2012年9月16日(授業四日目通行)
※この作品は作者の日記ではありません。
9月16日(授業四日目通行)
日本で一番ラブリーなこの街では日本で一番異様な人々が山のように集まっている。個性的な人物が少し道を歩いただけで山ほど歩いているので、想像のネタにはこと欠く事がない……と思ったが、少し個性的な人物が多すぎる気がする。多すぎてとてもいちいち想像している余裕がない。
一人の人物を想像しようと思ったら次の想像できそうな人物が現れるのである。例えば古本屋からアダルトDVDショップだった中古トレカ屋へ向かう途中の道を通っただけでも珍妙な格好をしてビラを配っている女性が何人も道端に立っている。夏場なので浴衣を着ていたり、妙にフリルが多い割に原宿へ置いておくには地味な顔をしていたりする。さらに脇からファミコンの音が聞こえてくる。
その道にはレトロゲームを専門に扱った店があって、そこからひっきりなしにファミコンゲームの効果音が流れてくるのだ。というふうに、ちょっと道を通ろうとしただけで頭の中が大わらわである。人間の想像力で生み出したに違いないこのラブリーな街は、人間の想像そ阻害するほど視覚的そして聴覚的にラブリーすぎる街に成長したようなのである。私は古本屋へ戻ることにした。




