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33、リーリア姉妹、学力の現状

 そんなことを言われたが、ガルチアーナに教わらないほうがよさそうな気がする。別にいい成績を取りたいわけではなくて、不合格にさえならなければいいのだ。


 今晩のメニューはトマトのシチューと魚のパイであった。それをつつきながら、


「お願いがあります」


 とデアは切り出した。


「お願い?」


 三白眼がうろんげにデアを見やった。それをマリエーリュスが制して、


「聞きましょう」

「はいっ、お姉さまがそう言うなら」

「テスト……勉強教えてほしいんですけど」


 沈黙が、リーリア・ハウスの食卓を覆った。


 デアはそばかすに目をやると、彼女はそっと目をそらした。


 視線を三白眼に目を移すと、彼女はそばかすと同じようにした。


 マリエーリュスは目をそらしはしなかったが、


「わたしは教えられるほどの力はないわ」


 と、明確に否定した。


 学力的にはさほどではない、というガルチアーナの言葉はどうやら本当らしい。


「三人とも、上級クラスでしょ?」

「アデリア。大人になると子供のころの気持ちを失っていくものなのかも知れないわね」

「いやいや」


 昔習ったことは忘れたということか。


 ほんと頼りにならないんだな。


「あまりテスト前だからといっていっぱい勉強する人は少ないんですのよ。テストというのは、普段の実力をはかるものですものね。それに、悪くてもー、落第しなければそれでいいんですの」


 と、ちびすけが言った。お姉さまがたをフォローしているのだろう。


 上流階級の子女だから、学問があることで就職に有利になるとか、学者として知の蘊奥をきわめるとか、そういうことはまずないのだ。社交界での交流の際に恥ずかしくないだけの教養がありさえすればいい、という通念がまだ大勢を占めている。だからごく一部を除いて、成績の上下で一喜一憂するような空気はない。


「なるほど」


 そもそもちゃんと勉強する気がないということか。


 そういう中でも、とデアはガルチアーナのことを思い浮かべた。ちゃんと優秀な成績を修めようとするところがあいつらしいところだ。


 しかしそうなると役に立つやつがいないということになる。


「はいっ、お姉さま、ラッタと一緒にお勉強しましょう!」

「……ええ、そうしましょう」


 同じ初級クラスだけに、上級の三人よりかえって役に立つかもしれない。デアはそう楽観的に考えることにした。


 というわけで、デアはリーリア・ハウス最年少のちびすけに勉強を教えてもらうことになった。

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