7プリンが美味し過ぎて
翌朝起きると私は早速冷やして置いたプリンを確かめに行った。
私付の侍女のライラは支度をと言ったが私は待ちきれずにガウンを羽織ったままでキッチンに行った。
朝のキッチンではコックのバートンが驚いた顔で私を見た。
しまった。今バートンは忙しいはずなのに私ったら‥
「バートン。朝からごめんなさい。昨日作ったプリンが気になって」
正直にそう言うとバートンが優しく微笑んで保冷庫からプリント取り出してくれた。
黄金色に輝く‥なんてのは大げさだけど。
そこには、表面はつるんとして生まれたての赤ちゃんの肌ような滑らかさのプリンがあった。
「きれい‥」思わず声が漏れた。
「ええ、お嬢様。成功ですね」
「でも、まだわからないわ。食べて見なきゃ。でしょ?」
「そんなのうまいに決まってます。早速朝食に出します。ロニオ坊ちゃんが大喜びになりますよ」
私はロニオの喜ぶ顔を思い浮かべうふっと笑った。
そして支度を整えてダイニングに。
「お姉様おはようございます」
「ロニオおはよう。どうしたの?そんなに楽しそうな顔をして」
「だって、お姉様はりきってたでしょ。プリン出来たんだよね?」
ロニオが瞳を輝かせる。
私はもううれしくて微笑みながら話す。
「ええ、そうよ。心配で朝一番に確かめにキッチンに行ってしまったの。バートンが忙しいのに申し訳なかったけど、すごくきれいに出来上がってたのよ。朝食に出してもらうように頼んであるから一緒に食べましょうね」
「うん。楽しみ」
すぐに朝食が運ばれてきてトレイにはプリンもあった。
美しいお皿に取り出されたプリンは型崩れもしていなくてすも入っていない。
良かった。後は美味しいかどうか‥
私は出されたパンやオムレツの味さえもわからないほど緊張していた。
ロニオがパンやオムレツを食べ終わるといよいよプリンに手を伸ばした。
「お姉様、このプリン今までで一番きれいじゃない?つるんとしてて何だか食べるのがもったいないくらいだね」
ロニオはプリンにスプーンをいれるのを戸惑っている。
「ありがとう。さあ、食べてみて」
思わず緊張でごくりと喉がなる。
ロニオの可愛い指に握られたスプーンがプリンを一欠片すくう。そしてついにプリンがロニオの口の中に入った。
一瞬間があってロニオの目がぱぁ~と見開く。
「お、おいしい~。お姉様。このプリンものすごくおいしいよ」
そう言うと次から次にとプリンを口に運ぶ。
「そう?じゃあ、私も‥」
私もそっとプリンを一欠片すくい口に入れた。
うっ!うっ!うっ!うぅぅぅ~ん。おいしい~!
滑らかさが半端ない!口に入れた瞬間それは蕩けて何とも言えない美味しさが口の中に広がった。
「うぅぅん。おいしいぃぃ~」
「だよね。お姉様。ほんとにすごくおいしいよ。ねぇ、もう一ついい?」
「ええ、いいわよ。一杯あるから‥あっ、でも食べ過ぎるとお腹壊すかもしれないわ。ロニオ。あと一つね」
私はロニオがすぐにお腹を壊していたことを思い出し可哀想だけどふたつで我慢しなさいと言った。
はぁ~仕方ないな。我慢するよ。だって僕がお腹壊したらお姉様が泣くもんね」
「そうよ。ロニオが痛がったら可哀想でしょ‥」
「そうだ!お姉様。このプリン、ピューリ殿下にも食べさせてあげたらどう?だって今度遊びに行くんでしょ?」
「まあ、優しいのね。でもね。王宮に食べ物は持ち込めないの」
「そうなの‥じゃあ、お姉様のお友達に持って行ったらいいんじゃない?」
「ええ、そうね‥えっ?」
私は呆気にとられるがロニオは真剣らしい。
「ぼくね。お姉様を自慢したいんだよ。だって、こんなおいしいプリンを食べたらお友達はすごく驚くでしょ。うふっ。きっとお姉様すごいって思われるよ!」
つぶらな瞳は自信たっぷりに私を見上げた。
「そうねぇ‥」
どうしよう。健気なロニオを裏切れない。
こうして私はプリンを学園に持って行くことになった。
まあ、学園はお弁当の持ち込みも許可されているから特に問題はないんだけど。
どうせ今日も昼食は6人一緒に食べる事になるんだろうから、取りあえずカップに入ったまま6個を持って行くことにした。
学園に着いたらすぐに食堂に行って保冷庫に入れてもらうことにしよう。




