妲己編 第3章
どーも、鳳凰です。えーと、紹介することなくない?面倒なんだけど…まぁ、神様という事で、秘密事項が多いので…好きなもの?苺大福だけど。妲己について?我儘女王だね。ほかに言うことないから、これで終わり…チッ、めんど…
穂志が来て5日、土曜日。妲己は相変わらずくそを見るように穂志を見ている。そして相変わらず穂志は美味しいご飯を作る。
「あー、まずっ…ご馳走さまでした。」
妲己はまずいと言いながらも穂志のご飯は残したことがない。
「美味しかったですよ、穂志さん。」
朱雀はいつものように美味しいと言って、皿を下げる。穂志はコーヒーを啜りながら、朱雀に微笑む。
「朱雀はいつも素直だな。あの嘘つき我儘令嬢も見習ってほしいもんだよ。」
「そうですね、今はだいぶマシになったと聞くんですがね…」
「あれで?」
「あれで…」
朱雀は苦笑いをする。
「失礼ね。ちょっと、私もコーヒー飲みたい。河童野郎いれて。」
穂志と妲己は3日目以来、お互い名前で呼んでいない。
「自分でやれば?」
「私があなたのコーヒーを飲んであげると言ってるんだから素直に喜びなさいよ。」
「そりゃどーも。」
妲己は穂志のコーヒーが飲みたかっただけなのだが素直に言えなかった。
「そういえば、今日学校じゃ無いんだね。私服初めて見たかも。」
「え?あっ、そうよ。」
妲己は高校生らしいラフな格好に着替えていた。
「どっか出かけるの?」
コーヒーを運びながら穂志は尋ねた。
「買い物に行こうと思ってるけど。なんで?」
妲己はコーヒーを受け取り啜った。そして顔が満たされる。
「美味しい?」
妲己はハッとして穂志にかみつく。
「うるさい、私の質問に答えなさい。」
「料理で欲しいものがある。メモしとくからさ、買って来てよ。」
「自分で買いなさいよ。」
「あー、わかったよ。」
穂志の顔がイラついた。妲己はなぜか勝った気がした。
「自分で買えとは言ったけど、一緒に行くとは言ってないんだけど…」
スーパーで穂志と妲己は並んで野菜コーナーを回る。穂志は嬉しそうな笑顔を妲己に向ける。
「なにその顔…うざいんですけど…」
妲己が顔をしかめる。
二人がお肉コーナーに曲がった時、妲己にとって見覚えのある顔があった。
「え?あっ…」
「灯奈ちゃん?お使いかしら?」
「いえ…そう言うわけでは…」
天具灯奈は妲己の部活、古代文学部の後輩である。何か少し気まずそうにしている。
「灯奈、洗剤これでいいか?ん?」
洗剤コーナーから顔を出したのは、古代文学部の顧問の矢本龍だった。
「二人とも…そう言う関係なのね…」
「違うんです!先輩!説明しますから!」
龍はめんどくさそうに頭をかいた。穂志は我関せずというようにお肉を見ている。
「説明しますので!誤解はしないで下さい!」
「わかったから!とりあえず出ましょう。」
スーパーにいたお客さん達がうるさそうに妲己達を見ていた。
妲己たちはスーパーを出て近くの公園のベンチに座った。
「私、鴉天狗なんですよ…」
「知ってるわ。」
「へ?」
自分の正体を知っているというのは怖い事だ。
「私も似たようなものなのよ。ほら続きは?」
しかも鴉天狗についてはほとんど触れられない。
「えーっと、私の実家は新潟なんです。本来なら新潟の高校に行くはずだったんですが、私がどうしても嫌だって言ったら、監視付きで東京まで出てもいいと言われました。それで、龍さんはその監視役なんです。」
「そう、苦労してるのね。」
妲己は興味がなさげだった。
「あの、その人は…」
灯奈はおずおずと穂志を指差して尋ねた。
「五月先輩の彼氏なんですか?」
「へ?あっ、いや。その…」
妲己は自分も男連れである事を忘れていた。
「そうだよ。俺は五月の彼氏の小野田穂志。」
穂志は妲己を抱き寄せて妲己の顔を自分の肩に押し付け、声が出せないようにした。灯奈は顔を赤らめた。妲己は穂志から離れようともがいてる。
「灯奈、帰ろうか。邪魔しちゃ悪い。」
龍が立ち上がり、灯奈の手を取った。
「あの、私たち失礼しますね。すみません。」
二人が去ったあと穂志は妲己を離した。妲己の顔は真っ赤になっている。
「な、勝手なこと…彼氏なんて…」
妲己はあたふたとしている。穂志はそれを楽しそうに見る。
「俺が彼氏じゃ嫌?」
「うん、嫌。」
妲己は割と即答で、穂志は傷ついた。
「まぁ、いいや。俺らも帰ろうか。」
穂志も龍と同じ様に、立ち上がり妲己の手を取った。妲己は意外にも素直に立ち上がった。
「手、繋いだまま帰ろっか。」
「バーーーーーカ…」
そう言いながらも妲己は手を払わなかった。
「お昼は何食べたい?」
「なんでもいい。」
妲己は俯いて無愛想だ。しかし、穂志の手を握り返した。
「訳わかんねー。」
穂志は笑った。そして妲己の手を強く握った。
「えっ?何がどうしたんですか?」
二人が手を繋いで帰って来たことに朱雀は驚きを隠せない。
「あっ、いつまで握ってるのよ!」
妲己はまだ手を繋いでることに気づいて、穂志の手を振り払った。
「いい気にならないでよね!仲良くするつもり…なくはないけどね!」
妲己は足跡を鳴らして部屋に入っていった。
「やっぱ、何かありましたか?」
「色々とね。そんな事より、お昼何がいい?」
「うどん!」
穂志の顔は今、もの凄くゆるゆるしている。
一方妲己の方は。
「絶対好きじゃない!絶対好きじゃない!絶対好きじゃない!絶対好きじゃない!」
うずくまりながら、何度も同じ事を言っている。しかし頭の中では、
(凄くいい匂いだったな。他の握り方とか紳士だった。凄く優しかったな。今まで私が突っかかってただけなのかな。もしかして、あいつ私のこと好きとか?ないない!あり得ない!でも…)
なんて考えている。
「そもそも、妖なんだから!人と一緒になれるわけないし!」
妲己は自分に言い聞かせて、部屋から出た。
お昼ご飯食べ終わった三人は、後片付けをして二時間ほどリビングでだらだらしていた。
「もう二時半ですね。お二人とも、お仕事があるので出掛けますね。」
朱雀は本来の姿、炎鳥の姿になった。
「帰りは何時頃になりそう?」
「早くて明日の昼になります。では!」
朱雀はベランダから飛び去っていった。
「二人だね。」
「そうね。だから何?」
妲己は逃げようとした。しかし穂志に後ろから抱きつかれた。
「離して。」
「嫌だね。」
穂志は力を込めた。妲己の顔はどんどん赤くなる。もがく力もだんだん弱くなる。
「なんで…くそ…離してよ!」
「嫌だってば。」
「何がしたいのよ!」
穂志は妲己は自分の方に向かせた。
「なんて顔してんの…そんな顔されたら、抱きしめたくなるじゃん。」
妲己は辛そうに顔をしかめていた。
「もう抱きしめてんじゃん。バカ。」
妲己は穂志の腕から出ようとした。
「俺のこと嫌い?」
「嫌いって言ったら、貴方相当恥ずかしいことしてるわよ。」
「嫌いでもいいよ。惚れさせる自信あるし。」
穂志はより強く抱きしめてくる。
「なんなのよ、その自信。」
「嫌いなの?好きなの?」
「……嫌い。」
妲己はボソッと言った。
「ええ〜、ここは好きって言うところでしょ。」
穂志は妲己を離した。そして妲己の両側の頬を掴んだ。
「絶対惚れさせて見るもんね。覚悟しろ。」
穂志は強い口調で宣言した。妲己の顔はより赤くなる。
「会って5日しか経ってないのよ。そんなすぐ好きになるとか…信じられないわよ。」
「俺、恋は運命だと思ってるんで。」
「訳わかんないし…つか、離して。」
チュッ
穂志は妲己の口の横、ギリギリ口にならないところにキスをした。
「っ…!!」
「キスされると思った?」
穂志は妲己の真っ赤な顔を確認して手を離した。
「夜二人だけど、何する?」
穂志はニヤニヤしている。
「何もしないわよ!」
妲己は穂志にソファーのクッションを投げた。穂志はクッションを難なくキャッチした。
「妲己」
「名前で呼ぶな!」
「名前で呼んでよ、妲己。」
妲己は俯いて本当に小さな声で言った。
「ほ、穂志…」
妲己はリビングを出て、自分の部屋に入った。
「なんだよ…くそ可愛い…」
穂志は満足げに笑顔だった。
穂志のことが好きだと気づいた妲己。妲己に惚れさせると言った穂志。妲己が素直になるのはいつなのか。
ちゃんとした後書きを描いたことがありませんでしたね(笑)
この物語は人間と妖と神様が共存して行くというものです。一人一人の個性は最大限に引き伸ばしたいです。
物語の登場人物は一人一人にモデルがいます。アニメのキャラだったり、女優や俳優だったりします。
この物語で地球を救うとか、秘宝を求めて冒険をする、などのストーリーは今はまだ入れないつもりですので、日常の中一コマを楽しんでもらえればと思っております。
ありがとうございます。