第8節:彼ノ苦悩ハ止マラナイ
「おい!これで生き返るのだろう!早く起きろ!」
ボトボトと重たい何かが落ちるような音がレッドの瞼を開ける。
「うぅ……」
レッドが目を開けるとそこには手首から赤い滝を流がすノースがいた。
「?!」
レッドは急いで起き上がり、ノースの頬をぷにぷに触りながら彼の体の安否を案じる。
「えぇ!そんな!お前血!……血がえっと……なんかめっちゃ出てるぞ!」
ノースはレッドが勢いよく起き上がったのを見て、ほっと一息つくと自分の手首を折れそうになるくらい強く握る。
ノースの白い綺麗な手に青い管が浮き上がる。
しばらく手首を握った後、ノースは両手を黒い空に向けてグッと上げて体を伸ばす。
ノースの手首から流れ出ていた血液は綺麗に止まっていて、それを確認したレッドはとても驚く。
「すごい…………」
ノースは疲れた様子を隠しきれていないが、それでもレッドに詰め寄り声を大きくする。
「レッド!まったく……貴様と言う者は……まさか転送先を言い間違えるとは……」
レッドは震えながら言う。
「ご……ごめん」
ノースはハァと若干白い息を吐くと言う。
「まぁ……良いだろう…ともかくこれから4日以内に王都ヴィサンツに向かわなければ……そうしなければ試験すら受けられぬまま旅を諦めることになる………」
レッドは凍えた様に震えている。
しかしここは凍える程の寒さをしてはない。
ノースは妙に思って聞く。
「レッド……貴様先から何を震えているのだ?寒がりか?」
レッドの震えは激しさを増す一方で、ついには激しい歯ぎしりもし始めた。
目は飛び出そうなほど見開き、漏れ出る声は恐ろしさすら内包している。
ノースは異常に気が付いて、レッドの体を体術で強制的に寝かす。
「すまない……少し肉を削ぐぞ……我慢しろ」
迷いを一切感じさせぬ手際でノースは腰に付けた脇差を抜いて、レッドの腕の裏にやさしくあてがう。
スルゥ……
「うッ……」
まるでトマトの皮を切るようにノースはレッドの肉を3㎝程取り終えると、自分の血を止めた様にレッドの腕を強く握る。
レッドの止血を終えたノースは取った肉片を青い液体で満たされた小瓶に落とす。
ジュワァ……
蒼い液体が赤色の液体に変わりはじめる。
「これは……とてつもないな……」
ノースの膝の上で死にそうな呼吸しかしないレッドを急いでノースは自分の背中に縄で縛りつける。
足に力を込めたノースが勢いよく走り始めようとすると、レッドのポケットから一輪の赤い花がフワリフワリと舞い落ちてきた。
ノースはとてつもない「神力」をその花から感じ取って地面に落ちる前に拾い上げる。
「これは……憶花手紙か?これほどの神力を発するものを見るのは家にいたころ以来だな……いったい誰が記し……」
ズズ……
突如赤い花からノイズのような音が聞こえる。
「…あぁ゛…あーあー…」
ノースは顔を青くして言う。
「憶花手紙に音声を入れるだと?!…そんなの某でも苦悩する作業だぞ……これだけの神力操作技術…いったい誰が……」
花から男の声が聞こえてくる。
「これを聞いているのは恐らく解剖の連れだろうな……今そいつの体には血液に浸透する猛毒が仕込まれてる……どんだけ輸血させて生き返らせようとしても入れた血がまた猛毒になってまた解剖を殺すっていう仕組みだ…よくできてんだろう?毒は俺がさっき神力で適当に調合した新薬だから解毒方法なんてない、まぁどうせ解剖は死んでも死なないから時間さえかければ解毒方法を確立できるだろうが……今すぐそいつの力が必要なんだろ?解毒剤は俺が持ってる……市場のはずれにあるレラウス教会跡地に来い……2時間くらいは待ってやるぜ?……ノース・ホワイト………そんでこのメッセージは3秒後に自動で消滅する……へへ、これ一回やってみたかっ」
ノースはノールックで花を空に投げる。
ドカァァン!!
爆発の光のせいでノースの顔が見えなくなる。
今ノースがどんな気持ちなのか図る術が無くなってしまったようだ。
「今はとにかく時間が足りぬか……あまり乱用はしたくないのだが……やむを得ぬ…」
【WHITEOUT】
ノースが初めてレッドの前に現れた時の様に姿を消す。
そこには爆発で舞い上がった砂に空の光が反射している様子しか残っていなかった。




