告白 (クシェル視点)
⚠︎フェルディはメイド服から護衛服に着替えました。
眼が覚めるとそこは貴族の屋敷の一室であった。布団を被せられ横たわる私の横の椅子に腰掛けるのは心配そうに顔を覗くフェルディだった。
ーーえっと、ここどこ? あれお茶会だったよね。何で私眠ってたの? それに何でフェルディがここにいるの? 頭痛っっ!
意味がわからなくて眼を回し、痛みで頭を抑えるクシェル。
「無理しないで。グローリエの騎士に叩かれて気絶したんだ」
「……気絶」
ーーそうだった。グローリエ国王と騎士が現れて戦いになった。私はグローリエ国王を人質にしたけどそこから記憶がない。
「フェルディ。えっと……」
ーー何から聞けばいいんだろう。
頭がぼんやりして考えがまとまらない。クシェルが聞きたいことを察したフェルディは静かに話し始めた。
「クシェルがシュトルツ城を出てから、俺とミンナ様はイルザ王女からクシェルのお見合い相手はグローリエのモッペルだと聞いたんだ。それでミンナ様の協力のもとこのメルク侯爵の屋敷に辿り着いた。クシェルが気絶した後、ミンナ様の騎士団とクシェルがかつて匿ってくれたグローリエの民と共にグローリエ国王達を無力化することに成功した。わかった?」
ーーそうだったの!? 助かったのね!?
歓喜に震えるクシェル。だが、頭の片隅には迷惑をかけたことへの罪悪感があった。
申し訳ない気持ちでフェルディに「ありがとう。おかげで助かったわ」と伝えた。
首を横に振るフェルディ。機嫌が悪そうに呟く。
「許さないよ」
まさかそんな事を言われるとは思ってなかったクシェルは戸惑った。
ーーな、なんだか怖い。
怯えるクシェルにフェルディは構わず不機嫌そうに喋る。
「頼ってくれと言ったのに、無茶するしどれだけ心配かけるんだ」
ーー言ってたわね。でも、言っちゃダメだし。どうすれば良かったのだ。
「ご、ごめんなさい」
とりあえず謝った。フェルディは思った。
ーーこれって表面上の謝罪か。心から反省してない。許さん。
ぼふっ
クシェルは口を開き声が出てない悲鳴をあげた。
ーーひぇええええ!? 殺されるぅううう!?
クシェルの上にフェルディが乗っかってきた。いわゆる床ドン ならぬ ベッドドン……違うか。
ーーこれ恋愛本で読んだことあるぅううう!! ときめくやつぅううう!! でも現実に起こると怖いぃぃぃ!! アップでも綺麗な顔だな畜生!!
クシェルはときめくシチュエーションに赤くなるどころか真っ青になった。首に着けてたペンダントがコロっと転がる。
それを手に取るとフェルディの不穏なオーラが収まった。それは誕生日プレゼントにもらった青いペンダントだった。
「着けてくれてたんだ」
「えっ? うん、毎日着けてるよ」
御守りとして大切に着けてた。
ーーこれを着けるとフェルディがいてくれる気がして、勇気が湧いてくるのよね。
「……毎日」
笑みがこぼれるクシェルに対して、フェルディは俯いた。
「何でそういうことを平然と……」
ーー何かまずい事したかな? というかフェルディさん降りてくれないかな? 私女ですよー? 男だった方がやばいか。
ガチャッ バターン
扉の音がした。開いて閉まる音。
ーー今誰か来たよね!? そして何か勘違いして出てったよ!? いいのかフェルディ!?
「クシェルにお礼言ってなかったね」
フェルディは扉の件はスルーした。
ーー何のこと?
首を傾げるクシェル。
「嫌いって出て行ったのに追いかけてきてくれたよね。ありがとう。凄く嬉しかった」
「あ。ど、どういたしまして」
優しく笑うフェルディにドキドキした。心臓の音がばれてしまうのではと心配になった。
ーーこんな表情もできたんだ。うわぁ。うわぁああ。
乙女な思考になってきた。ベッドドン効果か!? 顔が熱くなってきた。
目の前の黒い瞳に熱が宿った。身体が甘く痺れて動かない。
「ペンダントの花の意味は知ってる?」
「えっと……わかりません」
ーーベゴニアはサラダで食べれるが花言葉なんて考えたことない。
実は食用として花を育てている。ベゴニアは酸味が効いて美味しかった。見当違いの事を考えていたので、フェルディの言葉に息が詰まりそうになった。
「愛の告白だよ」
「っっ!?」
ーー気障だ!? 嘘だ!? フェルディはそんなキャラじゃない!?
思わずフェルディのほっぺたをつねった。化けの皮が剥がれない。
「ほ、本物?」
「悪かったな」
フェルディは顔を赤くしてベッドから降りた。
ーー照れた顔可愛い。やっぱりフェルディだ。
キュンとなるクシェル。フェルディは「調子狂うな」と赤い顔を手で隠す。
ーーベッドドンよりこっちの方がいい!!
高鳴る鼓動を抑えれないクシェルは
「フェルディ!」と呼びかける。
にっこりと笑ったクシェルは「大好きだよ!」と告白した。
フェルディは苦笑いしながら「俺もだよ」と答えた。