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23、授業風景

 デアは勉学には力を割かないことにした。どうせ一ヶ月でおさらばだ。試験で悪い成績だと放校だというが、その試験が来る前に学園からいなくなるのだから、勉強する意味などないのだ。

 露骨にサボったりで目をつけられることだけ避ければいいや、と気楽なものである。


 ただ、授業に運動があるのはうれしい。健康な体作りが必要ということで、ラファミーユ学園ではわりと運動にも力を入れているのだ。頭を使わず体を使う時間があるというのは、デアにとっては助かる。


 しかし、あまりに他の授業が退屈であり、更にガルチアーナからの命令を受ける身であるという鬱屈が溜まっていたのだろう。最初の運動の授業で、つい失敗してしまった。


 トラックを回る軽い持久走だったのだが、力をセーブするのを忘れてしまい、他の生徒を完全に置き去りにしてしまったのだ。


 しばらく走ったあと、あっ、と思って周りを見たら、生徒たちだけでなく先生も唖然としているようだった。


 運動に力を入れているといっても、厳しく肉体を追い込むようなものではなく、有閑階級の楽しいレジャーというようなものなので、デアが本気を出してしまえばレベルが違う。


 ざわついている。やばい、目立ってしまう。


 東部のお猿さん(と一部で陰口を言われているらしい)としては、多少運動ができる程度ならいいが、他と隔絶した能力を見せてしまってはまずい。


 デアは急激にペースを落とした。張り切って最初だけ全力を出したふうに見せかけたのだ。それで、何人かに抜かれてゴール。なんとか事なきを得たのだった。


 残念なのは、それ以降、せっかくの運動の授業でも全力を出すことができなくなったことだ。


 それでも、普通の授業とはデアの表情が違うらしく、運動しているアデリア・トリアトリーさんはかっこいいとごく一部で言われ出したりしているらしかった。


 それをそばかすに聞かされたときは、もっと目立たないようにしなくてはいけないと思った。


 ……それにしても、可愛いとかきれいじゃなくてかっこいいなんだな。

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