Prolog
走った。姿形の変わってしまった両足で、必死に地面を蹴る。
今までのように速く走れない。それでも走った。
足の裏が酷く痛む。それでも足を止めなかった。
やっと見えてきた主人のお家。扉を開けて、主人の元へ走る。
なのに。
どうして、そんな顔で見るの。
何を言っているの?
『ワンッワンッ』
「 ! !!」
『ゥウオン!』
「──!──?──────!、!!」
『ウォッ……』
視界は塞がれた。
手足を縛られて、目隠しをされて、何かに押し込まれる。
『ギャアアッ』
足に熱いものを押し当てられる。
低い声が、何かを叫んでいる。
痛い。痛いよ。ご主人。ご主人。どこに居るの。
『ぎゃうッ』
引き摺り出された体の拘束を解かれて、ほうり投げられる。
やっと目に入ってきた光は、今まで見ていた光と何処か違っていた。
ああ、人間が変な目でこちらを見ている。
お腹が空いた。試しにご主人にやっているように、目の前でお座りして待ってみる。
『ッウォンウォン!』
「────ッ!」
待って、行かないで。飲み物を──食べ物を──ほしい、だけなの──
ふっと目が覚めた。
四本の足で踏んばって、うんと伸びをする。
ゆっくり目を開いて横を見たところで、『キャンッ』と声を上げて驚く。
「………?」
目を見開く人間の男と目が合った。
ここはどこだ
確か、ハイエナに襲われて──