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2012年8月26日(授業二日目奇行)

※この作品は作者の日記ではありません。

8月26日(授業二日目奇行)

 その人物は池袋駅の東口前まで歩いた。そこは往来の激しい通りで、背広を来たその人物は人通りを一通り韓申するように睥睨した。もちろん私の姿も目に入っただろうが、その人物はその程度のことを気にする様子を見せなかった。そして背負った大荷物を一つ一つ背から取り外し、自分の周囲に置き始めた。


 それら一つ一つは、メガホンであり立て看板であり大量のチラシだった。立て看板には「国家の横暴を許すな!」と書いてあった。チラシにも同様のことが書いてあった。背広の人物はメガホンとチラシと立て看板を自分の周囲の、おそらく落ち着くのであろう位置関係に置き終えると、おもむろにメガホンを用いて演説を始めた。


「えー、わたくしは」私は国家というものを信用しておりません。国家は国民を洗脳し、窮屈なる今の生活に慣れさせようとしており、私腹を肥やしているのです。そんな横暴なる国家には楯突くほかありません。皆さん、国家に今こそ反旗を翻そうではありませんか。そんなことを一通り叫ぶも、誰も立ち止まりはしなかった。それでも演説を続けるその人物は、名乗りすらしなかった。チラシにも誰がどういう主張をしたいのか、書かれていなかった。ただ、「国家の横暴を許すな!」としか書かれていなかった。一体何が言いたいのかわからなかった。その人物はひとしきり叫び終えると、誰も立ち止まらなかったことなど気にも止めずに、荷物を再び背負ってどこかへ行ってしまった。私はそれを追わなかった。あれはサラリーマンではない。それから帰るべく電車に乗った。サラリーマンが大挙して乗り込んでいた。

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