自己満足な結末
ポタポタと赤黒い液体が落ちていく。
その先に待つのは、同じ色で出来た水溜り。
粘着質なそれを踏みつけて、彼女は笑った。
頬に涙の後を残したまま。
「愛していました」
零した言葉に偽りは無く、悲痛な声が静まり返った広間に響く。
足元に倒れ込むのは、このままでは黄泉路を渡るだけの男。
空になった玉座が、彼女達を見下ろしている。
「どうして……」
戸惑う声が、彼女の背から聞こえた。
振り向けば、其処にいたのは武装した兵士達と怯える姫君。
彼女とそっくりな姫君は、今にも泣きそうな顔でもう一度「どうして」と呟いた。
「あなたと私を間違えたから……そういうことにしておいて」
彼女はそう言うと、胸元に剣を突きつけた。
兵士達が彼女を取り囲み、姫君の目を覆う。
「それでは、皆様。幾世にもごきげんよう」
兵士達の声を、伸ばされる手を無視し、彼女は自身を貫いた。
溢れ出る赤黒い水が、ゆっくりと溜まっていく。
「これで、永遠に一緒です」
ピクリとも動かない男を抱きしめるように腕を広げた彼女は、ただ満足げな表情で目を閉じた。