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2012年9月3日(授業三日目列挙)

※この作品は作者の日記ではありません。

9月3日(授業三日目例挙)

 気を取り直して現代の男の子の内心を想像してみよう。私の個人的な記憶などどうでもいい、想像というものは記憶をほじくり返すこととは別物なのである。私のような精神的レイプ(一般的にいじめと呼ばれる)を受けたような特殊な子供ではなく、もっと普通の、一般的に友達がいて一般的に幸福でその幸福に気づかない程度の生活を送っている男の子の気持ちである。


 しかし、一般的の、普通な男の子、などというものは存在しないのではないだろうか。私は常々、普通の人、というものの存在を疑っている。普通、などという枠組みにぴったりはまる人がいるとしたら、それは平均的すぎて不気味な奇異な人である。すべてが平均的なのが一番おかしいのである。人間は誰しも、どこかいびつなところがあってこそ、リアルなのである。平均こそがファンタジーだ。ライトノベルの主人公のような男の子が一般的であってたまるか。だいたい普通のくせにやたらモテているではないか。あれは一般的な人間ではない、特殊な魅力を持った人間である。


 それを踏まえて男の子の気持ちを想像してみることにする。それもトレーディングカードの収集を趣味とするような男の子の気持ちを、である。おそらく、トレカを収集する男の子は、なんとなくではあるが、体育会系の男の子に対して引け目を感じているのではないだろうか。体育会系とは勝ち負けの世界である。たとえそれが短距離走だろうが棒高跳びであろうが野球だろうがクリケットだろうが、スポーツと勝ち負けはきっと話すことができない。そしてトレカはスポーツより後発の勝負ツールである。先発のスポーツの波に乗れなかった非体育会系の男の子達が、トレカに手を出してそれで勝利の快楽を得ようとしているのである。ということは、である。トレカでも勝つことができない男の子は、一体どういう目に遭うのだろうか? スポーツもダメならトレカもダメ、というコンプレックスが肥大した男の子は、一体どうなってしまうのだろうか? 私の脳内に住み着く謎の生物である榎本なごみはあっさり結論を口にした。「死にたくなるんじゃないかな」

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