表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

20/36

再会

 



 山を越えて小さな村にたどり着いた。黒く短い髪の男の後ろ姿を見つけて走り出すクシェル。


 ーー追いついた! 良かった!


「フェルディーー!! 待ってーー!!」


 黒髪の男はこっちを振り向いた。目を見開いて驚いていた。クシェルは勢いよくフェルディの胸に飛び込んだ。フェルディは少しよろけたが転ばずにクシェルを受け止めた。


「何できたの?」


 不思議そうなフェルディにクシェルは頭にきた。


「くるに決まってるじゃん!? あんな……あんなお別れ嫌だよ……。嫌いでもいいから側にいてよ!! 嫌いなところ直すから!!」


 フェルディは「……違うんだ。嫌いって言ったのは、嘘なんだ。クシェルには言えないけど、事情があるんだ」と呟く。


 その言葉に目を輝かせて安心したクシェル。


「嫌いじゃなかったのね? 良かった!! あのね。貴方の事情はダイナから聞いたの。でも、大丈夫よ! 心配ないわ! 地味な私の側にいても誰も気にしないわ!」


 フェルディはそばでじっと立っているダイナを見て「本当に喋ったのか?」と確認した。ダイナはこくっと頷く。それを見て呆れたフェルディ。クシェルをとりあえず引き離す。


「なら、余計に側にはいられない。うっかり正体がもれたらたまったもんじゃない」


 ーー嘘だね。フェルディは自分のことよりも私のことを案じてるんだ。私が隣国の元王子を匿ったとグローリエ国王に知られれば罪に問われるからだ。


 クシェルは力強くフェルディの目を見つめた。


「フェルディ。私は城から無断で出て来た。今頃、大騒ぎかもしれない。でも、私はフェルディが城に戻るまで絶対に帰らない。フェルディのところにいる!!」


 フェルディは眉間にしわを寄せる。


「……城に戻るんだ。……ダイナ。クシェルを頼む」


「絶対に帰らない!!」


「無理です。ご自分で面倒をみて下さい。私はあなたの護衛で、クシェル様の護衛ではありません」


 言うことを聞かない2人に頭を抱えるフェルディ。横にいる登山家の格好の少年が「フェルディ様。諦めましょう。仲間もたくさん集まってきたし、城にいた方が目立たないと思います」とフェルディの肩に手を置く。


 周りを見てみると、20人ぐらいの服装が様々な人達が集まっていた。昔孤児院にいた顔ぶれもいた。


 ーーもしかすると、みんなフェルディの仲間?


「どうして、こんなに集まった? ほっといてほしかったのに……」


 愚痴るフェルディの様子から周りは仲間だったんだとわかった。


「無理ですよ〜。フェルディ様は人気者だって自覚ありませんね〜」


 フェルディはがくりと項垂れた。クシェルはフェルディの仲間を見て嬉しくなった。


 ーー良かった〜。フェルディ1人じゃなかったんだ〜。


「フェルディ。帰りましょ?」


 フェルディはもう諦めたようで「……わかった」と渋々頷いた。




 * *




 フェルディを連れてシュトルツ城に戻ったクシェル。玉座の間に騎士に連れてこられた。立派な玉座に座る王様は、何やら怒っていた。


「バカモーーン!! 黙って城から飛び出して何日も不在にしおって。儂がどれほど心配したか!! おかげで高級な服間違えて着ちゃったではないか!? あの衣装係やってくれたわ!!」


 今日も相変わらずクマちゃんのアップリケの服だ。


「ごめんなさいお父様。でも、普段から高級な服は着ればいいじゃない。王様なんだから」


 逆に衣装係グッジョブだろう。


「おぬしにだけには言われたくないわい!! フェルディも手紙を寄越して、返事も待たずに去るでない!! 騎士団動かして捜索するところだったわ!!」


 フェルディは諦めたように「申し訳ありませんでした」と謝った。


「罰としてクシェルのテーブルマナーの先生をやれー!! 口答えは聞かぬぞ!! クシェル!! 絶対にあのことを教えるなよ? はい。では戻ってよし!」


 ーー講師代をケチる気だ。あのこととはグローリエ国の王子モッペルとのお見合いだ。誰にも言うなって言われてたのよねぇ。あっ。ダイナに話しちゃったから口止めしないとなぁ。


 クシェルは焦った。フェルディはそんなクシェルを訝しげに見ていた




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ