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5少しは打ち解けたかと思ったのに


 「アマリエッタ」

 いきなり名前を呼ばれて振り返る。

 「エディオ殿下。どうしたんですか?」

 そこにはエディオ殿下がいた。


 その後ろには学園内で護衛を務めるジヒト・ボートン侯爵令息がいた。

 殿下が通う学園では交代で数名の生徒が護衛を務めている。今週はジヒト様らしい。

 もちろんリスティの婚約者のタロイモ護衛を務めている。

 ジヒト様はボートン侯爵家の3男で卒業後は騎士隊に入る事が決まっている。

 実力はタロイが一番だがそれに次いで剣の腕がいいらしい。

 ちなみに護衛はあくまで護衛で殿下の安全を守るのが目的なので話に入ってくる事はない。

 私達もそれにはもう慣れている。


 殿下はすぐに話を始めた。

 「ああ、弟を遊ばせるって話が聞こえたが‥それならどうだ。ピューリ<5歳です>も混ぜてやってくれないか。あいつこの頃やんちゃで困ってるんだ。だから同じ年に子供達となら楽しめると思うんだ」

 殿下はいつものようにすぐに私たちに近づいてヴィントと私を見下ろした。

 「ええ、もちろん。ロニオもきっと喜ぶと思います。あっ、ヴィント様はいかがです?リビアン君もいっしょに」

 目の前にはさっきまで割といい感じだった雰囲気は一気に霧散していて、またいつもの渋い顔つきのヴィントがいた。

 「いや、殿下のピューリ殿下が来られるなら俺は遠慮しよう。実はリビアンが体調があまり良くなくて、一緒に走り回ったりはできないと思う」

 「まあ、かわいそうに」

 「いいじゃないか。ヴィントがそう言ってるんだ。あっ、そうだアマリエッタ。ロニオだけなら王宮に来い。ちょうどピューリが欲しがっていた子犬が手に入ってものすごく可愛いぞ」

 殿下は遠慮がない。まあ、それは無理はない事ではあるが、何だかヴィントに悪い。

 「いいんだアマリエッタ。俺のことは気にしなくていい。俺も弟の具合が悪いのに君を誘ったのが間違いだった」

 「そうだ。だから家に来い!」

 強引とも思えるが相手は殿下。私は気持ちを切り替える。

 「もう、殿下は強引なんですから。子犬がいるなんて聞いたら…殿下私がモフモフが好きなことを知ってて誘ってるんです?」

 「ああ、忘れるはずがないだろう。アマリエッタは子供のころから犬や猫が大好きだったからな」

 「もう、そんな事聞いたら行かないなんて言える訳ないじゃないですか。ほんとに行きますよ。いいんですか?」

 「ああ、ピューリも喜ぶ。じゃあ週末迎えに行く」

 「あっ、でも、ゾラ様は?」

 「ゾラは今度の夜会の準備がある」

 殿下はそっけないほど簡単にそう言った。


 あれ?殿下ってゾラ様と相思相愛じゃなかった。一緒に選ばなくていいの?と思うがそんなことは口に出さない。

 って言うか。それだと私たちもそろそろよね?

 私の視線は自然とヴィント様に向いた。

 「ヴィント様。それはそうと今度婚約披露のパーティがありましたよね。と言うことは近いうちに衣装の打ち合わせが必要じゃないですか。どうします?」

 「ああ、そう言えばアマリエッタが準備できなければドレスを贈らなければと思っていたんだ。指定したドレスショップに行って採寸やデザインを決めてくれればいいんじゃないかと思うんだが、出来ればデザインは我が家に家風に合わせてあまり華美にならないようにして欲しい」


 なんなのその言い方!まるで私がいつも贅沢で派手なドレスを着ているみたいじゃない。

 まあ、それは事実だから仕方がないとしても‥実際の私のことなんか知らないくせに!!

 思わず引くつきそうになる頬を精一杯なだめてそっと深呼吸。


 「ああ、そうなんですね。私、母がいないのでそんな気遣いも出来なくて申し訳ありません。でも、ご心配は要りませんわ。サルバート家に相応しい質素で地味なドレスにしますので」

 私は少し。いや、かなり気分を害された気がして言葉が辛辣になった。

 殿下がそのやりとりを見て口を挟んだ。

 「アマリエッタ。俺がドレスを用意してもいいぞ」

 ヴィント様が慌てて私の手を掴んだ。

 「アマリエッタすまない。そんな意味ではなかったんだ。君が構わないならドレスを贈らせて欲しいんだが」

 「ありがとうございます。でも、時間もあまりありませんし、今回は今あるドレスの中から一番地味なドレスを選びますわ。どうかお気になさらず」

 私はヴィントに掴まれた手をそっと離す。

 そして殿下の方に向くと「殿下も婚約者がある身です。思いつきでそのような事を言うのは誤解を招きますわ」と迷惑なんだけどオーラを醸し出した。


 殿下も言葉が過ぎたと思ったのだろう。一瞬声を詰まらせた。

 「…では、弟と一緒に王宮に招くことは許してくれるな?」

 「はい、それは喜んで」

 はっきり言って断れるはずがない。

 でも、子犬を見たらロニオはきっと喜ぶに違いない。そう思うと自然と口元が綻んだ。

 それにしてもヴィントはやっぱり私との婚約乗り気じゃなさそうよね。

 まあ、婚約はなかったことに何て言うことも出来るはずもないんだし、上辺だけでもとりつくろわないとね。

 さっきまでの気持ちはすっかり影を潜めて何だか気が重くなった。






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