2012年10月1日(授業四日目街頭)
※この作品は作者の日記ではありません。
10月1日(授業四日目街頭)
少しく苦しい、と腹が言った。いや言わなかったが心の中で言わせた。つまり自分の腹を擬人化したわけである。世の中にこんなにも誰も得をしない擬人化が存在するだろうか。全くない、とは言い切れないのが世の中というものの不思議で面白いところだ、と私は思う。
苦しい腹を抱えながら私は歩いた。とはいえ無目的に歩いていたらアンケートを目的としていながらその実本当の目的はアンケートではなく化粧品等を買わせるのが目的の中年女性、つまりキャッチセールスに捕まってしまうかもしれないのでどこかに入る必要があった。池袋最大の繁華街であるサンシャイン通りでは常に、常にといってもいいほどの頻度でアンケートだとか言ってくるキャッチセールスにはご注意を、みたいなアナウンスが最近は流れているため、一時期に比べてアンケート目的の中年女性は大幅に減少した。あとに残ったのはマツモトキヨシのあまりにも大きすぎる、拡声器を用いた呼び込みの声である。私はブックオフへ至るエスカレーター下の植木スペースでの喫煙が禁止されたように、この巨大な声の呼び込みも禁止されるべきだと思う。しかしそういった動きは今のところ見られない。この呼び込みの声があまりにも大きいのでキャッチセールスへの注意喚起の放送が聞こえないことすら多々あるのである。これは治安改善の邪魔である。この声を聞くたびに私は苦々しい気分になる。
苦々しい目で店員に呪いを送りつつ、私はシネコンの脇のブックオフへと至るエスカレーターに乗り込んだ。サンシャイン通りに唯一存在する書店が、このブックオフなのである。なにかがおかしい、と思いつつ、私はここをよく利用している。




