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ラスボスに転生したら取引を持ち掛けられました!    ~転生後に推しが出来てもいいじゃないか!~  作者: 夕月


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第八話

追体験旅行から戻ると、レノールは早速世界地図を広げた。

この大陸にはいくつかの国が存在し、ポロス国は中間付近に存在している。

ポロス国を挟んだ国はいくつかあるが、その中で南側に位置するのがメンシス国だ。

「メンシス国は主神に月の女神・セレニティーアを祀る都市国家だ。特徴として高い軍事力が上げられがちだが、その他にも独特の文化を形成している事で知られている。」

「独特の文化?」

「ポロス国は一年を六周期で数えるが、メンシス国は四周期で計算しているんだ。しかも、各周期を更に三つに分けるから事実上メンシス国の一年は十二周期で計算されている。」

(それは日本の暦と同じね。)

「そのほかに、海に面している事から漁業も盛んでね。こちらでは食べられない鮮度を生かした魚料理や海水を使った事業も行っているんだ。」

「!!!鮮度を生かした魚料理って、あの、もしかして…生魚が食べられたり…?」

「凄いね!当たりだよ。」

(うおっしゃあぁぁああぁぁ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――!!!!!)

驚くレノールを横目に、私は内心で拳を天高く掲げガッツポーズをした。

何を隠そう、前世の私の好物は生魚なのだ!!

人によっては焼いた方がいいとか、煮た方がいいとか、蒸した方がいいとか言う人もいるだろう。

その意見を否定する気も捻じ曲げる気もない、それを美味しいと感じているのならそれはそれでいい。

だがしかし!!私は断然生がいいのだ!!!

この世界に転生して、すぐに悟った。

私はもう二度と、生魚を食べることができないと。

だって、生魚を食べる食文化は日本特有の物であり、生魚を安全に食べることが出来るのは企業努力様様なのだ。

しかも!ポロス国には海がない!!

田舎の方に行けば川ぐらいはあるかもしれないが、公爵令嬢が堂々と行けるはずもないし何より生魚を食べたいだなんて言った日にはお母様に泣かれそうな気がする。

だが!!メンシス国では堂々と食べることができるのだ!!

「先生!!メンシス国の食文化について詳しく知りたいです!!」

「お、おお。いつになくグイグイくるな、メリンダ嬢。」

ちょっと引き気味のレノールだが、向上意欲ありと受け取られたのかメンシス国の食文化について丁寧に教えてくれた。

その結果判明したのは、メンシス国の食文化は日本の食文化に酷似していると言う事。

醤油や味噌、納豆と言った発酵食品もあると聞いた時の天にも昇る気持ちは、前世の頃にだって感じたことはない。

「先生、私決めました。」

「何をだい?」

「絶対にメンシス国に行きます!!!」

瞳に食の文字を浮かび上がらせながら、私は盛大に宣言した。



「あっははははははははは!!!!」

「そんなに笑わなくてもいいじゃありませんか!」

「だ、だって…くくっ…確かに…ははっ…俺もその気持ちはわかるけど…くくくっ…!!」

「分かるなら笑わないでください!!」

ちょっと熱い頬をむぅと膨らませながら目の前のアンシュルを睨みつける。

三歳児の睨みなど痛くも痒くもないのは分かるが、それでも睨まずにはいられない。

「んぐっ…ちょっ、ちょっと待って…くくくっ…ひー…ふぅ……」

「…落ち着かれました?」

「ん、なんとかね。」

必死に深呼吸をして気を落ち着かせたようだが、また何かの拍子に思い出し笑いをしそうな雰囲気にジト目を送る。

それはアンシュルも自覚しているらしく、気分を切り替える様に話題を変えた。

「さて、昨夜で話題に上がった恰幅のいい貴族だが、伯爵家であることまでは絞り込めた。」

「!もうそこまで?」

「ああ。基本的に貴族の体形は体形が薄く、贅肉が少ない傾向にある。だが中には身体を鍛えた筋肉質な奴や、転がした方が早い体形の奴も居る。」

「後者はともかく、前者は騎士団に所属する者ということですね。」

「ああ。恰幅がどちらの事を指しているのか分からないが、ポロス国の全貴族でどちらかの特徴に該当する貴族は伯爵家のみだ。」

「この短時間でよくそこまで調べ上げましたね…」

「俺には優秀な従者が居るかね。」

素直に感心すれば、アンシュルは得意げに胸を張る。

だが、次の言葉に私は腰を抜かした。

「闇ギルドから引き抜いた逸材でね。仕事が出来るって言葉で言い表せない程に有能なんだ。」

「へぇ~闇ギルドから……ん?」

「ん?」

「今、闇ギルドって、おっしゃりました?」

「ああ、おっしゃったよ。」

「……はぁあぁあああ?!」

闇ギルト、その名から連想される通り報酬次第で殺しは勿論、誘拐や窃盗、強姦などなんでもやる集団だ。

ポロス国はその存在を認めておらず、例え知らなかったとしても関わった者全てに刑罰を科すほどだ。

そう、全て。

つまり、目の前の人物も例外ではないということ。

因みに、小説のメリンダもその事は承知の上で依頼していた、なりふり構わず過ぎだ。

「正気ですか?!闇ギルドに関わればいくら殿下と言えど拘束は免れませんよ?!」

「大丈夫さ。俺は闇ギルドから引き抜いただけで、闇ギルドに依頼なんかしていないし関わっても居ない。優秀な人材が居たから勧誘しましたと、陛下にも説明してある。」

「陛下に…それって十中八九背後関係調べられてるってことじゃないですか。」

「だろうな。その上で陛下が許可を出したんだ、何も問題はない。」

ここがクレッセント・ドロップの世界だと知った年にお忍びで城下に降りた際に偶然知り合ったそうで、即座に勧誘したらしい。

最初は断られたそうだが、最終的には主人と認めてくれたので今は頼もしい右腕として活躍して貰っていると嬉しそうに笑っている。

裏切りや寝首を搔かれる心配はないのかと最初こそ案じたが、魔法で主従契約を結んでいると告げられ頭を抱える。

魔法の主従契約は一種の奴隷契約の様なもので、従者は決して主に逆らう事が出来ない。

この場合、用意周到に主従契約をしたアンシュルに感心すべきか、会ったばかりの相手と主従契約を結んでしまう凄腕さんに呆れるべきか、僅かに痛む頭を軽く振りながら本題へと戻る。

「ま、まぁ色々ツッコミたい部分はありますがそんな人が調べてくれたのなら、確かでしょうね。」

「しかも、ついでに面白い事も掴んできた。」

「面白い事?」

「特徴に該当する伯爵の中に、あくどい事をしている奴が居た。」

「あら、それはそれは。」

ついに、引き当てたのか。

もし、その伯爵が件の人物ならそいつを生贄に目的を完遂できるかもしれない。

現状、私の目的よりも殿下の目的の方が難しい状況だ。

”闇夜”レベルの騒動が無ければ、定められた法を覆すことは難しいからだ。

だが、もしこの伯爵が隣国を巻き込むような悪事を働いていた場合、交渉がしやすくなる。

平民一人の階級を詐称するという交渉が。

本来、それは褒められた行為ではないし詐称した末のゴールが王妃なのだから下手をすれば逮捕ものだが、それが現実的に出来てしまうと考えられるほどに隣国・メンシス国は強大なのだ。

けれど、アンシュルは残念そうに首を振った。

「確かにあくどい事をしていたが、例の取引にも隣国にも関係のない事だった。」

「というと?」

「簡単に言えば人身売買、奴隷商だ。」

「!」

ポロス国は奴隷制度を禁止している。

禁を犯せば貴族であろうと即座に重い刑罰が科せられるほどなのに、愚かにも手を出すとは浅はかとしか言いようがない。

期待していた件でない事は残念だが、こちらもこちらで由々しき事態だ。

「伯爵は窓口の役割をしているらしく、奴隷を攫う実働部隊は外にあるらしい。」

「根が深そうな話ですね。」

「ああ。例の件じゃないのは残念だが、この国の王子として捨て置くことはできない。早速、明日にでもアイツに頼んで騎士団の書類に詳細を紛れ込ませるつもりだ。」

「紛れ込ませる?ご自分で指示されないのですか?」

「指示したいのは山々だが、どうやって情報を得たのか問われたら上手く交わせる自信がない。正直に話せば話したで生真面目な騎士団長は反発するかもしれんからな。」

確かに、アンシュルの言う事も一理ある。

だが、この件を騎士団の手柄にするのは惜しい。

それに、今この件を処理した所で適当な下っ端に罪を擦り付けてトンずらされる可能性の方が高い。

「いいえ、殿下。この件、殿下の指示のもとで解決なさるべきです。」

「え?だが…」

「確かに、殿下の考えも理解できます。ですが、詳細を記した書類だけではトカゲの尾切りをされる可能性の方が高い。」

「!」

私の言葉に、アンシュルも懸念点を見つけたようで眉を顰める。

凄腕さんが調べた情報を事細かに書類に記したとて、最悪の場合、嘘と判断される可能性だってあるし出所不明の情報の裏付けを取っている間に取り返しのつかない事になっていた、なんてことにもなりかねない。

そして、これは打算的な考えだがアンシュルの目的の足掛かりにちょうどいいと思った。

「俺が表で騎士団に指示を出し、アイツに裏からフォローをさせると言う事か。」

「ええ。そして、丁寧に一網打尽にするのです。それはもう、完璧に。」

「そこまで完成度を高める目的は?」

「殿下、貴方は王族ですがまだ五歳の子供です。貴方の為人や努力を知る者ならいざ知らず、貴方を良く知らない者から見れば地位があるだけの子供と侮る事でしょう。」

「つまり、俺の地盤固めが目的と言う事か。」

「その通り。」

地位があろうとも子供は子供、老害を始めとした悪意ある者達にとって弱者も同然だ。

仮に例の件を上手く処理してルナの階級を詐称できたとしても、粗を探すのが大好きな連中が真実を知ってしまった場合、ルナは窮地に立たされる。

そして同時に、己が欲の為に国を利用したとアンシュルも糾弾される可能性だったあるのだ。

だが、今回の件を発端に王子としていくつかの功績を積み重ね、貴族達の信頼を得ることができれば簡単に揺らぐことはない。

「分かった、君の案に乗ろう。」

「ありがとうございます。」

「アイツに頼んで更に調べてもらおう、そうすれば表からでも情報を入手しやすい場所が分かるかもしれない。」

「もしもの時は我がオートクチュール公爵家もご利用ください。いざという時に備えて私も令嬢として、力を蓄えておきますわ。」

「助かる。」

不敵に微笑むと、立ち上がり握手を交わした。



それから、私と殿下の共同戦線が始まった。

凄腕さんは本当に有能で、アンシュルだから入り込めるような場所を探り当て見事、情報を入手することに成功した。

その際、偶然にも騎士団の一人に遭遇した様で特に怪しまれることなく奴隷商の調査が始まった。

一方私は、淑女教育に力を入れていた。

礼儀作法は勿論、地形学や魔法学などのありとあらゆる分野を学び、お茶会にも積極的に参加した。

意図して目立つ行動はしてはいないが、公爵令嬢としての威厳を見せることで一定の敬意を払うべき存在だと認知させた。

まぁ、そのせいで絡まれることもあったがそれは逆に、私に喧嘩を売るとこうなるという見せしめに利用させてもらった。

ちょっと忘れそうになるが、私は第一章だけではあるもののラスボスなのだ、一応。

私利私欲のために理不尽を強いることはしないけれど、ある程度は権力を行使させてもらう。

そうすれば、少しは行動の自由が利く。

「あら、楽しそうですわね。私も混ぜて下さらない?」

「お、オートクチュール公爵令嬢…」

「どうしたの?そんなに顔を青くさせて、ふふっまるでお猿さんみたいね。」

「なっ!!」

「あら、今度は赤くなったわ。ミドル伯爵令嬢は面白い方なのね。」

「っ!!」

こうして、自分より格下の令嬢を寄ってたかって虐めていた令嬢に絶対零度の笑みを向けることだってできるのだ。

青ざめる伯爵令嬢は、理解しているのだろう。

格上の公爵令嬢が自分がどこの誰かというに気づいているという恐怖に。

「ヴェトヴィール公爵夫人が開いたガーデンパーティーでこのような行いをすればどうなるか、分からない貴女ではないでしょう?」

「は、はい…」

「分かったなら早く消えて下さる?不快ですわ。」

「っ!」

震えながら逃げていく令嬢達を見送ると、虐められていた方に向き直る。

こちらもこちらで震えているが、きっと恐怖しているのは別の理由だろう。

怖がらせない様に微笑みながら、涙に濡れた頬をそっと拭った。

「ほら、涙を拭いて。せっかくの可愛らしい顔が台無しですわ。」

「オートクチュール公爵令嬢…」

「胸をお張りなさい、貴女は何も恥ずべきことをしていないのだから。貴女のご実家であるレイティア子爵家はその誠実さでもって販路を得たのですから。」

「!ご、ご存じなのですか?!」

「ええ。新進気鋭の新たな商会として注目しておりますわ、いつか買い物をしてみたいものね。」

「ぜ、是非!!オートクチュール公爵令嬢の様な素晴らしい方なら是非ともお取引させていただきたいです!」

「まぁ、それは嬉しいわ。」

(よしよし、これで未来の大商会とのパイプもゲットね。)



「ストーン・ショット!!」

お茶会から戻ると、その足で今度は魔法の訓練に向かう。

今回、相手にするのは奴隷商。

気品あふれる優雅な令嬢、と言うだけでは心もとないし何より私自身が納得できない。

戦える令嬢ってカッコイイじゃないか!という単純な動機の元、魔法訓練を開始したのだがどうやら筋が良かったらしくメキメキと腕を上げている。

やっぱりラスボスなだけはあるらしい。

「ショット!ショット!ショット!ショット!ショット!ショット!ショット!!」

それだけじゃない、魔法訓練を始めて気づいたことがある。

それは、ストレス発散にちょうどいいというのだ。

「ショット!!」

凛々しく気品も地位もあり、一定の敬意を払われる存在でも愚かな者には関係ないのか不愉快な連中は後を絶たない。

しかも見せしめを作った後から変に知能がついたの、見せしめをすればこちらが後ろ指を指されかねない地味でねちっこいものしか行ってこないのだ。

一つ一つは取るに足らないものでも、塵も積もればなんとやらでイライラは募る。

本当なら本を読みふけって忘れたい所ではあるが、実力をつけるにはこちらの方が都合が良いと事あるごとに魔法を使いまくっているのだ。

「バレット…ショーーーーット!!」

その甲斐あって、複数の魔法弾を一度に操る中級魔法も難なく使えるようになった。

うん!理由はどうであれ結果が全てなのだ!うん!




「はぁ…はぁ……はぁ……ん?ナニコレ。」


読んでいただきありがとうございました!

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