42、招待状作り
リーリア・ハウスに戻ると、姉妹たちがみんなそろって何かを書いている。三白眼がこちらをじろりと見た。
「おかえりなさい。あなたにもやってもらうわよ」
「ただいま。何を?」
「お茶会の招待状ですの」
「お茶会?」
「テストの前日の安息日に、みんなで盛大にお茶会をするんですの!」
そんなことするの? テストの前日なのに。
それくらいテストが楽勝だということなのだろうか。それならうれしいけど。
「それは恒例なの?」
「そういうわけではない。前回やったのをラッタが今回もやりたいと言うから、お優しいお姉さまが承諾されたのよ」
「やりたければやればいいと思っただけよ」
ペンを動かしながら、淡々とマリエーリュスは応じた。
一九通、各ハウスへ出す招待状だ。突き出された二つ折りの厚紙を受け取り、開いて読んでみた。
『ダリアの花が可愛らしい時期も終わりに近づいて、寒さが毎日毎日少しずつ強くなっています。皆様も試験の前で、お肩が凝ることもあるでしょう。私たちリーリア・ハウスの姉妹は、皆様の肩凝りを少しでもやわらげようと、お茶会を催すことにいたしました。お嫌でないかたはお顔を見せて頂戴ね。私たち姉妹の喜びが皆様の喜びでありますように』
そのあとに日時と、場所。全文を囲むように花の絵が細かく描かれている。
「文面はラッタが考えたのです」
机に顔を近づけて、細かくペンを使いながら、そばかすのスイバリーが言った。
「この絵はスイバリーお姉さまのお手製ですの!」
「うまっ」
一見して印刷されたものだと思っていた。この細密画、手描きか。そんな特技があったとはな。ただの噂好きではなかった。
「芸術が好きなので」
上二人はせっせと文面を書き写している。デアもそれに参加させられた。
日時は、今日から五日後。試験開始の前日だ。場所は、第一神の礼拝堂の二階にある広間らしい。デアは入ったことがない。礼拝堂は一階だけで上の階は別だと言っていたが、広間になっていたのか。
雨音の中、みんなで書いた招待状にスイバリーが絵を添えて一九通、できあがった。
ニニーにそれを渡す。
「配達をお願いするわね」
「間違いなくすべてのハウスに届けてちょうだい」
「お任せを」
一九ということはもちろん、ガルチアーナのハウスにも届けられる計算だ。あいつは来るだろうか? いや、きっと来ないだろうとデアは思った。




