36、進捗報告
森へはいつもとは違う道を通って行った。工事現場を迂回していったのだ。
「それだけ?」
案の定、ガルチアーナさまはデアの持ってきた情報ではご満足あそばされなかったご様子。
「ラッテニア・コーセットさんの日記よりも、噂好きのスイバリーさんとか、忠誠心の強いランヒーネさんの日記ならもっと役に立つ情報があるでしょうに」
そんなことは、言われなくてもわかっている。だからといってそうそう簡単に人の日記が見られるものか。ラッタの日記だって単なる偶然みたいなもんだし。
「見る口実がない」
「口実を考え出すのがあなたの仕事でしょう」
やれやれと首を振って、
「まあいいわ。いちおう命令通り骨を拾って持ってきたことは評価できます。少しだけ教えてあげる」
とことん上からなのが気に入らないが、これでテスト対策が捗るならここは耐えるところだ。リーリア・ハウスの姉妹たちがもっと頼もしかったら、こんなやつに頭を下げることもないのに。
「次の休日にノートブックを持って、わからないところを整理してからここに来なさい」
「その日だけ?」
「一日あれば十分よ。今まで妹たちに教えてきたという確かな実績があるもの」
「ほんとにそうならいいけど」
ガルチアーナは自信満々だ。
なんにせよこれで、ガルチアーナの機嫌も取れたし、テストにも明るい展望が見えたというものだ。ユニオンのやつらがどう出るかが気がかりだが、あの"鉄の"サイールみたいなやつが出てこないかぎり、なんとでも対応できる。
……だが、そううまくはいかなかった。
障害は意外な方向からやってくる。




