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門番のお兄さんに「頑張りなさい」と言われて国の中に入る事が出来た、あの後結局誤解は解けなかったで、無駄に喋るのは辞めようと思う。
「両親はいない、って発言が悪かったのかな。なんか情の深い人みたいだったけど……それにしてもエルフが黒を嫌ってるって言うのはまた面白いなぁ」
因みに門番さんに言われて、お金の事についてもってるかどうか探したら5,000enを所持金として持っていました。
「特に何かする事も無いんだよね……ああ何か無いかな」
私は、こう言ういわゆるテレビゲーム(に入るのかは置いといて)は今までやってきた事がないんだよなぁ。
理由としては両親がゲームクリエイターだって言うのもある。
二人からめい一杯の愛情を込めて育てて貰ったと言う自覚はあるんだけど仕事、仕事であまり一緒に遊ぶ機会がなかったんだよね。
両親が仕事で家にいない時は祖父母とよく遊んで貰えたんだけど、お爺ちゃんが囲碁や将棋をしているからそればっかりやってて、それ以外で遊ぶって言うのはあまりしてこなかった。
そんな事を思いながら歩いていると、何やら騒ぎが。近づいてみると何やら大会の様なものをしていた。
「さあさあ皆さん、よってらっしゃい見てらっしゃい!参加するのももちろん良いよ!」
何やらやっているようなので近くにいた大柄な男の人に聞いてみる。
「お兄さん、これって何をやっているんですか?」
「うん?ああ、コレか。いや何俺もよくわからんが何やらゲームをしているみたいでな」
「ゲーム、ですか?」
「ああ、リバーシって言う白と黒のボタンみたいな奴をひっくり返すつう奴だな」
リバーシ、俗に言うオセロか……。
「人族の商人が売り出したんだが、俺ぁ小難しい遊びは分かんなくてな、そうだ嬢ちゃんどうせなら参加してみねぇか?何やら賞品も出るみたいだぜ」
成る程、私は大きな男の人に礼を言うと主催者のもとに近づいてみた。確かに外見は恰幅のいい商人のような格好をしている。
「お!お嬢ちゃんも参加するかい?なら参加料は500enだよ」
「じゃあよろしくお願いします」
私は500enを支払いゲームに参加する。どうやら商人の男の他にゲームをする人がいるみたいだ。
「あんたが次の挑戦者?じゃあさっさとやろう、私もいい加減終わらせたいし」
どうやら相手になるのは女の子らしい、待たせるのもアレなので席に座る。
「さあ!本日最後の挑戦者!エルフの少女はチャンピオンを倒せるのか?勝てばいい物がでるぞ!さぁ勝負開始!」
商人の人が実況者ぽく話している、取り敢えずゲームを始めよう。
「ユウ、と申します。お相手お願いします」
「ん、よろしく」
彼女は石(白と黒のコマの事)を握る。
「黒」
「ほい、うん黒だね好きに選んで」
振るった石の色は黒。
「では先攻で、よろしくお願いします」
石を打つ、ゲームの中でゲームをする事になるとは思わなかったけどこの人結構強い。
「私さ、アルバイトでやってんだけど……」
「はい?」
打ちながら、話しかけてくる彼女、どうやら商人の人に雇われてやっているらしい。
「あんた、強いね」
淡々と石を打つ彼女。
「それはどうも、でも貴女も強いじゃないですか」
「ま、リアルだと大会で優勝した事あるし」
「え、凄いじゃないですか」
この人プレイヤーなんだ、気がつかなかった。
「……やっぱり同じプレイヤーか。それも初心者」
「はい、今日始めたばかりです」
「じゃあ先輩からのアドバイス、こう言うゲームはそう言うのは格好のカモだよ」
「か、カモですか?」
ゲームを続けながら話を続ける、どうやら彼女はリザと言う名前で、息抜きでこのゲームをしているらしい。
「そ、この領土はあまり見かけないけどそう言う初心者を襲うプレイヤーもいるから気をつけなよ」
そのあと彼女はいくつかの助言をくれた。
「アイテム欄とかあるでしょ?あれって入れられるのに限りがあるけど、どんなに大きくて重い物でも簡単に運べるから便利だよ、プレイヤーの特権だし、死んでも中に入れてた物は無くならない。軽いものならバッグに入れて運べばいい」
「バッグですか?」
「この大会の賞品、アイテムを出したまんまだと取られるけど、あのバッグだと話は別でね。入れた物は入れた本人にしか取り出せないんだ」
「おお、それじゃあこの勝負負ける訳にはいきませんね」
「勝てるかな?」
「勝ちますよ」
勝負はすぐに着いた、考える時間を数えなければリバーシは直ぐに終わるのだ、さて結果は……。
「32対32……同点ですか」
さすが現実で優勝経験を持って人だ、流石に勝てなかったけどなんとか引き分けに持ち込めた。
「おお、エルフの少女惜しくも勝利を逃す!しかしその健闘を称えましょう、このエルフの少女に惜しみない拍手を!」
商人の人の言葉に続いて多くの拍手が私に送られる。
「ま、妥当じゃない?今までの相手は全員染めてやったからね」
「いえいえ、流石ですよリザさん、これでもボードゲームは得意だと自負していたんですが……」
「ははは、私も楽しめたしそっちも楽しんでくれたなら何よりだ」
するとリザさんは何か操作したかと思うと……。
『プレイヤー・リザからフレンド申請が来ました』
これは……。
「リザさん、これは?」
「フレンド申請、メニューで送ったり受理できるよ、それとも私とそういうのは嫌?」
「ままま、まさか!」
私はすぐさまメニューを開き受理する、するとリザさんは。
「ちょっとだけまっててね」
リザさんが商人の人と話をしていると商人の人がこっちに来て。
「どうぞ、賞品です」
「へ?」
商人さんの手にはバッグが、どういう事だろう。リザさんには勝てなかったけど。
「私からのプレゼント、まっ先達からの贈り物だね遠慮せずに受け取ってよ」
「いやでも……」
流石に貰っていいものだろうか?こんな貴重そうな物を……。
「賞品て言ってもある程度やり込んだプレイヤーなら誰でも持っているやつだから、気にしなくていいよ」
「でも……」
こんなに良くしてもらえるなんて。
「うーん……じゃあさ、またゲームしようよ」
「ゲ、ゲームですか?」
「そ、ゲーム。私はボードゲーム全般が好きなんだよ、でもリアルで相手になる奴がいなくてね、ネットでもなんでもやったんだけど、ユウっちぐらいしか今の所強い人いないんだよ。リバーシだけでもいいからまたやろう?」
そういう彼女の顔は心底嬉しそうな笑顔でした。
「……なら、リバーシだけじゃなくて、将棋でもチェスでもお相手しますよ。寧ろそっちの方が私、得意ですし」
「ほっほー?言うね、別に私もリバーシ専門じゃ無いからね。ま、次やる時は決着つけようか」
このゲームの初めての友達は、ゲームの強い女の子でした。