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頼ってほしい

 

 玉座の間を出るとフェルディが訝しげにクシェルに尋ねた。


「あの事って何? 何を隠している? テーブルマナーからして誰かとお見合いするのか?」


 的を射ている。勘がいい人に嘘つくの辛い。思っている事がすぐ顔にでるクシェルに果たして上手く誤魔化す事が出来るのか。


「そうよ。お見合いするの。誰がその相手になるかまだわからないから秘密なのよ」


 すらすらと嘘をつくことに成功したが、フェルディはまだ疑っている。


「候補が出てるだろう。誰なんだ?」


 いつもと違って強引だった。私の肩を掴み顔を近づける。クシェルは動揺する。嘘での動揺か、近すぎることへの動揺かわからなくなる。


「……誰とお見合いしても、フェルディには関係ないでしょ。これは王命でこれ以上話す訳にはいかないの。先に行ってるわ」


 冷たくあしらってしまった。グローリエのことを話せばフェルディは思い詰めるから話せない。


「本気で言ってるのか? 嫌いって言ったやつをわざわざ連れ戻しといて、変だよクシェル」


 胸がきゅっと痛くなった。気にしないように努めて無表情で部屋に入った。




 * *




 テーブルマナーの勉強は淡々とこなしていく。フェルディの知識は完璧だった。流石王族だ。きちんとした教育が行き届いている。同時にフェルディの危うい立場をひしひしと感じた。


 食器を片付けていくフェルディに私は「王様になれたらなりたい?」と緊張しながら聞いてみた。

 フェルディは息を飲んだ。黙り込む姿からは迷いを感じた。


「ならなきゃいけない時がある。それを果たす責任はある。が、ならなきゃいけない時が来ないことを祈っている」


「なるほど、じゃあ無理に押し付けないわ」


 フェルディは訝しげにクシェルを観る。


「何か企んでる?」


「企んでいたけれどやめたわ。本人のやる気次第」


「恐ろしいことを考えてるだろ。危険なことはやめろ。クシェルは自分の身の安全を第一に考えて行動するんだ。いいな?」


「私は自分のしたいように動くわ。それでどうなっても私の所為だから、気にしないでね」


「……気にするに決まってるだろ」


 フェルディは私の手に自分の手を乗せる。大きな手のひらは冷たくて震えていた。


 ーー私がいなくなることを恐れている?


 驚いて見上げたフェルディの表情はどこか思い詰めていた。


「フェルディ。私を見くびらないで! 私は守られてばかりいるか弱いお姫様じゃないわ。庶民根性で生きてきた私が易々とやられる筈が無い。信じて」


 クシェルの力強い瞳にフェルディは惹かれる。


「……俺のことを頼ってね」


「わかった!」


クシェルは元気良く頷くが、フェルディを頼るつもりは無かった。




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