三分咲き
響子の独り言
あたし……
いつまで、生きられるんだろ‥‥‥‥
もしかしたら、その日が明日かも知れないんだよね。
なんにも未練なんてないはずだったんだけど‥
なんか、今は少し違ってきてる。
よくわからないけど……もう少しだけ‥あと少しだけ生きていたい。
お父さんとお母さんが事故で死んじゃった時、
悲しかった………
どうして、あたしも連れていってくれなかったのって、毎日思ってた。
だから、もうすぐ死んじゃうって聞かされた時
これで、お父さんとお母さんに会えるかもって‥
そう思ったんだ。
あたしが死んじゃったあと、所さんは悲しんでくれるよね。
一哉さんは?音無くんは?
悲しんでくれるのかな。
きっとすぐに忘れちゃうのかな……
忘れられるのが嫌なんじゃないよ。
忘れないと、生きていけないもん。
そんなの、わかってる。
でも、でもさ‥‥
桜の花が散る頃には、時々思い出して欲しいな。
あたしのこと…………
死ぬってさ、死んじゃうってさ………
誰かの思い出になるって事なのかな。
あたしが、お父さんとお母さんを忘れてしまわないみたいに……
できれば、良い思い出になりたいなぁ。
こんな、つまんないあたしだけどさ。
思い出してくれた時に、笑顔になってくれるような良い思い出にさ……
あたしが、桜の花びらが散るとこ見るの好きなのは
きっと、お父さんとお母さんの最後の思い出がそうだから。
三人で、手を繋いで桜の花が舞散る中を歩いた思い出が
きっと、最後の思い出だから。
お父さんもお母さんも、そしてあたしも………
笑ってた。
なんでだか覚えてないけど笑ってたんだ……
あたし…………
いつまで生きられるのかな。
いつまで生きてていいのかな。
神様………
クリスチャンでもなんでもないけどさ………
もし、神様がいるのなら
あと少しだけ‥‥
桜の花が咲くまででいいですから…………
あたしに命を下さい。
あたしを、生きさせて下さい。
お願いします…………




