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431の解剖全書  作者: 八十神 今切
第一章:死体と腐敗の天
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第7節:最悪ノ夜ガ始マル

話が長くなってすいません。

 旅の仲間にたこが加わったところで、一行は「天塔」の入り口?に降り立った。


 レッドは上を見上げて言う。

「ホント………ここの部分だけ見てこれが塔の一角なのが分かる奴いないよな……これ…」


 ノースが塔にもたれて苦しそうに嘔吐をしながら言う。

「オロロ……ま…まぁとりあえず…ハァ…ハァ…ウプ!」


 レッドは白銀に輝く砂漠の砂を掌一杯にすくうと溜息を吐いて言う。

「でもこれ入口みたいなのが無くない?周りに建物っぽいのは一つもないし……ほぼ遭難してるようなもんだけど……」


 たこが砂で城を建てながら言う。

「レッドはほ~んとにな~にも知らないタコね……この塔は入り口と言う入り口は無いんタコよ!」


 そう言うとたこは自分で建てた城を蹴っ飛ばしてから塔に近づく。


「入る方法を教えてあげるたこ」


 ぶにゅ


 たこが触手を塔に当てる。

「まずこうやって塔に触るタコ!そんで触りながらこう唱えるタコ!転送B2!」


 そう唱えたきりタコの姿がそこから消えた。


 たこがいた場所では雪の様に白い砂が舞っている。


 レッドが辺りを見渡して言う。

「あれ?たこどこ行ったの?」


 ノースが弱々しい呼吸で一息つきながら言う。

「中に入っただけだ……某はもう少し休んでから行くから先に入っててくれ、たこと同じ事をすれば入れる」


 シャ…シャ…シャ…


 レッドは大きな不安を内に宿しながらも、これから始まる大冒険に胸を躍らせていた。


「よし……」


 レッドは覚悟を決めてそう言うと塔に手を当てる。


 塔に触れるレッドの手の上で日に照らされた汗がキラリと輝く。


「えーと……何だっけ……転送……B……3?」


 レッドの言葉を聞いたノースが引いていた血の気をさらに引かせて叫ぶ。

「待つのだ!転送先が違うぞレッド!」


 しかしノースが叫び終えたころにはレッドはもう消えていた。


 ノースは頭を抱えながら苦虫を嚙み潰したような顔をすると言う。

「厄介なことになったな……ここはレッドを優先すべきか……すまぬたこよ!……」


 ノースは考えをまとめ終え、深呼吸をして心を落ち着かせると塔に触れて言う。

「転送B3」

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 白い雪原……いや砂漠を夜の様に暗い空が見下ろす。


 奥の方の空を見ると普通の青い空が広がっているのが見えている。


 二つの空はまるで紙を破ったみたいに空は黒と青で分かれている。


 こちら側の黒い空には白い光が点々と輝いていて、その下では人々が全身を覆う様な服を着て黒いフードを深く被り必死で光から顔を隠している。


 人々は古びたフードに空いた穴から視線を通して、遠くに見える街を弱々しい瞳を使いジーと眺める。


 人々の目に映るその街は青い空の元にありその街の中心にそびえる不思議な形のとても大きな建物が人々の想像を加速させる。


 レッドは黒い空の光を瞳に反射させながら白い砂漠の上にポツンとある市場を闊歩する。


 路上を彩る出店に迎えられながらレッドは人の波を切り裂いてたこを探す。


(ここがサヴォルって国の首都か……首都と言う割にはなんか小さいような気もするし奥に見える街の方が首都っぽいけど…………まぁ人はいっぱいいるし首都か!……………まぁそれは良いとしてたこは何処行ったんだろ……)


 レッドが強くなっていく人波に抗いながら歩いているとガラの悪い男の股間に手が当たってしまった。


「あぁ!……なんだぁガキ!!」


 周りの人波はいち早く騒ぎに反応して、巻き込まれまいと二人を避けるように裂ける。


 ガラの悪い男がぼろ雑巾の様なフードをゆっくりと下げるとその顔が明らかになる。


 その男の顔はライオンの様な顔であった。


 レッドは思わず声に出して言う。

「なんでお前の顔そんな毛むくじゃらなの!?」


 ガラの悪い男が黄色い鬣をなびかせて、眉をしかめると一歩レッドの方に踏み出して言う。

 

「あぁ?!お前ビステアも知らねえのか?もしかして俺の事馬鹿にしてんのか?!いい度胸してるぜ!!こっち来いやぁ!」


 ガラの悪い男はレッドの付けている黒いマントを掴んで狭い道に入って行った。


 真っ暗闇な路地で男がレッドを壁に叩きつけると慣れたように脅しを始めた。

「お前!死にたくなきゃ出すもんだせや!」


 レッドは落ち着いて言う。

「なんだかよく分からないけど……今俺なんも持ってないぞ……」


 ガラの悪い男は舌打ちをして言う。

「ならお前の皮でもはがして売ってやらぁ!なにせここは闇市!!売り手には困んねぇし鮮度も高い状態で売れて一石二鳥だぜ!」


 そう言うと男は腰に下げていたサーベルを鞘から抜きレッドに切りかかる。


 レッドは大して動きもしないまま流されるように口から吐く。

「うわ!」


 キィン!!

 

 レッドは落ち着いてサーベルを手錠で受け流し、するりと男の懐に潜り込むと左足で男の顎を神力で強化した右足で蹴り上げた。

 

「ゔッ!」


 バァン!!!ブシャァ!!


 天高く舞い上がった男が脳髄と血で出来た雨を闇市に降らせる。


 レッドはマントを叩きながら言う。

「まったく危ないなぁ……」


 レッドは血の付いた靴を地面の砂に擦ると路地を出るために歩き出した。

 

 シャ……シャ……


 少年が足音を鳴らして歩いていると奥から長身の男が歩いてくるのが見えてきた。


 ゾワァ………


 レッドがそれを感知した途端、とてつもない恐怖が全身を這う。


 心臓がの音がやけに大きく聞こえてやまなくなり、体の水分が全て無くなるかと思わせるくらいの汗が流れ始める。


 激しく震えるレッドの体が砂を震わせて、場の緊迫感をどんどん高めていく。


 その時レッドの脳には様々な考えや感情が巡っていた……しかしそう時間が経たない内に一つの考えがレッド脳のを独占した。

(殺される………目を合わせたら……)


 暗黒を引き連れた男の足音は巨人の足音の様に大きくなっていく。


 一歩一歩、男が近づくにつれて……虫を百匹丸呑みにした様な嫌な気分と吐き気がレッドの中で不安定に積み上げられていく。


 そしてついにその時が来た。


 レッドと男があと三歩踏み出せばすれ違う距離まで近づいた。


 そこまで近づいて男の足が止まった。


 それにレッドは本能で反応して足を止める。


 男が止まったその位置は丁度空の光が当たっている場所で、その光は異常な別世界を生きる男の姿を映しだしている。


 身に着けているものは革で出来た黒いロングコートに黒いシャツと黒いズボン、胸にはネクタイの代わりに淡い色で輝くブローチを身に着けており、さらにリボンタイが臓物の様にブローチから垂れている。


 恰好を見た所、肌が出ている部位は顔と手だけのようで、銀色の長髪と銀色の瞳の輝きが男の存在の証言者になっている。


 身長は高く190cmはあるだろうし足もスラリとしていてとてもスタイルが良いことを見て取れる。歳は大体20代前半だろうか……顔だけ見れば美形でさぞかし女にモテそうだが、気迫や眼圧といった男の存在を証明する全てが、全てのプラスをマイナスに変えている。

 

 男はレッドの事を見ると、その落ち着いた声帯で静寂と安息に終焉を告げた。

「懐かしい神力の操り方をする奴がいると思って来てみれば……久しぶりなもんだな……………お前を教団が探してたぜ………ん?もしかしてお前……」


 男は一歩踏み出す。


 男はレッドの顔を下からしゃがまずに覗きこんで言う。

「今気づいた……お前………生きちゃってるな?」


 男は5歩離れて頭を抱えると言う。

「はぁ…ならだめだ………都合が悪い事を言っちまったぜ……あぁいやそうだな……発想を変えた方が良いか………」


 男はしばらく考え込んだ後、何事もなかったように再び歩き出た。


 レッドは自分の心臓の音を確認して止めていた息を吸い始めると安堵して思う。

(い……生きてる……助かった………) 

 

 コツ……コツ……コツ……コツ……コツ……コツ……シュパ!

 

 それは当然の様に起こった。

 

 男は何処からともなく大きな魚の鱗が5つ重なり合っている様な形状の剣を抜いて、すれ違いざまに軽く挨拶を交わすみたいにレッドの両腕を斬り落とした。


 一連の出来事で驚くのは、「両腕が両断された」というとても強烈で異常で暴力的な結果をもたらした行動の中に、異常と感じる動きが一切なかったのだ。

 

 しかしそんな中、レッドは一人誰よりも早く気付き実感したのだ……


 今起きていることは己の命に絶対的な静寂をプレゼントする最低最悪な現象であることに。


 それに気づき実感したから、レッドは恐怖の涙を流して男から逃げる。


「あ………うわぁあぁぁぁ!!」

 

 男もレッドを逃がすまいと一撃で人が8人死にそうな強烈な斬撃を幾度も繰り出す。


 シュン!シャ!シャ!


 斬撃は石造りの建物をケーキの様に切り分けながら逃げるレッドの命を捉え続ける。

  

 がしかし狭い路地では体の小さいレッドに軍配が上がり、ついにレッドは市場の賑わいを感じ取れる程度の所まで逃れることが出来た。 


 路地から出れさえすれば、人ごみに紛れ逃げ切ることが出来る。


 目の前にまで迫ってきた希望が、レッドの生存本能と恐怖心を極限まで駆り立てる。

 

(逃げる!逃げろ!逃げ切れ!あいつに斬られたら絶対!ただ事じゃ済まない!あぁぁ!!)


 レッドはついに人の海まであと数歩と言う所まで迫ると、死が迫るウサギの様にその方向へ飛び込んだ。


 今まさに逃げようとする獲物に対して男が感じている感情……それは………


「そろそろ良いか……」


 穏やかな休日の昼下がりに優雅にコーヒーを嗜んでいる時の様な深き安堵であった。


 ジャキン!!シュルル!


「え……」


 シュパ!……シュルルルルル……パシュ!


 レッドの体が蛇の様な何かに斬られて右と左の両方向に倒れてゆく。


 真っ二つに割れながらレッドはただ一言、脳みそではなく脊髄を使って言う。

「なん……で……」


 ビシャ!


 地に落ちた2つのレッドが白い砂を赤く染めてゆく。


 真っ白な砂に赤は映えると言うものだ。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 その時、路地から出てきたのは漆黒を引き連れた不気味な男ただ一人。


「♪~」

 

 男は青い空を謳歌する街の方へと姿をくらませていく。


 今夜は傘を必要としそうだ。

この長い話を読んでくださりありがとうございます。

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