第12節:閉ジ込メテ
寒気を誘うヒヤリとした風が吹く山頂の草原。
レッドの頭の中を忍の声がウジ虫の様に食い荒らす。
レッドは魂の抜けたような体をピクリとも動かさず、ただボーっと雲の無い空を見上げる。
そんな様子のレッドをノースの声が揺らす。
「おい……どうした?何かあったのか?」
レッドはぼやぼやとした相槌を適当に乱射する。
「え、あぁうん……あいや……何もない」
レッドがここまで消耗しているのは忍から伝えられた真実への衝撃による精神的な疲労と、この山頂までの道のりで30匹程の危険生物を殺してきたからだ……それも酸素濃度9%という過酷な環境で休みなく。
山頂の試験会場までで既に受験者の500人以上が死んでいる……レッドとノースの周りにはシーカーが80人程いて、彼らの衰弱しきった瞳はずっと白い石で出来た大きな門にばかりいっている……シーカー達は疲れて冷静になった頭でなぜ門がこんな所にあるのか……どこにつながっているのか……色とりどりの思考を巡らせる。
木々や自然に見守られ静かに波打つ湖の中心にポツンとある小さな孤島、そしてそこにある謎の門、以上の条件から受験者であるシーカー達は特に言われてもいないのにこれから起こることを予測して対応をする準備を始めている……その様子を伺うに今ここにいるシーカーの殆どが実力を人一倍持つ特別な者たちであると分かる。
そんな彼らの視線がほとんど同時に…一か所に集まる。
視線の特異点では軽量型の甲冑に金の紋章や勲章が沢山付いている白いジャケットを着た茶髪眼鏡の若い男試験官が落ち着いた様子……もしくは無気力な様子で話始める。
「それでは受験者の受け入れを終了いたします……皆さま湖付近から離れる事をお勧めいたします」
カシュッ…パァン!!
試験官がそう告げていきなりリボルバーをホルスターから抜くと空に向かって一発銃弾を放つ。
銃弾はとても高いところに撃ちあがると花火の様にはじける。
すると銃弾のはじけた所を中心にして黒い幕の様な物が広がり始め孤島を包みこむ。
試験官はリボルバーを
「それではまず私の自己紹介から……」
試験官は丁寧な口調を使って、シーカーに言葉を言い聞かせる。
「私は第一試験の担当を担います、第3神教区長ハル・テルシヴォアと申します……それにしても元気が無いですね皆さんこの山を登るくらいでその様子では……第一試験すら10人以上通るかどうか……」
そんなことを言ってから腰にぶら下げた分厚い本を悠長に読み始める挑発的な試験官の態度にシーカー達は猛ってゲラゲラ笑いヤジを飛ばし始める。
「おいおいそっちこそ大丈夫かぁ!カワイイ聖職者様よぉ!大人しく教会で神様にお願い事でもしといたほうが良いぜ?!じゃなきゃ俺らにぶち殺されちまうかも知んねぇからな!」
「舐めてんのかぁ!俺らが全員でかかればお前なんて一瞬でひき肉にできちまうぜ!」
猛男たちの熱気が幕に包まれた孤島を満たし始め、その熱気に当てられた男たちが更に熱気を発する。
レッドは男たちを避けて湖の方に逃げると汗を垂らしながら言う。
「すごいな……みんな相当気合入ってる……」
レッドが地面に座って事が収まるのを待っていると、そこに茶髪の気弱そうな少女が腰を低くして話しかけてくる。
「あ、あのぉ~」
「え?」
レッドが反応したことによって少女はあたふたと慌てながら名刺を差し出してくる。
「あ!えっと…んしょ!…私こういう者なんですが……」
名刺には万年筆でミルタス探偵所事務フェーナ・ミルタスと書かれていているが、レッドには読めない文字で書かれている為、彼は何もできずにただ唖然と立ち尽くしている。
「え、え~といきなりで本当に申し訳ないんですけど………その……この探偵所の所長になってもらえませんか?」
レッドは少女の言葉を受けてまず己の耳を疑った。
その後少しその場で考えた後に、処理を終えた頭で言葉を練りだす。
「いや……どうして?」
一方そのころ、熱気の中心付近では……




