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やっぱり、勇者以外は要らない子のようです。

 馬車の幌の隙間から外を覗き見ると、ちょうど大きな門を潜っていく所だった。

 他の四人も思い思いに外を覗き見ていた。

 正直、ずっと座り続けているのが辛いだけなのかもしれないけれど。

「まるで映画みたいだ」

「あ、俺様もそう思った。しかも大作系のやつな」

「二人共、はしゃぎすぎよ。ちっちゃい子供じゃないんだから」

 賑やかな街を馬車は更に進み、見上げる程の大きな城門を抜けて止まった。

 案内されるままに城内を進んで行く。

 どうしたって目立つし、せめて足音位は静かにしておこう。

《スキル【忍び足】を習得しました》

 うん、当然だけど見られているね。

 あからさまに視線を向けてくる衛兵はともかく、物陰から覗き見ているメイドさん達。

 その他にも、複数の気配をぼんやりとではあるが感じる。これがスキル【警戒】の効果だろうか。不思議不思議。

 試しに、その気配に向けて軽く会釈をしてみると、ゆっくりと移動を始めたので、視線で追ってみた。

 まぁ、監視ぐらい付けるのは普通だよなぁ。

 前を行く四人が気付いているかは、分からないけど。

 やがて、俺達は大きな広間に通された。謁見の間って所かな。

 一段高い場所に、豪華な椅子に腰掛けた壮年の男性が一人。

 立派な冠と豪奢なマントに身を包んでいる。

 全身甲冑の兵士達が並び立ち、その向こう側には気難しそうな壮年の男達が並んでいた。

 仕方の無い事だけど、値踏みされてるようで、気分が悪い。

 俺達は騎士であるリリトアさんの後ろに、横一列に並ばされていた。

「異世界より来られた四人の勇者殿達よ。お初にお目にかかる。余はウェスディン王国国王ガルデルク・ドゥア・ウェスディンである」

「陛下、五人おられる様ですが」

 国王はしっかりとこちらを確認すると、一つ大きく咳払いをすると。

「異世界より来られた四人の勇者殿達よ。お初にお目にかかる。余はウェスディン王国国王ガルデルク・ドゥア・ウェスディンである」

 うん、それはさっき聞いた。しっかり確認した上で流したね。

「どうか、魔王の脅威に晒されている我が国を救って欲しい」

「魔王の脅威、ですか。その割に街の様子は穏やかでした。何故魔王がいると確信しているのですか?」

「そうそう。普通、もうちっとパニックになっててもおかしくなくね?」

「確かに勇者殿の疑問ももっともであろう。まず魔王についてだが、それは勇者殿達がこの場にいる事が何よりの証拠であると言えよう。魔王が復活を果たしていなければ、勇者殿達が召喚される事も無かったはずだからな」

 なんだろうこの、卵が先か鶏が先か、みたいな話。

 魔王が復活したから勇者が召喚されるのか、勇者が召喚されたから魔王が復活していると言えるのか。

 いやまぁ、この場に勇者も魔王も居るんですけどね。

「民には、勇者が召喚された事は公表してはいない」

「何故ですか?貴方達の話が正しければ、勇者の存在は希望になると思うのですが」

 小清水の問に、国王は首を横に振った。

「それは逆効果なのだよ、勇者リョウカ殿」

「私の名前を。いつの間に」

「そなただけでは無い。コウジロウ殿、ハイジ殿、ドモン殿。民に勇者殿達の存在が知られれば、同時に魔王復活の情報も知れ渡る事となろう」

 俺の事は、安定のスルーですね。いや、別に構わないんですけど。

 ここまで扱い悪いなら、本当に魔王でも目指してやろうかな。

「僕達はただ、元の世界に帰りたいだけなんです。誰か方法を知りませんか?」

「調べてはいるが、少なくとも我が国にはその方法は残されてないそうだ」

「他の国にならある、という事でしょうか?」

「それは我らでは何とも言えん。ただ、確かな情報では無いが、言い伝え程度の事なら見つかっている」

「可能性があるなら、何でも構いません。聞かせて下さい」

「魔王を討伐出来れば、或いは帰還出来るのかも知れない、との事だ」

 はい、どのみち俺には関係の無い話ですねー。

「勿論、我々も戦闘経験の無い勇者殿達をいきなり送り出す様な、非道な真似をするつもりは無い」

 並び立つ兵士達が数歩下がると、入れ代わるように数人が進み出て来た。

 身の丈程の大剣を担いだ男性に、妖しい雰囲気のローブ姿の女性、やたらと髭の長い聖職者っぽい老人等、職種も年代も様々だった。

「これより、勇者殿達には彼らの指導を受けつつ、こちらの世界の一般常識を学んで戴く」

「げ、こっちに来てまでベンキョーとかダル過ぎる」

「一人で死にたければ好きにすれば?いっそ、そうしてくれた方がスッキリするかもね」

「だがその前に、勇者殿達のステータスを確認させて欲しい」

 そうして俺達の前に運ばれて来たのは、手のひら程の大きさの透明な球体だった。

 水晶とは違うみたいだけど。


 鑑定の宝玉

  スキル【鑑定】の力が込められた魔法の宝玉。

  触れた人物のステータスを表示する。

  一定ランク以上のスキルは表示出来ない。


「その宝玉に触れる事で、勇者殿達のステータスを我々も見る事が出来るのだ」

 風間から順に、焔藤、小清水、石動と触れてゆく。

 その度に、素晴らしい、だの、流石は勇者殿だ、等と声が上げられていた。

 そして、俺の番が回って来た。

「俺も見せなきゃいけないんですかね?勇者とかじゃ無いんですけど」

「一応だ、一応。勇者じゃ無くても、鍛えればそれなりに使えるかも知れんからな」

 半笑いで答えたのは、大剣担いだ男性。

 面倒だから大剣のおっさんで良いか。

 その他の人達は、もう四人の勇者達の事しか頭に無い様だった。

 これだけあからさまに期待もされないっていうのは、いっそ清々しいね。

 ま、結局たいした評価もされず、別の部屋へと案内されたんだけどさ。

 風間、焔藤、石動は三人で一部屋、それも豪華な部屋を与えられ、小清水は一人用の部屋だ。女性だからね、それは分かる。

 俺が案内されたのは、小さな机とこれまた小さなクローゼット、身長180cmの俺が足も伸ばせないようなベッドしかない小さな部屋だった。窓すら無いのはもう笑いたくなる。

 元々物置だったんじゃないだろうか?

 案内してくれたメイドさんも、お固そうと言うか事務的と言うか、とてもじゃないが会話を楽しめそうな雰囲気では無かった。なかなかの美人さんだっただけに、ちょっと残念。

 きっと、会話出来たら出来たで緊張しまくりだろうけどさ。

 そういえば、こっちの人達のステータスってどのくらいなんだろう?

 

 名前 シレーネ・アーシュタル  性別 女

 種族 人族           状態 警戒

 Lv 24           称号 暗部

 HP  240/240  MP  74/74  ST  75%

 STR  22  VIT  29  INT  36

 MND  40  AGL  38  DEX  41

 所有スキル

 【短剣Lv.33】【暗殺術Lv.25】【潜伏Lv.29】【警戒Lv.40】【忍び足Lv.41】【偽装Lv.36】【毒耐性Lv.19】【麻痺耐性Lv.15】


 うん、興味本意で【分析】なんてするもんじゃないね。

 暗部ってつまり、暗殺とかのそっち系の方ですか?

 何でメイドさんやってるんですか。戦うメイドさんですか。

 それとも冥土送りのメイドさん、ってそれは流石に使い古されたネタか。

 いやまぁ、冷静に考えれば、色々と都合は良いのか。

 城内の至るところに出入り出来るし、暗殺を防ぐには手段を熟知していないと難しいだろうし。

「シオン様。まずはこちらをお受け取り下さい」

「手紙、ですか?」

「明日以降の予定が全て記してあります。無くしたりなさらないよう、ご注意下さい」

 いつの間にそんな物を用意したんだろう。

「それともう一つ。もし何かご用があったとしても、わたくしをお呼びになりませんよう、お願い致しますね?わたくしも暇では無いので」

 うん、冷遇されてるのは分かってたけど、ここまでとは。

 でもこの程度、慣れっこだけどね。

 さてと。まずは状況の確認をしないと。

 手紙を開けてみる。


 一日目。勇者達と一緒に一般常識を受講。

 二日目。魔法の基本知識の受講と訓練。ならびに武具による訓練。

 三日目。自由訓練。

 四日目。自由訓練。

 五日目。城外退去。

 以上。

 今後、一切の責任は自己で負うものとし、勇者及び王国関係者との接触を禁じる。

 代わりに、当面の生活費用として、銀貨五枚を支払うものとする。


 国として、一応色々と教えてやるし、金も出してやるから、とっとと出ていけ。勇者達に迷惑かけんなよ。ざっくり言うとこんな感じ。

 変に期待を背負わされるより、それで良いけどね。

 ベッドに腰掛けると、派手に軋んだ。

 寝てる内に壊れないだろうな?

 と、そろそろ三時間経っているんじゃなかろうか。

 リーディア姉さん?

《おはようございます。スキル同期に無事成功し、帰って参りました》

 お帰りなさい。と言うか、無事に?失敗する可能性もあったという事ですか?

《済んだ事です。気になさらない方が良いかと。それよりも、新規に獲得したスキルを確認しました。統合を推奨します》

 前と比べて、よりヒトっぽくなってない?

 あと、統合って何?初耳なんですが。

《統合とは、複数のスキルを消費し、複合スキルへ進化させる事を指します。現状では【暗視】【遠見】を消費して【鷹の目】を、【潜伏】【警戒】【忍び足】を消費して【忍びの心得】に進化可能です》

 メリットとデメリットは?

《メリットは、一つのスキル枠で複数のスキル効果が得られます。デメリットは、スキルレベルが1に戻ります。ですが、消費したスキルの行動ならどれでも経験値を入手出来るので、レベルは上昇しやすくなります》

 また聞き慣れない言葉が。スキル枠とは何ですか?先生。とか言ってみたり。

《良い質問です。ヒトには、習得しておけるスキルの数に限度があります。個人により多少の差はありますが、限界を超えてスキルを習得する事は出来ません。これを一般的に、才能の限界、と呼びます》

 おおぅ、乗ってくれたよ。因みに、俺のスキル枠はいくつ?

《分かりません。【分析】でも確認は不可能です》

 なるほどね。いざって時の為に、少しでもスキル枠を確保しておこう、と。

《その通りです。良く出来ました。褒めてあげます》

 ふむ。覚えたてでレベルも低いし、統合しても大丈夫か。

 姉さんお願いします。

《統合完了しました。【暗視】【遠見】を消費して複合スキル【鷹の目】を、【潜伏】【警戒】【忍び足】を消費して複合スキル【忍びの心得】を習得しました。どちらも、新月の夜に最大の効果を発揮します》

 早っ。しかも、なんて物騒な発言。

 使うつもりは今のところありませんから。

 姉さんの効果?調子?も確認出来たところで、まるでタイミングを計っていたかの様にドアがノックされた。

「食事を持って来て差し上げました。感謝して下さい。それと、後で回収に来るのも面倒なので、直ぐに食べきって下さい」

「ありがとう、ございます」

 例の、暗殺メイドさんが立っていました。

 因みに今日の夕食の献立は。

 コッペパンっぽいなにか(硬すぎて歯が立たない)。

 野菜スープ(ほぼお湯で煮ただけ)。

 以上。

 食べられるだけでも、感謝です。

 パンをスープに浸して、柔らかくして何とか食べられる様にして、テーブルマナー的にどうなんだろう、と思いつつ腹に収めた。

 器を返すと、暗殺メイドは本当にさっさと帰っていってしまった。

 もう寝るか。

 いつまでも制服のままって訳にもいかないし、とクローゼットを開けると、二種類の服が畳まれていた。

 それぞれ、普段着、訓練用、と書かれたメモが乗せられていた。

 あの暗殺メイドさんが用意してくれたんだろうか?

 うん、ちょっと考えにくいな。

 袖や裾が多少擦りきれた古着、を回されたんだろうな。

 普段着に着替えてみると、意外と着心地も良く、動き易い。

 見た目が地味だけど、派手なのよりはマシだから良いか。

 制服と訓練用の服は【道具箱】に入れて、と。

 それじゃ、おやすみなさい、姉さん。

《はい、お休みなさい。良い夢を》


 訓練一日目。

 例の暗殺メイドさんに叩き起こされ、慌ただしく食事を済ませて身支度を整えると、追い立てられる様に教室としてあてがわれた部屋に向かった。

 既に勇者達が待っているらしい。

「お早う、紅君」

「おっせ。俺様を待たせてんじゃねぇ」

「向こうだったら既に遅刻よ」

「気持ちがたるんでるからだ」

「悪い」

 俺が遅いんじゃなくて、お前らが早いだけ。

 何を言っても言い訳にしか聞こえないけどさ。

 四人に続いて部屋に入ると、ほのかに甘い香りが漂って来た。

 そして講義が始まった。

 まずは時間。

 一日は二十四時間。城内にある、時計と言う名の魔法道具で正確に測られ、城下へは時報の鐘で知らせている。リーディア姉さんに確認してもらってので間違いない。

 時計はとても高価なので、他に持っているのは一部の貴族だけらしい。

《時計機能をステータスに追加しました》

 一週間はこちらでは十日。頭の月、中の月、後の月と呼ぶそうだ。

 一ヶ月は三十日と三十一日を交互に繰り返し、十二ヶ月で一年になる、と。

 次に王国について。

 国王をトップに、王族、公爵、侯爵、伯爵、子爵、男爵、といった爵位制度があるらしい。

 イマイチピンとこないので、後で姉さんに教えて貰おう。

 種族の事。

 王国に多く住んでる、人族。

 肉体的強度や魔法適正など、平均的な種族だが時々、英雄、と呼ばれる強者が生まれるのも、人族の特徴だそうだ。

 深い森近くに住居を構える、森妖精族。いわゆるエルフ。

 高い魔法適正と長い寿命を持つ彼らは、人族とは友好的であるものの、その長命故に人族を見下す傾向もあるらしい。だが、総じて美形である事が多く、かつて奴隷として売買されていた歴史があったそうだ。

 洞窟などの地下空間に多く住む、岩妖精族。いわゆるドワーフ。

 人族を遥かに凌駕する肉体的強度を誇り、一流の戦士であると同時に、鍛治や細工等の技術にも優れている。また、魔法適正も決して低くは無いが、大の酒好きで、水に浮けないという特徴もある。

 成人しても人族の子供程度の体格の、草原妖精族。いわゆるホビット。

 肉体的強度はそうでもないものの、ずば抜けて器用さが高く、細工物の職人や斥候役として素晴らしい働きをする、と言われている。また、外見の愛らしさから、かつて愛玩奴隷として売買の対象にもなっていたそうだ。

 さすが異世界。奴隷制度とか、普通にあるんだ。

 勇者達は嫌悪感を露にしていたけど。

 他にも、亜人と総称される種族と、敵対種族の魔族がいるそうだ。

 人族の体に獣の特徴を持っていたり、見た目は獣と変わらないものの人族の様に直立歩行する種族を全てまとめて亜人と言うそうだ。大半は、奴隷として労働に従事させているらしい。

 獣人とは違うんでしょうか?それに魔族って?

《いいえ、程度の違いはあっても全て獣人と呼称されます。亜人とは、人族が使用する蔑称です。魔族とは、魔法に高い適性を持つが故に、肉体が変異した種族の総称です。先代魔王に協力した事で、人族が一方的に敵視しています》

 やっぱり、か。薄々勘づいてはいたが、これで確信が持てた。

 講師の説明の端々に感じたのは、他の種族を見下す傲慢さだ

 俺でも分かる様な事に、あの勇者共が気付かない、なんて事あるのか?

《おそらく、この香りが原因でしょう》

 この甘い香りが?何で?

《ごく微量ですが、思考誘導効果を検知しました。勝手ながらスキル【毒耐性】を習得しておきました。褒めてくれても良いのですよ?》

 ちょ、それって。いわゆる危ない薬の類いなんじゃなかろうか?

《心配ありません。思考誘導効果も微弱ですし、依存性も無いと言って良いでしょう》

 本当に平気なんだろうか。いや、姉さんを信じて無い訳じゃ無いんだが。

 それに俺は平気でも、奴らはどうなんでしょう?

《関係ありません。あの四人はいずれ敵になります》

 だからって見捨てるのもちょっとな?寝覚めが悪いと言うか。

《仕方ありませんね。では、こっそりと扉を開けて来て下さい。少しで構いません》

 了解です。【忍びの心得】がこんな時に役立つとは。

 幸い、四人は部屋の前方で俺は一番後ろ。

 扉はすぐそこ。

 講師もこちらには注視して無いし。

 念には念をいれて、背中を向けた時に開けておきました。

 そして軽い休憩を挟み、次は通貨について。

 下から順に、銅貨、大銅貨、鉄貨、大鉄貨、銀貨、大銀貨、金貨、大金貨。

 これ以上の貨幣は、一個人で扱う様な金額では無いそうだ。

 鉄貨一枚有ればちゃんとした食事が取れる、と言っていたので、おおよそ千円ぐらい?

 銅貨十枚=大銅貨一枚、大銅貨十枚=鉄貨一枚と十進法なので、城外退去時に貰える銀貨五枚はだいたい五十万ぐらいか?

 う~ん、割と多いと見るべきか?

 次は、国土について。

 詳細な地図は、国家機密で見せられないので、簡易的な物での講義だったけど。

 大丈夫。俺にはリーディア姉さんがついてます。

《ステータスにマップ機能を追加しました》

 さすが、頼りになります。

 一瞬でも、憑いている、とか頭を過ってしまったのは内緒。

 西に大きく伸びた菱形をしているのが、この国。ウェスディン王国。

 気候は、他の国と比べて比較的穏やかで、気温の変化も少なく、農業が盛ん。

 北には、一年の半分近くを雪と氷に覆われた山脈がそびえており、その向こうは別の国、スノーストリヤ帝国というらしい。

 らしい、と言うのも、俺が聞いてて良いのは基本情報のみで、上の方からも教える必要は無いと言われているんだそうだ。

 はいはい、知りたければ後は勝手に調べろ、と。

 南は巨大な河が流れていて、そこが国境いになっているそうだ。対岸の国は、リサウスト州国という名前らしい。国土の七割が森林地帯という、なかなか大変な国なんだそうだ。

 この日、他に教わったのは、魔物を倒して経験を積むとレベルが上がる、等のRPGの基本中の基本だったり、勇者と魔王の戦いを人魔戦争と呼ぶとか、前回の戦争から五百年経過してるとか、王家は先々代勇者の直系だとか、勇者に協力するのはとても名誉な事とか。

 いやいや、勇者の直系なら帰還方法ぐらいちゃんと残しておけよ。

《意図的に紛失したものと推測します》

 あれか、自国の戦力として囲う為か?

 他国に戦争でも仕掛けるつもり?

《可能性は否定出来ません》

 うん、もしそんな事になったら全力で逃げよう。

 魔物相手ならともかく、人同士の戦争に首突っ込む義理も無いし。

「やっと、終わりやがった」

「さすがにちょっとキツいね」

「これからの為に必要なことよ。しょうがないでしょう」

「それは承知の上なんだが」

 四人はそれぞれ、机に突っ伏したり大きく背伸びをしたりしていた。

「今日はもう終わりだろ?俺様もう寝てぇ」

「何を言ってるのよ?一番頭が悪いの焔藤なんだから、理解するまで続けるわよ」

「げ、風間、ヘルプ!」

「はは。頑張れ、焔藤」

 風間がさらりと焔藤を見捨てるのを尻目に、部屋を出て行こうとすると、講師に呼び止められた。

 手渡されたのは、一枚の紙。

 図書室使用許可証、と書かれている。

「これは?」

「国王陛下が、あなたの為に特別に下された、図書室の使用許可証です。期間は、三日目と四日目の自由訓練の間だけ。図書室の一部が閲覧可能になるそうです。確かに渡しましたからね」

 完全放置よりかはマシかな。

 うん、マシと思う事にしよう。


この話から、奴隷制度、とか出てくるんですが、全年齢で大丈夫なんでしょうか?

ちょっと心配てす。

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