妲己編 第0章
私の日曜日の朝はコーヒーから始まる。香ばしいこの香りは私の心を癒してくれる。片手に本を持ってゆったりしながら、休暇を楽しむ…はず…なのに…
「なんでコーヒーがないのよ‼︎」
彼女は机を力強く叩いた。上に乗っていたお皿が揺れる。綺麗な顔が怒りに歪んでる。
「だからコーヒーなら穂志さんが持って行きましたよ。妲己さん。」
机の端で本を読んでいる見た目幼稚園児の男の子が顔も上げずに答えた。名前は朱雀。顔は無駄に大人びている。無駄に。
「なんであいつが持って行くのよ!てかなんであんた私の本読んでるのよ!」
怒鳴っているのは妲己。中国の妖怪であることは言わずともわかるだろう。
「もう!その本明日返さなきゃいけないんだから返してよね!」
妲己は本をひったくった。それは妲己の通っている高校の図書館の本だった。
「そんなお子様が読める本じゃ無いわ、チビ!」
昔はもっと気品に満ちていた。と思いたい……一方本をひったくられた少年は怒りで立ち上がった。
「私は貴方よりも年上ですよ!?もっと敬意を払うべきじゃありませんか!?」
朱雀は中国の神様だから、中国ができた頃から存在している。
「子供じゃなくて、ジジイだったわね!」
今の朱雀の顔をどう表現しようか。お爺ちゃんが幼い孫にクソジジイと言われた時のような顔といえば伝わるだろか。
「五月蝿いよ〜、二人とも。」
いつのまにか二人の前に朱雀より年上に見える少年がいた。この少年は朱雀の兄の鳳凰だ。普段おっとりとした顔に少し怒りが見える。
「朱雀は妲己さんにお世話になってるから、あんまり文句は言わない事。」
鳳凰が朱雀に注意する。そして、妲己を見て…というより睨んで、
「妲己は、この家で二度とジジイと言わない事。今度言ったら、高天原の天照の前に連れてくからね。」
白虎、青龍、玄武に並ぶ中国の四大神様の一人である鳳凰は天照と大の仲良しで、妲己が天照のことを嫌いなのも知っている。ちなみに妲己を高校に通わせたのが、その天照だ。
「ごめんなさい。気をつけるわ…」
妲己は天照の前で何をさせられるかなど、知りたくもなかった。鳳凰は妲己の謝罪の言葉を聞き、いつものおっとりした顔を戻った。
「じゃあ、せっかくの休みだしコーヒーを含めて買い物でもしようか。」
妲己は子供扱いされてるように思った。しかし、鳳凰と朱雀と買い物に行けることは少ない機会なので素直に頷いた。
「スターマックスのコーヒーがいいわ。」
妲己は二人の母親に見えるように姿を変えた。化けたと言うのが正しいだろうか。二人と手を繋いで街中を歩く姿は、親子そのものだった。
「じゃあ、ついでにフラペチーノ飲みたいです。」
「僕も飲みたいな。」
妲己は自分も飲みたかったので、Mサイズの抹茶味を三つ頼んでコーヒーも買って三人で歩きながら飲んでいた。
「なんか、休日って感じがするわ。」
妲己は呟いた。妲己は内心とても楽しんでいた。
この後、三人は服とか、お菓子とか、日用品を買いお昼ご飯を食べて帰った。そして心ゆくまで三人で昼寝をしていた。
夜ご飯を食べて風呂に入ったあと、妲己は宿題をしていた。
「なんで私がこんな問題を…天照のやつ…」
妲己は人間界に来る代わりに、高校に通うように、しかも生徒会長になるよう言われた。妲己は高校では狐田五月と名乗っている。今は高校二年生。
「単なる嫌がらせじゃ無さそうだし…」
妲己は宿題を終わらせ、片付けて布団に入った。もやもやとした気持ちは治らず、眠れなかったのは言わずともわかるだろう…
初めての連載投稿です。アドバイス等があれば幸いです。よろしくお願いします。