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こんな方法でトリップするなんて聞いてない!

テストの点数で(偽装されて)負けた友人に罰ゲームを提案され、仕方なくコンビニでルパンごっこをやる破目になった私、影内 栞奈[かげうち かんな]。罰ゲーム終了間近、コンビニ抜けたら知らない建物(学校っぽく見える……?)がそびえ立っていました。


……ここ何処ぉぉぉ!?


どうやらルパンは私の居場所を盗んでしまったようだ……。



「何で向かいに体育館がないの?可笑しいよコレ絶対可笑しいよ、ここ何処なの!?」



嘆いてみるものの、景色は前居た時と変わらない。

……いや、これ友人が前に言ってた気がするぞ?これってもしかして、断言したくはないけど異世界トリップって奴じゃあ……?だとしたらどういうことなの……。


こうなった原因かは分からないが、時は少し前に遡る。


***


3月下旬。

影内 栞奈は罰ゲームというモノをすることになった。

学年末の定期考査(簡単に言えばテストの事)の合計点数が高い者が低い者に罰ゲームを与える、という事に。先程栞奈の友人の家に定期考査の結果が郵送で届いたらしく、友人が1158点、栞奈は1157点、で栞奈は1点差で負けてしまったのである……!!つまり、栞奈が罰ゲームをやるという訳だ……何で罰ゲームやろうって言ったんだろうと栞奈は後悔するが今更遅い。

まさかこんなことが起こるなんて思いもせず、罰ゲームを受ける約束をしてしまったため携帯を放り投げたくなる気持ちになった。

メールには“近くのコンビニに10:00に待ってるから”と書かれてあった。

嫌な予感がして明日が来ないで欲しいと願っても、時間は普通に過ぎていった……栞奈は泣いた。


翌日。



「ねぇ、本当にやるの?」

「約束したでしょー?罰ゲームやるって」

「た、確かにそうだけど。……よくこんな罰ゲーム考えたよね、あんた」

「知恵袋で協力して貰った」

「最悪だよ!最悪だよソレ!!」



自分で考えてよ!!と言った栞奈に、友人である紀井 梢[きい こずえ]が負けるのが悪いとニヤニヤして笑う。栞奈と梢の目の前にはコンビニがそびえ立っている。



「(私は今から戦場に赴きます……)」



今までお世話になったコンビニが、こうして敵になるなんて思わなかった栞奈は泣きながら、心の中で敬礼をした。


さて、栞奈がやる罰ゲーム内容は“ルパンごっこ”だ。

本来ならばタバコなどが必要らしいが、未成年って事で没。

だから本名も知らない誰かから知恵袋で教えて貰ったルパンごっことは、少し違うルパンごっこをすることに。

因みに内容は簡単なもので、「ルパン!ルパンを見かけませんでしたか!?」これをコンビニ店員に言って「ルパンはどこだ!?ルパーン!!」とコンビニを出ていくだけ。

シチュエーションは栞奈に任せる、と梢は言った。



「本家よりはマシでしょ?」

「どちらにせよ恥ずかしいって事には変わりないよね」

「うん、そうだね」

「店員さんが可哀想だよね」

「大丈夫、その店員さん私のお姉ちゃんだからね。安心して、お姉ちゃんノリノリだから」

「用意周到!?」

「ノリの悪い店員も困るじゃない?あと皆さんはマネしないでね」

「そうだけど、って思った私がバカだったよ!あと誰に言ったのソレ!?」



自分はやらないから、と余裕をこいでる梢に栞奈はイラッとした。

栞奈が勝ったら梢に向かって顔面クリームパイをやる予定だったのに、計画が滅茶苦茶だ。



「じゃあ栞奈、健闘を祈る」

「逝ってきます」



はじめのいーっぽ、そんな気軽ではなく鉛でも入ってるんじゃないかと思われる足で、栞奈はコンビニの自動ドアを潜り抜けたのだった。

そんな国境線越えるテンションで罰ゲーム受けられないよ……。

入って茶髪の店員と目が合い、友人のお姉ちゃんだってことを確認して適当にお菓子コーナーに入った。

お菓子を適当に選んで手に持ち、レジへと持って行った。

客が栞奈以外誰一人いないのは、梢の姉の協力で人数少ない時間帯を把握していたのかもしれない。



「栞奈ちゃんだよね?ごめんね妹がこんな事やらせて」



申し訳なさそうに梢の姉が話しかけた。



「い、いえ……勝てる自信あったんですけどね、私……」

「あっ、その話……実を言うとね、妹の点数10点少なかったの」

「……へ?」



栞奈は素っ頓狂な声を上げた。



「えーと、ね、栞奈ちゃんの点数の方が高かったのよ」



……知りたくなかったあああ!!


悶々としている栞奈を見て、外にいる梢はクスリと笑った。

梢の姉曰く、先に栞奈が点数を教えたから嘘をついて若干点数を高く設定して教えた様だ。


……後でコンビニ向かいの体育館借りてバスケでコテンパンにしてやろう。


密かに栞奈は思った。



「ほんとゴメンね。だから私協力する。例の言葉、小さくでいいから」

「は、はい……」



ゴクリと唾を飲む。


言え、言うんだ私……!!


心の中で励ました栞奈は小さく息を吐いた。



「『る、ルパンを見ませんでしたか……?』」


***


一方その頃。

ある高校のサッカー部の部室にて、大いに盛り上がっている部員たちがいた。



「いやー、皆ありがとうなわざわざ」

「いやいや、こうやって盛り上がんのがサッカー部の伝統っスよね」

「お、分かってんじゃねーか瑞貴[みずき]」

「そりゃ先輩の背中見続けてますから」



3年生のサッカー部の先輩が、瑞貴と呼んだ男の肩をポンポン叩いた。今この部室では、引退した3年生の為の“3年生を送る会”をやっていた。汚れてしまった部室をきちんと綺麗に掃除し、不器用な男達が作り上げた飾り付けは男らしさが出ていた。男らしさってのは雰囲気で感じ取ってほしい。


瑞貴……本名、霧島 瑞貴[きりしま みずき]は、このサッカー部の副キャプテンを務めることになっている。



「瑞貴ぃ、例のアレ出来てるよな?」

「もっちろん。今の俺はテンションハイだから何でも出来る気がする」

「その意気だ瑞貴!!」

「俺が先輩にパイ投げつけて、でもって俺にハルトがパイをぶつけるでいいんだよな」

「そうそう」



菅野 陽翔[すがの はると] が片手にパイを持った。陽翔はこのサッカー部のキャプテンを務めることになり、人望が厚くていい奴だ。


瑞貴と陽翔は悪戯っ子が浮かべるような笑みで、今一度パイ投げの催し物を確認していた。そのことに幸か不幸か、先輩は気付いておらず楽しそうにジュースを飲んでいる。


「せーんぱい」

「どうした瑞貴?」

「先輩の眼鏡外した姿、最後に見させてください!」

「なんだ、そんな事かよ」



ははは、先輩は笑って眼鏡に手を掛ける。瑞貴は計画通り……と心の中でニヤリと笑った。流石に眼鏡がクリームだらけになるのは可哀想だから、メガネを外させ顔に直接ぶつけようという作戦である。



「ほい、こんなもんだろ」

「先輩!今までありがとうございましたァァァ!!」



ベシャア!!

瑞貴が右手で投げたパイは見事先輩の顔にクリーンヒットした。ボトリとクリームの欠片を落とした先輩の顔は驚いて唖然とした顔になっている。



「み、瑞貴?おまっ、一体何して……」

「いやーすんません、手が滑っちゃって……」

「瑞貴ィィィ!何先輩にやらしとんじゃあああああ!!」



右の視界からパイの残像が見える。

そうだ、これでいい……瑞貴は思う。これで瑞貴と陽翔からの催し物は終了だ。あとは瑞貴がパイを投げつけられ先輩に笑ってスンマセン!!と2人で言えばいいんだ。


さあ来い陽翔、俺は全力で受け止める!!


身を覚悟した瑞貴に、陽翔のパイが迫って来るのにそう時間はかからなかった。


ベシャア!!



「ふごぉっ!?」



瞬間、瑞貴の視界は暗転した。


***


ところ変わってコンビニのレジ前。おずおずと言葉を紡いだ栞奈に、梢の姉は微笑んで言った。



「ルパンなら多分、先程店を出て行かれたと思いますよ」



勿論、この言葉は嘘である。こんな田舎のコンビニにルパンなんて来るはずがない。


ありがとうお姉さんんん……!!


栞奈は梢の姉の優しさに泣きそうになりながらも袋を貰い、出口へと向かう。


……あとは梢、あんただけだコンチクショー!!


栞奈はダッシュで、そして大声で言った。



「『くそう!ルパンはどこだ!ルパーンッ!!』」



鬱憤晴らさせて貰う……!!


バッとコンビニを出た栞奈は、目の前の光景に言葉が出なかった。

そして、視界が暗転した瑞貴も目を覚ますと、目の前の光景に目が点となった。

……数秒後、幼馴染である栞奈と瑞貴は違う場所で、だが同じタイミングでこう言ったのだ。



「「……ここ何処ぉぉぉ!?」」

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