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2012年8月15日(授業初日)

※この作品は作者の日記ではありません。

8月15日(授業初日)

 所沢のプロペ通りを時折通りかかる、あまりにもホームレス然としたホームレスが存在する。このホームレス、肌は日に焼けているのか汚れが染み付いているのか黒く染まっており、服はぼろぼろであり、足には何も履かれておらず、何かが入っているビニール袋を持っている。私は想像力強化のためにこの人物の過去を想像しなければならない。


 きっと50歳くらいまでは順風満帆だったのだ、この人物の人生は。ただ、その時点で人生が急転した。きっとあまりにも急転したので、その驚きのあまりまともに生活することが不可能になってしまった。プライドが邪魔をして生活保護を受けることもできなかったのだ。そう、その男性はきっと会社で結構な地位にいたに違いない。しかし今ではそのプライドもすり減り、家族にも見捨てられ、悲しいという感情も喪失したまま、半裸で街をさまよっている。


「それで?」榎本なごみは授業初日だというのにそれ以上の想像を求めてきた。私には想像力が不足しているというのに。投稿した小説の賞の選評で「想像力が不足している」と書かれてそれが誰でも見られる場所に置かれているというのに。「ネットで選評された、ってことだね。想像力の上に表現力も不足しているね」榎本なごみのダメ出しは厳しい。

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