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(視点)前半ミンナ後半フェルディ

回想でちょっとグロテスクな場面ありますのでお気をつけてください。

 







[親愛なる我が娘ミンナ

  あなたには沢山の苦労をかけてますね。至らない私を許して下さい。私はもう城に戻る気はありません。もしも、自分の生まれの事に後ろめたくなり息苦しくなったらいつでも真実を話しても良いのですよ。あなたは何も悪くないのですから、その時は私があなたを全力を尽くし守ってみせます。

 不甲斐ない母より]


 手紙の柔らかな筆跡を優しく見るミンナ。大切に手紙を折りたたみシンプルな騎士服の胸のポケットにしまう。ポケットに手を当てて目を瞑る。


 ーー母上、私は後ろめたくも、息苦しくもありません。私には守るべき者がいるから。


 ミンナは静かに城の廊下を歩き、扉の前で待機する数名の護衛の中の1人、フェルディに話しかけた。


「話がある。君にとって重要な話だ」


 ミンナは真剣な表情であった。フェルディは鋭い黒い瞳をミンナに向けた。





 * * *




 そこは中庭の一角。芝生が生い茂り中央には噴水がある。


 フェルディと侍女に、ミンナが真剣な表情で話し始めた。


「フェルディーーいやフィルディナント殿下。貴殿に話がある」


 侍女は無表情であった。フェルディは不思議そうに首を傾げる。


「フィルディナント殿下って確かもう亡くなってますよね?ミンナ様は名前が似ているからと言って私をその元王子だと言うのですか?」


 ミンナは首を振る。


「......この事は王様に教えてもらったんだ。だが、安心していい。知っているのは王様と私とイルザだけだ」


 ーー王様に裏切られた。


 フェルディの瞳は怒りに染まる。拳を握りしめるフェルディにミンナは静かに話す。


「貴殿は幸運にもクシェルに拾われた。それは本当に偶然だったと思うかい?」


 6年前に叔父の追っ手から逃げるフェルディは国を出て、偶然にもクシェルに出会った。それはたまたま運が良かっただけだと思っていた。


 ーー違ったのか?


 フェルディは静かにミンナの目を見た。


「その時に、私とイルザに王様は、隣国から王子が逃げてくるかもしれないと仰ったんだ。だから、国境沿いに私達はいた。私の方には来なかったが、貴殿はクシェルの方へときた」


 ーーどうやら王様のお計らいでクシェルに会えた様だ。確かに冷静に考えればタイミングよくあの場所に王女様がいる筈がない。出会った時のイルザの反応に違和感があるが……。イルザなら見捨てかねないな。


「クシェルは何も知らなかったが、貴殿をきちんと保護して君の為に私財をなげうって孤児院まで設立した。正直、この時まではクシェルを甘くみていたよ。ただの節約マニアかと思ったんだが、使い道を良く心得ていたんだな」


 ーーちょっと待て。クシェルの私財で孤児院を建てたのか!?あのドケチがそんなことするのか!?嘘だろ!?


「……え」


 思わず声が出たフェルディ。


「驚くのも無理はない。王様も、はぁ!?そんなに溜め込んでたのかあのドケチ!?と驚かれていた。それ以来王様のドケチ具合が狂った。服にくまちゃんのアップリケがつくようになったのはその頃からだった」


 ーー真剣な表情で王様の低い声を真似したよこの人。......真剣に話す内容か分からなくなった。


「次代を担うべきは、私でもベンノでもないクシェルだとこの時に私は確信したのだ。私はその為の囮だ。だから、貴殿にはしっかりとクシェルを守ってほしい」


 ミンナは優しく目を細めて微笑んだ。フェルディも侍女も驚いた。


 ーー要約すると、ミンナは次期女王陛下になるべきはクシェルだと言いたいのだ。


 クシェルは王位継承権をもっている。イルザとシャルロッテにはない。ミンナが退けば自然と、ベンノ王子とクシェルの一騎打ちになる。これといって特徴がないクシェルが王位に立つことはあり得るのか?


 ーー今のグランツ国にはドケチな王様が君臨しているではないか。あり得る話だった。


 ぐらりと眩暈がした。冷や汗が流れる。


 頭の中にあの悲惨な光景がながれた。


 獰猛な目つきの叔父。


 父の胴体から離れた頭を掴む姿。


 じろりと叔父はこっちを見た。


 次はお前だ


「ぐあああああ!?」


 頭を抱えて叫び出すフェルディにミンナと侍女は目を見開く。ふらつくフェルディを支えようと侍女もミンナも手を貸そうとするが、フェルディに振り払われた。


 クシェルを王に推すミンナ。フェルディナントを王にと願っていたクシェルの侍女、元護衛ダイナ。猛烈にこの2人が許せなかった。


「......触るな!」


 視界が真っ赤に染まる。そのうち暗くなり、意識が失いそうになる間際に「フェルディ!?」とクシェルの声が聞こえた。









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