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ラブデリバリー

作者: こう

 今年もクソ忌々しいクリスマスがやってきた。俺は確かに生まれた時からサンタクロースだったが、カップル共の世話をするなんて聞いてない。一体全体どういうことだ。

 それでも仕事をしなきゃ食っていけない。俺の今年の仕事はカップル率が高いと評判のファッキン的要素に満ちあふれている高校へのプレゼント配布。なめてるとしか思えない。

 俺と同じくらいにやる気のないトナカイと共に、ようやく高校へ到着。すでに校舎からは不穏な空気が漂っている。爆発しろ。

 さて、まずは一年の教室からだ。何々? リストを見ると、そこには夢の欠片もないプレゼント希望ばかり。何が恋人だ。むしろ俺が欲しいくらいだ。

 だんだんいらいらしてきた。もう今日は俺のやりたいようにやってやる。

 俺はトナカイを校門に置いてきて、一年生の教室へ向かう。近づくにつれて、最近彼氏がかまってくれないだの、彼女が甘えてきてうっとうしいだのストロベリーな会話が聞こえてきて、衝動的にプレゼントの詰まった袋で殴り倒したくなる。しかし大人である俺は、自分の感情をコントロールする必要があるのだ。俺の心は大宇宙よりも広い。

「・・・・・・でもさ、二十歳超えてて彼女もいない男とかマジで引くよね―☆」

 殺す。俺は怒りにまかせたまま教室のドアを開けた。

「オラア! サンタですよぉ! 元気ですかあー!」

 静まりかえる一同。ガキ共は生意気である。しかし俺の心は折れない。

 俺はサンタ必携のアイテムであるサンタガンを取り出す。

「こいつを食らってハッピーになってもらおうか!」

 サンタガンを食らうとその日一日はブルーな気分になり顔面偏差値が極端に下がってしまうという代物だ。だが大丈夫。サンタガンにはハッピーでメルヘンな成分が含まれているからPTA的に問題はない。

「まずはお前からだぁ!!」

 すぐ近くにいたカップルに射撃。男はたちまちイケメンからイケメン(イケてないメンズ)へと早変わり、女子もまた同じように変わった。クラスでわき起こる阿鼻叫喚。

 だがしかし俺は逃がさない。手当たり次第に乱射し、カップルという名の格差社会を破壊していく。まさにラブデストロイヤー! 俺は今サンタという身分を超えて神となる。

 この調子で俺は二年教室も制圧し、ラストは三年教室を残すのみとなった。

 そして三年教室に入った時、女子学生が俺に殴りかかってきた。

「どうしてこんなことするのよ! 私はたださだゆきくんとクリスマスを過ごしたかっただけなのに!」

 なるほど、確かに今の俺は学校中を妬みの感情に従ったまま動く、哀れなラブ・ウォリアーだろう。だがしかし、いくら仕事といえども、俺にも信念がある。俺は女子学生に慈愛に満ちた表情で、

「お前たちの愛はそんなものなのか? たかだか顔面偏差値が極端に下がったくらいで壊れてしまうような愛なのか? 違うな。そんなものは愛じゃない。愛は外見で決まる物ではないんだ。そう、俺は外見だけに左右されない、真実の愛を運ぶサンタクロースなんだよ・・・・・・」

 決まった。俺はそう思った。

 だが、ここで予想外のことが起きた。驚天動地。ラブ戦士たる俺とはいえ、さすがにこの事態には驚く。

 女学生が、抱きついてきたのだ。

「私が間違ってた! 顔面偏差値で崩れる愛なんかより、真実の愛の方がいい! さだゆきくんよりも、サンタさんの方が素敵!」

 俺の心は、その言葉で洗われた。

 だが、ここで許す俺ではない。

「てめぇみたいな女を、俺が信用すると思うかっ!?」

 俺はちゅうちょなくサンタガンを撃ち込んだ。泣き叫ぶ女学生。俺がジャスティス。

「アディオス、学生たちよ」

 阿鼻叫喚に満ちた学校に背を向け、俺はトナカイにキスをして歩き出した。

「素敵です! 今日も見事でしたね、サンタさん!」

 俺のトナカイは喋る。いや、心と心で通じ合っているから、種族の壁も突破するのだ。

「愛してるぜ、俺のペガサス」

「私はトナカイですよ」

 真実の愛とは人それぞれだ。しかし、それでも外見で決まるような愛は真実の愛ではないんだ。俺とトナカイがその証明なんだ。

 俺たちは空を翔ける。

 降り注ぐ雪が、俺たちのこれからを祝福しているようだった。

 世界よ、愛で包まれよ!


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