開花時期未定 2
響子、俺だよ。
ほら目の前にいるじゃん。
目の前って、何処に?
えっ!?ウソ‥‥
もしかして、所さん?
そうだよ。俺しかいないじゃん。
ええ〜〜っ!
所さんって、喋れるの。
いや、喋れない。
じゃあ、どうして?
お前の頭の中に、直接話しかけてんだよ。
テ、テレパシーってやつ?
いや、それも違う。
じゃあ、なに?
う〜ん‥‥
今までも話しかけてたんだけどさ、聞こえなかっただろ。
ほら、さっき言ってたガンが変なとこに転移したんじゃねえか。
はあ‥じゃあ、ガンのおかげ?
多分な。
へえ〜〜そうなんだぁ。
じゃあさ、今日から所さんとお話できるわけだ。
おう!まあな。
短い間だと思うけど、よろしくね。
こっちこそ、よろしく。
そっかぁ〜。
あたし犬としゃべれるんだ。
なんか、ムツゴロウさんみたい。フフッ♪♪
響子お前さぁ、さっき思い残すことなんかないって言ってたけどさ。
うん。
なんか、あるだろ。
やってみたかった事とかさ。
食べてみたかった物とかさ。
う〜ん……
あ!食べてみたかった物ならある。
おう!言ってみな。
チワワ!!
はあぁ〜〜!?
馬鹿やろう、お前!
なんで俺なんだよ。
別に所さんじゃなくってさ、ほらチワワってメキシコの食用犬って言うし
そんな事、知らねえよ。
第一、食っても美味くねえと思うぞ。
ホントにぃ?
きっと、そうだよ。
チワワの俺が言ってんだから間違いない。
やめといた方がいいぞ
な〜んてね♪
ウソだよ〜。
ウソって、お前。
なんでだよ?
だぁ〜ってぇ。
所さんさぁ、なにげに偉そうなんだもん。
あたしは、これでも飼い主だよぉ。
しょうがないだろ、俺の方が年上なんだから。
ええ〜〜っ!?
なんで、所さんが年上になる訳なの?
俺は今、生まれてから四年半だろ。
うん。
まあ、人間で言えば30過ぎ。
男盛りってとこだな。
へえぇ。そうなんだ。
な、だからこれでいいんだよ。
う〜〜ん……
ま、いっかぁ。
響子、お前の心残り俺が当ててやろうか?
なに?なんにもないよ。
へへっ、自分で気がついてないだけさ。
なによ〜〜、それ。
お前、18の時から俺と暮らしてるだろぉ。
毎晩寝る前に、その日にあったこと、俺に話してから寝るよなぁ。
えっ!そうか!!
もしかして、全部覚えてるの。
ああ。だいたいな。
ウッソ〜。あちゃぁ、しまったぁ。
お前、気になってるんだろ。
あの男のこと。
誰のことかなぁ?
とぼけても、ムダだぜ。
ほら、あのちょいと可愛い真っ白なチワワ連れた兄ちゃんさ。
ふ〜〜ん。そんな人知らないもんね♪
は!まだとぼける気か。
往生際の悪い奴だなぁ。
べ、別に気になってなんか……
じゃあ、嫌いなのか?
いや、嫌いってわけじゃあ‥‥
ほらみろ、好きなんだろ。
どうして、そうなるのよ。
嫌いでもないけど、好きって言うのとはまた‥‥
これだから、人間ってやつは面倒くせえんだ。
俺達犬なんか、好きか嫌いかだけだぜ。
好きならやっちゃうし、嫌いなら吠えて追い払う
簡単な事さ。
や、やっちゃうって、そんな。
馬鹿だなお前。
俺達がやるのは、子孫繁栄のためなんだぜ。
人間みたいに、ただ気持ちいいからやるってのとは違うんだ。
どしたんだ、お前。
真っ赤だぞ。
えっ!だって、そんなストレートな事……
そうか、お前、まだやった事ないんだったな。
そういう所さんは、あるの。
ああ、あるよ!
へぇ〜。
いつ、どこで、誰と?
うるせぇ、お前!
毎日、家の中にいて散歩は響子と一緒で、いつできるんだよ。
やっぱりねぇ〜〜♪
ほら、所さんもあたしと一緒だね。
くくっ…………………
あ、ごめん!
傷つけちゃった?