おしまい (ダイナ視点)
ダイナはダイニングルームの壁際でミンナとメルク侯爵の様子を眺めていた。
メルク侯爵は「ささ、お茶をお持ち致しました」と媚を売りながらポットの紅茶をミンナに注いでいた。ナース姿のミンナは「ふむ。ありがとう。これには睡眠効果はないよね?」と紅茶の香りを確かめる。メルク侯爵は「あ、ありません」と慌てて丸い顔をぷるぷる振る。
「まだ、目覚めない。まさか毒でも入ってたんじゃ「あ、ありえません。あれは良質な睡眠がとれる効果があるだけで毒ではありません!」
あれとはクシェルが飲んでいた薬茶のことだろう。それに関しては実はクシェルは飲んだふりをしただけで飲んではいない。
ーーというか。騎士に気絶させられたんだけどね。……にしても、もうそろそろ目覚めてもいい頃では?
様子が気になったダイナは紅茶をお盆に載せて階段を上り、扉をノックなしで開けた。ダイナはノックしてないことを少しだけ後悔した。ほんの少しだけ。
ガチャッ バターン
ーー……見なかったことにしよう。
何事もないように階段を降りると、ミンナが「どうだった?」と階段に向かって歩いてきた。
「まだ目覚めていないようです」
「そっか〜。じゃあ、一緒に紅茶飲む?」
「……是非頂きます」
ミンナを二階に通してはいけない。ダイナはミンナの話し相手をする事にした。
ーー出来る侍女を持って良かったですねクシェル様。
ノックをしない侍女は己は優秀だと思ったのであった。
その後、フェルディナントがグローリエ国の王となり、貴族中心の政治から全国民の為の政治に切り替わり多額の徴税が見直され暮らしやすい国になったとか。その傍らには庶民から愛される倹約家な王妃がいたとさ。