第18節:走レ満身創痍
大森林の上空を旋回し続ける偵察式装甲船。
血に染まった土。
錆びた鉄の匂い。
立ち入る者に人間の体内にいるような気分を与えてくれる森の中、レッドがあたりを見渡しながら走り抜けていく。
様々な思いを巡らせながらもレッドはただ一つの明確な「ホワイトを助ける」という目的を大事に抱えて森を駆け回る。
「そこの少年!」
レッドが森を巡回し始めてから2分が経った頃だった。
死体になりかけた男が必死そうにレッドの事を呼び止めた。
「少し……ゴフッ!…っはっぁ!待ってくれないか!」
男は腹と胸そして腕に付いた痛々しい傷を地面と木に擦り付けている。
そんな男の姿をなんだか哀れに思ったレッドは足を止めて、男の言葉に耳を傾けることを決めた。
「どうした?悪いけど助けることはできな…い?!……グッアァ!アァァ!!」
レッドは話を始めた途端、急に頭を抱えて苦しそうにもがき始めてしまった。
男が心配そうにのたうち回るレッドに声をかける。
「ゴホッ!だいじょう……っふぅ……大丈夫か少年…っはぁ…君も…満身創痍なのか?」
ジリジリ………
レッドは土に頭を擦り付けながら、目を人体の限界まで見開く。
「あぁああ!頭が割れそうだ!!はぁ!何がどうなってぇ!」
レッドの体が彼の身に起きた異変の重篤さを全身で表している。
息は止まったり、いきなり荒くなったりと不規則に荒れて、目からとても苦しそうに血涙を流し始めた。
「少年!手錠が壊れ始めたぞ!」
男の言う通りレッドの手に付いた手錠から、部品がぽろぽろと落ちてゆく。
レッドは手錠を見て血相を変えると、苦しみも忘れて崩壊を阻止しようとする。
「があぁぁぁ!とまれぇ!」
ドォン!!!
少年は苦しみながら手錠を地面に全力で打ち付ける。
その威力で地面が抉れて、木の幾つかがなぎ倒された。
少年の手から血がボトボトッと落ちているが、それよりも注視すべきことは手錠の崩壊が終わったという事だ。
手から落ちていく血液をそのままに、少年は空虚感に満たされた顔で真っ黒な空をぼぉーと見つめている。
「ゴホォ!驚いたぞ!少……年…?」
何もせずに空をただ見つめ続ける少年に対して、男はさすがに疑念を抱き簡単な声掛けをする。
「おい少年!ッフゥ……名前…そうだ!自分の名前を言ってみてくれたまえ少年!」
少年は口以外の部位を全く動かさずに言う。
「解剖全書…私はそう呼ばれることが多い…」
手錠は解剖全書の右腕から外れて、左腕にぶら下がっている。




