、胴、逆胴、突きなど、おおよそ考えられる動きで素振りを繰り返す。

「なかなか良い動きですね。スキルでも生えましたか?」

「スキルが生える、ですか?」

 植物が生える様を想像してしまう。

「修練を積んでスキルを覚える事を、生える、と表現するんですよ。こんなに早いのは珍しいですが。と、それはさておき。これで心おきなく、次に進めますね」

 教官は、スラリ、と訓練用の長剣を抜くと、俺に切っ先を向けた。

 そして、実に良い笑顔で斬りかかってきた。

 上段からの一撃を盾で受け止め、弾き返すと距離を取る。

「反応は悪くありませんね。ですが、盾の使い方がなっていません。小盾の場合、受け止めるのではなく、受け流す事を心がけなさい。次からは、出来たら反撃してくるように」

 袈裟斬りを、やや斜め前に踏み込んでかわし、空いた胴を薙ぐ様に剣を振るが、届かなかった。

「武器のリーチが短いぶん、もっと踏み込みは深く。当てるのではなく、その先を斬り裂くつもりで」

 長剣に意識を向けていたら、次の瞬間には目の前に盾が迫っていた。

 そして、かわす間もなく殴られました。

《スキル【打撃耐性】を習得しました》

「剣に意識を集中しているのが丸分かりです。攻撃方法は武器だけとは限りません」

 数歩後ろに下がって距離を取ると、今度は盾を突き出した体勢のまま、突っ込んで来た。

 また盾で殴りに来た、と横に大きく避ければ、動きが読まれていたようで、盾の陰から剣で突いてきた。

 首を捻ってかわすが、頬を浅く掠める。

《スキル【体術】【刺突耐性】を習得しました》

「避ける動作が大きいと相手に読まれ易いですよ。避ける時は最小限の動きを心がけなさい。そして、常に最良と最悪な状況を考え、二手先、三手先を想定して動くように」

 また盾を突き出した体勢で、距離を詰めてくる。

 盾で来るか、突いて来るか、それとも別の手段か。

 うん、分からん。

 分からない時は、真っ向から迎え撃つ。

 盾の左腕にしっかりと力を込め、体ごとぶつけに行く。

 金属の板同士を叩きつける、激しい音が響いた。

 スキル【体術】のおかげか、教官の突進にも耐え、逆に教官は弾かれてバランスを崩していた。

 そのまま追撃を、と考えた時、何故か嫌な予感がした。

 ほとんど直感で盾を構えると、その表面を剣が滑っていった。

 危なっ。頭狙ってなかったか?

 無理な体勢のまま剣を振ったせいで、教官は隙だらけだった。

 このまま剣を振り下ろせば、一撃入る。

 人の意識が集中する、という感覚が今はっきり分かった。

 教官の意識が、俺の剣に集中している。

 なので足払いに切り替えると、それは綺麗に決まり、教官は仰向けに倒れていった。

《スキル【蹴術】を習得しました》

 逆手に構えた剣を、胸の中央に軽く押し当て、小さく息を吐いた。

「見事です。次は『アーツ』有りの訓練といきましょうか」

「『アーツ』?」

 教官は立ち上がると、体に付いた砂を払う。

「ええと、MP を消費して放つ技のことです。武器の種類によって様々な効果があるのですが、私もそこまで詳しくないので、教えられないのが残念ですが」

「明日明後日と、図書室の使用許可を頂きましたので、その時にでも調べてみます」

 いざとなったら、リーディア姉さんに教えて貰いますし。

《もっと頼ってくれても良いのですよ?》

 頼り過ぎも良くないかと。有り難みが減っちゃうんですよ。

 お互いに剣を構え直し、睨み合う。

「アーツ『シールドチャージ』!」

 盾を構えた突撃に、さっきと同じように構えていたら、今度はあっさりと弾き飛ばされた。

「幾らなんでも甘く見すぎですよ!アーツ『ダブルスラッシュ』!」

 二連続の斬撃に、盾が追い付かない。腕が浅く裂けた。

《スキル【斬撃耐性】を習得しました。【斬撃耐性】【打撃耐性】【刺突耐性】を統合。スキル【物理耐性】に統合進化しました。続けて、アーツ『シールドチャージ』『ダブルスラッシュ』が解放されました》

 なんか、また違う法則が来た?でも、ツッコんでる間がない。

《アーツ『シールドチャージ』は、VITの値に盾のDF値を足した数値が、攻撃力として計算されます。アーツ『ダブルスラッシュ』は、通常攻撃力の六割の威力で二回攻撃を行います》

 有名な例の剣技ですね。理解しました。

「まだまだ行きますよ?アーツ『シールドチャージ』!」

 今度は弾き飛ばされないよう、全力で堪える。

「もう耐えますか。正直、自信を無くしそうですよ。でも、まだ負ける訳にはいきません。アーツ『ダブルスラッシュ』!」

 一撃目は剣を打ち合わせて防いだけれど、二撃目でその剣を弾き飛ばされてしまった。

 手元に武器は無い。

 教官が振り上げた剣が、振り下ろされる。

 武器が無ければ、素手でいく。

 それしかない、とも言うけれど。

 盾で剣筋をずらし、気持ち深めに踏み込む。

 当てるのでは無く、その先を打ち抜くイメージで。

《スキル【拳術】を習得しました。【拳術】【体術】【蹴術】を統合。【格闘術】に統合進化しました。さらに、【武器の心得】【格闘術】を統合。【武芸の心得】に統合進化しました》

 その時だった。

「避けなさい!」

 教官の叫びについ、その視線を追ってしまった。

 視界を埋め尽くす真っ赤な炎に、足が止まる。

 そして激しい爆発に襲われ、地面を転がる羽目になった。

《スキル【火魔法】【火属性耐性】を習得しました》

 姉さんの声が、どこか悔しそうに聞こえる。

 それからどのくらい時間が経っただろう。

 誰かが駆け寄ってくる足音が聞こえた。

 まだ頭ん中が揺れてる気がする。

 何が起きたんですか?姉さん。

《焔藤 灰二から魔法攻撃を受けました。今、風間 光二郎が奴を問い詰めています。小清水 涼夏は魔法による回復を試みるつもりの様で駆け寄って来ています。石動 土門は静観しています》

 静観すんな、石動。

 自分の体に意識を向ける。

 右腕、動く。問題無し。右足も動く。問題無し。

 左腕、痛みが走る。うごかせない事も無い。左足、問題無さそうだ。

《貴方の体を【分析】します。左肩に軽度の火傷を確認しました。他、裂傷と擦り傷が多数。HPの損耗は11%です。奴のINTが低く、貴方のMNDが高かったのが幸いしたようです》

 不幸中の幸いだね。

《彼らの会話から、状況を整理しました。彼らは魔法の訓練中、的に向かって放っていたようです。反復練習に飽きた焔藤 灰二は、他に的になりそうな物を物色。貴方を的に決めたそうです。三発中一発は外れ、一発は運良く盾に命中、残る一発が肩に当たりました》

「全く、なんで私があの馬鹿の尻拭いなんか。せいぜい感謝しなさい?えっと、清浄なる水よ彼のものの傷を癒せ『アクアヒール』」

《スキル【水魔法】【水属性耐性】を習得しました。チッ》

 舌打ちなんて、はしたないですよ?姉さん。

 ゆっくりと起き上がり、体に付いた砂を払い落とす。

「ありがとう」

「どう致しまして」

 笑顔で返して欲しいとまでは言わないけど、仏頂面なのはどうよ。

 左肩の部分は焼け焦げて、ぽっかり大きな穴が開いてしまっていた。

 もう着れないのかな。勿体無い。

 そこに風間と、風間に引き摺られた奴が近付いて来た。

「大丈夫か?紅君」

「火傷なら治して貰ったから大丈夫」

 腕を回して見せる。痛みはすっかり消えていた。

「ほら見ろ、全然大丈夫じゃね?」

 奴の表情が一気に明るくなる。

「かもしれないが、それとこれは関係無いと思うんだが?」

「チッ、わかったよ、しゃーねぇ」

 すると奴は俺の顔を見て。

「悪ぃ」

「焔藤!」

「んだよ?謝ってやっただろうがよ?」

 うん、他人に謝る態度じゃないね。

 奴の謝罪なんて、どっかの企業の謝罪会見ぐらい意味無いと思う。

「ゴメン、紅君。ちゃんと焔藤に謝らせるから」

「もういい。疲れたから部屋に戻る」

 きちんとリリトア教官に断ってから、疲れた身体を引きずって部屋に戻った。

 そして、夜にはいつもの様に、暗殺メイドさんが運んでくれた食事を手早く済ませていると、何故か彼女が俺をじっと見ていた。

 見られて困る事は何一つしていないけど、落ち着かない。

「今日、訓練中に倒れたそうですね」

 話しかけられましたよ?

 一体どんな風の吹きまわし?

「勇者の一人に攻撃魔法撃たれまして」

「傷の具合は?」

「別の勇者に治して貰ったんで、大丈夫です。ただ」

「ただ?」

「肩の所に穴が開いてしまって、どうしようかと」

 【道具箱】から穴の空いてしまった訓練着を出して見せると、ひったくられてしまった。

 穴の空いた部分をじっと見つめると、そのまま食器と一緒に持って行かれてしまった。

 捨てられちゃうんだろうな、きっと。

 寝る前に、ステータスの確認をしておかないと。

 今日一日で、色々と増えたからね。


 名前 シオン・クレナイ     性別 男

 種族 人族           状態 疲労

 Lv 2            称号 異邦人

 HP  300/300  MP  270/270  ST  32%

 STR  34  VIT  33  INT  45

 MND  48  AGL  34  DEX  37

 所有スキル

 【武芸の心得Lv.3】【火魔法Lv.1】【水魔法Lv.1】【盾魔法Lv.1】【物理耐性Lv.3】【火属性耐性Lv.1】【水属性耐性Lv.1】【毒耐性Lv.2】【鷹の目Lv.2】【忍びの心得Lv.2】【MP自然回復Lv.2】【錬金Lv.1】【合成Lv.1】【加工Lv.5】【習得】【分析】【道具箱】


 レベルが一つ上昇してる。訓練でもレベルって上がるんだ。

 HPが40、MPが30、後はそれぞれ4上昇したのかな?

 成長率は良いんだろうか。

 うん?いくつかスキルレベルが上昇している。色々使ったからかな。

 それは良いんだけど、【加工】っていつの間にレベルアップしたんだ?

 姉さん何か知ってる?

《スキル同期の際に使用しました。その時にレベルアップしていたのですが、報告が遅れました。申し訳ありません。いくらでもなじって下さい。お姉ちゃん興奮します》

 疲れてるんで、ツッコミませんよ?

《イヤン、突っ込むなんて。お姉ちゃんハァハァしちゃいます》

 わざとやってますね?

 本当に疲れてるんで、もう寝ます。おやすみなさい。

《本気で放置するなんて、お姉ちゃん悲しいわ》

 いやもう、お願いだから寝させて?


戦闘シーンは、やっぱり難しいです。

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