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(視点)グランツ国王 グローリエ国王

 




 王様は一枚の手紙を見て唸っていた。


[親愛なるグランツ国王。

 日差しが熱いとビールも進みますね。

 こんどご一緒にいかがかな?

 良質なブランドブタのソーセージができたんだ。辺境の村にオススメのお店があるから、お互いの子供も連れてパーティと洒落込みましょう。末っ子は恥ずかしがり屋かい? 大丈夫、わたしの息子はフランクな男だから、きっといい話し相手になる。良いお返事を待っているよう。

  グローリエ国王]

 

 ただの挨拶の手紙に見えるその手紙にはもう一つ重要な要件が隠されている。


 ようは、第四王女クシェルをグローリエ国王陛下の息子と婚約させたいという事だ。


 その手の手紙は差し出し人が一緒で、まず第一王女ミンナが指名された。だが、その話は貴重な戦力がグローリエにわたるのではと懸念され、おじゃんとなった。


 次に目を付けられたのがイルザだったが当然のごとくイルザは一蹴した。


 男との噂が絶えないシャルロッテには来なかった。傷物は論外だそうだ。


 渋々、きたのがこの縁談。何せ社交界デビューもまだの第四王女はどのような者か世界中から興味を持たれている。


 噂通りなドケチ2世だったらちょうどいい。市民が支持してくれるに違いないとグローリエ国は考えていた。


 グローリエ国。グランツ国と同じ言語を操る彼の国には資源が豊富にある。暖かな気候で作物がよく育つ。グランツ国はグローリエ国から食料をほとんど調達していた。


 何度も何度も縁組が断れれば、食料をグランツ国に売らなくなる危険がある。


「……悔しい。悔しいが見合いぐらいさせないとグローリエも怒るだろう。あいつの息子の嫁に出すなど万が一もありえんが」


 ムカついた王様は腹いせに手紙の裏に返事をしたためた。


ーー悪く思うなよ。ほっほっほっ




* * *



 グローリエ国オタカル城。国王と息子モッペルはディナーを食べていた。ガチャガチャと品のかけらのない食べ方のモッペル。頰に付いたソースも自分の長い舌でペロリと舐めた。膨よかなお腹で服のボタンが1つ弾き飛んだ。


 ポン


 国王は何とも言えない気分だったが、息子を溺愛していた。


「すぐに新しい服に変えないとね。成長期なのだから仕方がない」


 とフォローを入れる。17歳になったモッペルと16歳のクシェルはちょうどいい組み合わせだ。地味な女ならモッペルの膨よかなお腹も受け入れてくれる筈だ。


 モッペルが「俺の女になる王女って地味なんだろ? 美人が良かった」と文句を言ったが、「それは一緒に寝てみないとわからないことだよ」と誤魔化した。間違えてはいないはずだ。


 近衛騎士が一枚の手紙を差し出してきた。


「グランツ国王様からのお手紙です」


 ひったくるようにとり、便箋を破り、中身を確認した。


 あのドケチめ。手紙の裏で返事しやがった。


[グローリエ国王

 ビールはまだまだお早い2人ですから、まだ参加は早いのではありませんか?せめてお茶会に致しましょう。場所はお互いに近い国境の町に致しましょう。ビールは大人同士で楽しみましょう。 グランツ国王より]


「なるほどな。確かに、しかし断っていた今までと違い善処した方だな。やはり末姫は重要視されていないのだな。それはそれで残念だがまあいいさ」


 40代のその男は赤い短い髪に緑色の目をしている。その瞳は猛禽類の様にどう猛な目をしていた。


「人質としてたっぷりと可愛がってやるさ」







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