第15節:若気ノ至リトイフナカレ
老人は若者の質問に何も答えられず自分の膝を見て死んだ様にただ黙りこくっている。
黒服達は老人に対して(なぜ答えないんだ?)と考える。
若者は真顔で言う。
「お答えできませんか」
若者は納得したように微笑むと今度は末席の老人を見て言う。
「貴方にも質問をしたい……貴方はオルヴァ巨教を最も広めた者の一人ですが……その過程で塔の中の宗教を全て滅した………その結果手に入れた膨大な権力を貴方はまず女と酒に使った……女性の中には嫌がっていた者もいると言う……これらすべての事は事実ですか?」
老人の目は泳ぎ、ここから何を言えばいいか考えて話す。
「………き、君!ふざけるのも大概にしたまえ!」
真っ暗な空間では若者の声だけが響き続ける。
「否定もせず…肯定もしないか……」
若者は手をバッと広げて態度を豹変させると言う。
「ご協力の賜物でもうわかったよ……其方らに生きる価値が無いという事がな……」
バサァ!
若者は持っていた資料を上に投げる。
「喜ぶが良い!己の我欲のに溺れ…命令を教えと偽り教徒を都合の良い様に操り続け……悪行の限りを尽くし長年塔を穢し続けた不届きもの共に変わって我が真の平等をこの塔にもたらしてやろう!手始めとして……貴様らの首をいただこう…」
この時若者の言葉を聞いた黒服達は若者が敵という事にようやく気付く。
すると若者と一番近くにいた大柄な黒服が主と敵の距離を離す為、武器も持たず若者に殴りかかる。
「おのれぇ!不敬であるぞ!」
パシ!
若者は黒服を一瞥もせずに相手の腕を掴んで攻撃を止める。
「其方らもまた愚かだ……どれ其方らの失敗を3つ教えてやろうではないか……」
若者が黒服の手を離す。
すると大柄な黒服は背中に携えていた鉞を手に取り己の頭の上から大きく振り下げる。
パッ……
その攻撃を若者は鉞の側面を触って右に流す。
ガシャン!トッ!
鉞の攻撃で真っ二つになった長机を足場に若者は少年の黒服の背中に回り込むため跳躍しながら言う。
「一つに君たちは守る相手を……」
女の黒服が少年の黒服を庇うように空中を飛ぶ若者にサーベルを振る。
しかし若者はサーベルが己の体に届くよりも速く地面に着地して体制を低くする。
ヒュン!
サーベルは見事に若者の頭上をすかした。
「…間違えた」
若者はサーベルを避けた体制のまま目の前にある少年黒服の背中へ突撃しながら言う。
「二つに相手と自分の力量の差を図れなかった……」
パラパラ……パシ!
若者は素早く走りながら先ほど自分が投げた資料を掴んで言う。
「最後に君たちは私に武器となる物を持たせてしまった……」
ザシュ!
若者は少年黒服の元にたどり着くと素早く少年黒服の首を手に持った資料で切る。
少年黒服の首が飛んだのを見て女黒服が激高し、若者に背後から攻撃を仕掛ける。
「よくもぉ!」
グン!ヒュン!
しかし若者は女黒服の攻撃よりも速く方向転換をして彼女の横を高速で通り過ぎる。
ブシャ!
女の黒服はサーベルを頭上に掲げた体制のまま口から血を流して倒れる。
「なん…で」
バタン!バタン!
若者は倒れ行く黒服達を背中に、鉞を持った黒服の前まで来ると動揺して何もできない黒服の体を真っ二つに切り裂いた。
ドシャ!カラン!!
黒服の大きな体がみずみずしい音を立てて地面に倒れる、そのすぐ後に大きな鉞も地面に落ちる。
若者は息をフゥと吐きながら最後の黒服の方を見る。
「ひぃっ!助けて……助けてくださ!!」
ブシャ!
黒服の首が血を勢いよく噴いて泥のように地面に倒れる。
「さて……」
バンバン!!
「おいぃ!早く開けろぁ!」
老人たちは恐怖におののいて、息を吹き込めばポキっと折れてしまいそうな細い腕を鉄の扉に打ち付ける。
若者は冷え切った瞳を黄金色に輝かせながら、薄く重なった四人の老人に近づく。
「見苦しい……最後の最後で生き恥をさらすな………」
まだ口の利ける老人の一人が地べたを弱々しく這いながら叫ぶ。
「や!やめ!!」
ブシャァ!
ここから先に会話はなく、ただ血と断末魔が響くだけだった。
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小さな教会から出てくる一人の若者を9人の何者かが出迎える。
辺りには警備にあたっていた者共の者であろう死体が無数に転がっている。
まず最初に地面に横たわってアイマスクを付けた紫髪の少女がけだるげに言う。
「お疲れぇ……いやぁ…やっと始まるなぁ…」
スキンヘッドの長身が腕を組んで言う。
「次は何処へ行くのだ……」
糸目の中国服を着た青年が楽しそうに言う。
「あれだよ!探究王試験みたいな名前の!やばい奴がいるって聞いた!」
ゴーグルを付けた男が胡坐をかいて言う。
「良いから早く行こうぜ?暑い……」
若者は9人に対して何も言わずに、ただ歩き出す。
9人は若者が歩きだしたのを見てまた何も言わずに後を追う。
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同刻、レッドは……
「レッドォぉ!久しぶりに会えたタコぉぉ!」
レッドはグループ分けを終えて、偶然同じグループに分けられていたたこに高い木が連なる森の中で抱きしめられている。
「あれからいろいろあったタコォ!どこ行ってたんタコよぉ!?」
レッドは苦しそうに顔を逸らして言う。
「色々…こっちも…あった…」
たこは深呼吸?をして吸盤をレッドから剥がすと言う。
「それにしても遅いタコねぇ……試験開始はいつタコ?」
プー!
たこが頭上で浮かぶ蝶型の追跡機「機構蝶」から突然鳴り響いた音にビクッと驚く。
「試験開始!全32組の中で次の試験に進めるのは先着10名…御健闘をお祈りします」
レッドは機構蝶から告げられた早すぎる試験開始に戸惑いながら言う。
「あれ?3人グループにまだなってないぞ?」
たこは機構蝶から構築されたポイント振り分け表をパラパラめくりながら答える。
「なんかもう一人はレッドが来る前にどっか歩いて行っちゃったタコ……でも強そうなやつだったタコよ!って……えぇーーー!」
資料を見ていたたこが急に大きな声を出して驚く。
「どうしたんだ?」
「早く!これ見るタコ!」
たこが見せてきた資料を見てレッドも戦慄する。
「は?こ、これって……どうなってんだ?!」
ポイント表の一番上にはシーカー10pと書かれていて、その下にはシーカー以外0.1pと記載されていた。
ガサ!
レッドが驚きを隠せずにいると後ろの茂みが動く。
後ろから鳴った怪しい茂みの音にレッドは不安を暴走させながら後ろを見る。
見るとそこにはすでに三人の屈強な男が武器を構えて立っていた。
「ポイントになってもうぜぇ?お子様方!」




