第9節:生kill
シュバ!
ノースはそう時間が掛からぬ内にレラウス教会跡地に到達した。
市場がとても遠くに見えていて、空も明るい所になっている。
ノースは悲しそうに崩れて泣いている教会を見て、何かを深く考え込むとゆっくり教会跡地に足を踏み入れる。
教会跡地に入ってすぐの所でノースは聖堂に踏み入った。
天井はほとんど崩れ去ってツタが張っているし床には水も溜まっている。
残った天井に嵌め込まれたステンドグラスは割れており、空から差し込む光がそれを通って淡い光になっている。
信徒席の多くがひっくり返ったり、途中で燃えカスになっていたりするが1つだけ完璧な状態で残っている物がそこにある。
その椅子は説教台から一番近い位置で寂しそうにしている。
男がそれを慰めるように椅子で寝っ転がっている。
ノースは歩いてきた聖堂をもう一度よく見回す。
「ひどいもんだろ……」
男が椅子を撫でて言う。
「自分たちの宗教を一番にするために自分達以外の宗教を歴史から抹消する……結局奴らの言う「救い」は支配を言い換えただけのクソofクソだってことをこの廃墟が伝えてくれてる…」
ノースは椅子の前で綺麗に正座をすると疲れ切った息を吐いて言う。
「しかし、支配されれば考えて生きなくても良くなる…ただ紙に書かれた仕事をして紙に書かれたものを食して紙に書かれた通りの時間に寝て……何も考えることなく生きる……支配された者達は言い換えれば楽にもなるのだ………そう考えれば支配も救いなのではないか?」
「救いって言うのは生きてる奴にしかできねえ……何も考えねえ奴なんてのはただの飯を食って糞を吐く死体だぜ」
男は起き上がって言う。
「人間はやけに死にたがる……生=苦だと考えてるやつは特に………」
ノースは瞑想をするように目を閉じて深呼吸をしている。
男は欠けたステンドグラスを触って言う。
「幸せを知らねえ奴が幸せを知りたがって必死に生にしがみついて……知ってる奴は必死にできるだけ遠くへ投げたがる………それは幸せが最強じゃねえって事の確固たる根拠になってる……少なくともこの馬鹿でけぇ塔がそう言ってる」
ノースは目を開いて穏やかに立ち上がり……刀を丁寧に、時間をかけてゆっくり鞘から抜く。
「其方の声は何故か落ち着くな…聞いていると数年前に死んだ祖翁の優しさを思い出す…あの方が立ててくれた茶の味はいつまでも忘れることが出来ない……言っていることも彼が教えてくれた事と同じような事ばかりだ……」
ノースはそう言って……刀をゆらりと構えると修羅の如き形相をしてさらにそこにとても圧のある言い方を添えて言う。
「其方の……正体を言え」
男はニヤリと微笑み悪意と快楽に満ち溢れた声で言う。
「おいおいそりゃないだろ………自分のお爺ちゃんに向かってぇ……」
ノースが目を見開く
【WHITEOUT】
ノースの姿が消えたのを男が目視すると、何もないところに対して鱗の様な剣を振る。
キィン!
すると激しい鉄の音が鳴り響き何もないはずの宙から火花が散る。
シュン!
残像の様にノースが現れて、地面に膝をつく。
「祖翁よ!なぜ貴様が生きているのだ!なぜ若くなっているのだ!なぜ一族を裏切った!あの時…なぜ某に技を継承してはくれなかったのだ?!」
男は息も切らさずに平然と言う。
「知らね」
ノースは怒り狂いそうになりながらも必死に胸を押さえつけて我慢する。
「ひひ…なるほど……速いなぁWHITEOUTは………距離・時間・重力に縛られない自分だけのポケットディメンションを作ってそこで動き回ることによって高速移動をする………よくできた能力だ……しかもそっから攻撃だけこっちの空間に戻せばポケットディメンションから一方的に攻撃をすることが出来る初見じゃ攻略不可の最強技まで持ってる………さらには使い手がお前とまで来た!敵なしじゃねぇか!!」
男は拍手をしながらそう言う。
「いやぁ……会えて良かったぜノース……俺はお前に興味が湧きまくりだ!ご褒美に教えてやるよ俺の名前を……」
ノースのごくりと唾を飲み込む音がここまで聞こえる。
「ブラック……お前らみたいに性はねぇ……ブラックだけだ」
ブラックは小瓶を1つ自分の足元に置く……すると開いた壁の穴から外に出る。
そのブラックの背をノースが追おうとする…が砂嵐にその足を止める……砂嵐の中をどうにか進もうとするノースを背後にブラックが言う。
「言い忘れたが解剖に伝えといてくれ……借りたもんはキッチリ返したぜって……お互い……死ぬ気で生き残ろうぜ?このイカれた塔を」
ブラックはそれだけ言うと砂の嵐に姿を消した。
ノースは静かに解毒剤を手に取って……解剖全書の体をゆっくり背中から降ろした。
自分的お気に入り話をこれが更新しました。
2人の目的はレッドの記憶を取り戻す!です。




