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妲己編 第2章

改めまして、中国の鳥神の朱雀です。よろしくお願いします。少し自己紹介のお時間を下さい。

えっと、好きな食べ物はメロン。尊敬している人は兄の鳳凰。それから、趣味は読書です。

妲己さんとは高天原で知り合いました。天照の大神様と妲己さんは犬猿の仲だそうです。

こんなものでしょうか。自己紹介はしたことがなくて…えー…なんか、すみません。



穂志が家に来てから3日。妲己の機嫌は日に日に悪くなっていった。朱雀は妲己がいつ爆発するかハラハラとしてた。しかし、今日は朱雀は朝からいない。

「起きてー、ほら。朝ですよー。」

穂志が妲己の布団を剥ぎ取った。

「ん〜…もうちょっと………はぁ!?」

妲己は跳ね起きた。

「なんで勝手に入って来ているのよ!」

「起こしに来たのに。」

「頼んで無いわ!」

妲己は穂志を部屋から追い出した。そして制服に着替えて妲己も部屋を出た。リビングにはサンドウィッチとコーヒーとサラダと桃があった。

「これ貴方が準備したの?」

「そうだよ。美味しそう?」

「………美味しそうでイラつく…」

妲己は顔をしかめてサンドウィッチを口に運んだ。そしてさらに顔をしかめる。

「めちゃくちゃ美味しくてイラつく!!」

さらにコーヒーを飲む。

「何でこんなに美味しいのよ!」

「怒んないでよ。」

穂志は楽しそうに妲己を見る。妲己は悔しそうに穂志を見る。

「ご馳走さま!不味かったわ!」

食べ終わった途端に食器を洗い部屋を出て行った。一人残された穂志は独り言を言った。

「不味いって…でも全部食べるのかよ…」

穂志の顔は少し嬉しそうだった。


学校でも妲己は不機嫌だった。クラスのみんなは妲己が不機嫌極まりない顔をしていたので、怖くて話しかけられなかった。

「しっつれいしまーす!五月!ヤッホー!」

千代が来た。クラスの違う千代は、時間があればよく妲己のところに来た。

「おやおや?不機嫌極まりないね〜。何かあったかい?親友よ!」

千代は妲己のところに来て、後ろから抱きついた。妲己は千代を無視した。

「もしかして恋の悩みとか?五月は恋をしたのかな?であれば、この恋のキューピッドに話してごらんなさいな。」

「恋なんかしてないわよ。」

妲己は素っ気無く答えた。

「今はまだ気づいてなくても、その顔は恋をする人の顔だよ。」

「どんな顔よ…」

妲己の不機嫌な顔が、さらに不機嫌になる。

「あはは、これ以上怒らせたら私の身が危ないからおいとまするね。ばーい!」

千代は逃げるように帰っていった。妲己は、不機嫌な顔を少し緩めた。千代が和ませてくれたのだ。


「恋をする人の顔か…」

妲己は家に帰りながら考えていた。

恋をする人の顔とはなんなのか。

そもそも私は恋をするのか。

恋をするのは良いが、妖である私と誰が恋するのか。

人間に恋したら、それは実るのか。

「そもそも、私は誰と恋をすれば良いのか…」

妲己は考えるだけ悲しい答えしか出てこないと思ったので考える事をやめた。

「妖が恋なんてしないのよ…千代もわかってるくせに…」

妲己は悲しそうな顔をした。


家に帰って来た妲己は少し機嫌が直っていた。本当に少し。

「ただいま。」

「お帰り〜。夕飯作ったから食べようか。」

妲己は穂志の顔を見て、帰りながら考えていたことが頭に浮かんで来た。

「どうせ、すっごく美味しいんでしょ。」

妲己は忘れようとしたが、なかなか頭から離れない。

部屋に入り食卓に着いた。穂志は鍋とフライパンを持ってきた。

「じゃじやーん、春野菜のスープと海のパエリアです!どう?」

妲己はまたも、美味しそうでイラついて来た。

「美味しそうね…」

「遠慮なく食べてね。」

妲己は朝のように顔をしかめながら料理を口に運んだ。

「あーもう!美味しい!」

妲己は悔しながらも手が止められない。本当に美味しいのだ。結局、全部食べきってしまった。

「美味しかった?」

「分かってるくせに聞く必要あるの?」

妲己の不機嫌はまたもと通りになった。

「妲己は面白いね。」

「へ?」

穂志に初めて名前を呼ばれた。妲己は動揺している自分がいる事に困惑した。

(たかが名前呼ばれただけじゃ無い!)

「俺なんか変な事言った?」

穂志は嬉しそうに妲己を見つめる。妲己は悔しそうに穂志を見つめる。

「あんたなんか大っ嫌い!!!」

よくよく考えれば、新婚夫婦のような1日を過ごしていた事に妲己は今気づいた。

「もう!あー!」

妲己はイラついて仕方がなかった。

「貴方といると胃に穴が開くわ。穂志!」

妲己は名前を呼ばれた仕返しのつもりで穂志を呼び捨てにした。しかし、穂志はニコッとしただけだった。

「シャワーしてくる…」

妲己は逃げるようにその場を去って行った。

またまた一人になった穂志。今度は顔を赤らめている。

「名前…呼ばれたな…」


妲己はシャワーをしながら気づいた。

「シャンプーが少し減っている?朱雀も鳳凰も使わないのに…」

妲己は気づいた。それは、一人しかいない。

「あいつ…やっぱ好きにはなれないわ…」

妲己はより不機嫌になった。千代に恋する顔だと言われ、帰り道に恋について考え、『もしかしたら穂志のことが!?』などと少し考えたが、妲己はやはり穂志を好きにはなれなさそうだ。

「すっごく嫌い!なんなのあいつ!天照と同じくらい嫌いだわ!」

一方、結局嫌われた穂志は妲己のことを可愛いなどと浮かれたことを考えていた。

「可愛いじゃん、意外と。」


お互い愛し合う日が来るのか、来ないのか。

妲己にとってはまだ地獄の3週間だが、穂志からしてみればどうだろうか。まぁ、妲己は恋愛下手だけどね。

少し遅くなってしまいました。すみません。

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