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ぷろろーぐ

 大規模VRMMOグリーン・フロンティア。

 すっかりと一般的になったバーチャル・リアリティ技術による現時点最高傑作と言われるそのゲームはもともとは医療用に開発された世界でもあった。 現実と遜色ない疑似感覚がさまざまなリハビリテーションに応用できるのではないか、という仮説の元、十分な時間と資金、各種才能を継ぎこまれたプロジェクトで、一部医療機関で試験運用が開始、そしてその3ヶ月後には十分な治療効果が認められ、臨床試験の参加を終えた一部試験参加者から一般公開への熱烈な要望が出されるに至った。 そして、それからさらに3ヶ月の検討期間をもって治療用は新規に専用世界を用意し、現ワールドは登録制のゲームとして一般公開されることが決定された。

 そして正式稼働後1年。

 グリーン・フロンティアは国内最大規模のVRMMOとなり、大勢のプレイヤーが楽しむ世界となった。

 『現実とは違う世界での生活を楽しみながらストレス解消を』を謳い文句とするこのゲームはプレイヤーの性別以外、多種多様なキャラクター設定を可能とし、ありがちな固定職業などはなく、その気になれば無限の道を究めることも可能としている究極の自由と難易度を誇る。 ゆるく遊ぶこともとことんまでやりこむことも可能なゲーム。 当然、のめり込むプレイヤーも多いだろう、と危険視する論説もあった。 だが、元々が医療用であるが故に、このゲームでは現実世界でのプレイヤーの状態を重視し、あらゆる面から病的なのめり込みを阻止する防止策が設定されていた。 プレイヤーは世界に接続するための機器に備わったチェッカーで一定以上の接続を強制阻止されるようになっていたのである。

 そんな徹底した運営方針による管理も相まってグリーン・フロンティアは優良ゲームとして不動の地位を築いていた。


 だがその日。

 グリーン・フロンティアの世界からひっそりと一人のプレイヤーが消えた。

 一般公開が決まってからのクローズドベータ版から存在していた最古参のプレイヤーだった。

 どこのギルドにも属さず、固定のパーティーも組まない。 声をかけられれば気さくに応じ、聞かれれば最前線の情報を惜しげもなく開示し、初心者を助けたりもするソロプレイヤー。 三桁に満たないクローズドベータユーザーの中でも圧倒的な接続時間を誇り、豊富な情報量、それをひけらかすことなく提供する気さくさから『歩くウィキペディア』などと評価をされていたのに消える直前の半月は人が変わったように居丈高に振る舞い、最古参であるが故の装備やスキルを自慢し、他のキャラクターをバカにした。 イベント記念品や限定装備などを超高額で売りさばいていたりもした。 そのあまりの豹変ぶりにゲーム内でもユーザー掲示板等でもまことしやかに囁かれたウワサ。


 誰かがアカウントハッキングに成功し、このプレイヤーアカウントを乗っ取ったのではないか。


 大規模VRMMOとしてこの国最大の稼動ユーザー数を誇るが故に繰り返されるハッキングをことごとく跳ね除け、寄せ付けないことでも有名なセキュリティがついに陥落したのか、と。

 だがその日、そのプレイヤーはふっつりと姿を消した。 いつオフラインになっているんだとまで言われていたのに半日以上、未接続。 そして日が変わる頃には数少ないフレンド登録の相手のリスト表示も『未接続』から『存在しません』の表示に変わり、そのプレイヤーキャラクターがデリートされたことを知らせる。

 それからすぐの定時メンテナンス後、公式サイトトップに重要情報として短いお詫び文書が掲載される。 掲載されていたのは以下の内容。


 アカウントハッキングが起こったこと。

 被害にあったのはごくごく少数だったこと。

 ハッキング方法は今後のためにも明かせないが、すでに対策が完了したこと。

 被害にあったユーザーには補填を申し出ていること。

 責任として一人の役員が降格となったこと。

 最後に全ユーザーへ不安を与えたことに対する謝罪と再発防止への約束。


 やはり消えたプレイヤーはハッキングされ、そのユーザーの意志でキャラクターデリートとなったのだろう、と失われたウィキペディアを嘆く声がぽつりと呟かれる。 だが、それも一時のこと。

 そんな事件もよくあることとして大多数のユーザーの記憶からは薄れ、いつもの時間が流れていく・・・

流行なものを書いてみたかった。 後悔はしていない(笑)

さて、どこまで続くやら?

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