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竪琴を手に取りながらチュートリアルの終了を告げられた私は、納得がいかず竪琴の弦を弾く。
「何が条件だったんだろう」
竪琴の説明欄を見ると。
・初心者の竪琴
音を奏でる楽器。吟遊詩人の使う代名詞。
「コレを取り出したから……とかじゃないよね」
嫌まさか、そんな簡単なワケ……でも楽器を使うのは難しいしそこまで難しい訳じゃないのかな。
『チュートリアルを終了します。終了に伴いスタート地点へ移動とアイテムの授与を行います』
辺りが草原から森の中に、取り敢えず竪琴をしまい杖を取り出そうとメニューを開く。
・初心者の杖
・エルフの御守り
・㊙︎クエスト全書
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なんか、増えてる。
「㊙︎クエスト全書、って何だろう」
竪琴をしまい、増えていたアイテムを取り出す。
・エルフの御守り
エルフが持つ御守り、装備していると森林でモンスターに見つかるのを防ぐ。
コレが多分貰えるアイテムの事だと思う、ネックレスなので首にかけておく。問題はもう一つ。
・㊙︎クエスト全書
管理AIメーデスがピックアップした、攻略どころか発見すらされていないクエストを纏めた本。プレイヤー・ユウのみが所持可能、破棄する事は出来ない。
「うーん、コレって多分他の人には配られてない奴だよね?」
本を開き中身を流し読みする。そこにはクエストの場所や出てくるモンスターの特徴が書かれていた。それも本の厚さから百じゃ効かない程だ、コレどうしようかな。
辺りを見渡し、どうするか考える。取り敢えずこの㊙︎本はしまって杖を取り出そう。
「妖精領からスタート、て事だから多分近くに妖精族の国があるはず。先ずはそこを目指してみようかな」
杖を握り、森の中を歩く。何となくローブのフードを被って見たり生えてる木を叩いてみたり、深呼吸してみたり色々した。
「すごいなぁ、VRって本当に現実みたい、お父さん達って本当にこんなの作ったんだ」
関心しながら歩いていると壁が見えた、近づいてみるとその壁は広く、高い。
「国の壁だよね?それじゃあ壁を伝っていけば入り口に着くかな?」
歩く事数分、大きな門に到着した私は門番らしき人に尋ねる。
「すいません」
尋ねると門番の男の人はこちらに気づいたのか顔を向ける。
「どうしたんだい?お嬢ちゃん」
声も顔も凄いリアルだ、耳が尖ってるから私と同じエルフなのかな?
「えっと、中に入りたいんですがいいですか?」
「それなら入国料1,000en」
「え」
お、お金?もってたかな?
「なんてね、妖精族は無料だよ。別の種族は貰うけどね」
「じょ、冗談でしたか……(凄いな、多分NPCだからAIが会話しているんだろうけど、リアルだなぁ)」
「あれ?本気にしちゃった?……それじゃあ別の所から来たのかな、珍しいね。ここら一体の村とかはもう無いのに、遠くから来たのかな」
「あ、いえその私は……遠くからって言ったら確かに遠いですけど」
距離と言うか次元が違うけど。
「それにしても魔法使いか……一人じゃ危なくなかったかい?」
一度もモンスターとかには合わなかったけど。あ、もしかして。
「多分、これのおかげです」
私はローブの中に入れてあったペンダントを取り出して見せる。
・エルフの御守り
エルフが持つ御守り、装備していると森林でモンスターに見つかるのを防ぐ。
「モンスターとかには会いませんでした」
すると門番のお兄さんは「コレは……」とか言っていたけどどうしたのかな。
「君、ご両親はどうした」
「へ?」
急な質問に戸惑う、私は焦って。
「両親は(この世界には)いません」
と答えてしまった。すると門番のお兄さんは項垂れてしまった、変な答え方しちゃた見たいで困らせてしまったようだ。一体何がダメだったのか、エルフの御守りをよく見てみる。
・エルフの御守り
エルフが持つ御守り、装備していると森林でモンスターに見つかるのを防ぐ。
特にこれと言った説明の見落としがないはずだけど……。するとお兄さんは「フードをを取って貰っても構わないかな?」と尋ねてきたので、特に拒否する理由も無いのでフードから顔を出す。すると……。
「やっぱり……君、大変だっただろう取り敢えず休憩室に上がりなさい、紅茶くらいだそう」
これは、何か勘違いされているのかな?勘違いするAIって凄いなぁ、何回目の凄いか分かんないけど何度も何度も凄いと思う。
「あの「いい、何も言うな」ちょ」
「その御守りを見てピンと来たよ。その御守りは君への深い愛情がこもってるのが一目で分かった、とても良いご両親だったのだろう。それにその目と髪の色、古臭いエルフの中には黒色と言うだけで嫌う物も多数いる、肌の色だけならまだしも苦労しただろうに。大丈夫王国はそんな差別なんて無いさ、今は亡きご両親にも安心して貰えるはずさ」
そう早口に言われ休憩室に手を引かれ紅茶を差し出された。
成る程、どうやら私は何やら悲惨な目に会ったと勘違いされているようだ、多分両親はこの世界に……の所からこんな風に勘違いされたのかな?それにしてもエルフにとって黒って嫌われてたんだ。キャラメイク失敗してしまったかな?
「勘違いされているようですけど、多分ご想像されているような事は、私経験していませんよ?」
「うんうん、分かってるから大丈夫だよ。入国は大丈夫だから挫けないで頑張るんだよ、じゃあね」
「駄目だこの人話聞かない」