32ロニオに何するのよ!
一目散に家の中に飛び込む。
何だか視界がおかしい。いつもより低く目に入る光景は色がない。
どうして?ううん、今はそんな事を言っている場合じゃないわ!
私はきゅっと体をひねると客間に急いだ。
『ロニオ!!』
私はそう叫んだつもりだった。
「ガルゥゥゥ」
ツッ!何いまの?
目の前に見えたのはかわいいロニオに突きつけられたナイフ。
ゾラが叫んでいる。
「な、何よ。護衛兵こいつを何とかしなさい!早く!」
「は、はい!」
ゾラが連れていた護衛兵ふたりが剣を抜いて私に切りかかる。
私は俊敏にそれをよけると思い切り後ろ脚を蹴りひとりの護衛兵の喉元目がけてかぶりついた。
「がふっ‥くっ!がはっ!」
そのまま無防備に護衛兵倒れる、私は倒れている護衛兵の腹を蹴り向かってくるもうひとりの護衛兵に飛びつく。
「この獣がぁ~!」
はっ?獣?誰の事よ。失礼な。あなた達が手荒なことをするからでしょ。
私はその後衛兵に身体ごと体当たりする。
剣なんかちょっと体をひねれば難なく交わせてしまう。
ちょ、私ってこんなに柔軟だった?
おかしいほど簡単に倒れる護衛兵に物足りなささえ感じていると。
「こ、これが見えないの?しっ!一体どこからこんなかだものが入り込んだのよ。いい?さっさと出て行きなさいよ。近づいたらこの子が怪我をするわよ‥」
ゾラが怯えながら更にロニオにナイフを突きつけた。
それにしても何を言ってるのよ。
私が獣に見えるわけ?あなた頭おかしいわ。ううん、こんなことをするんだもの相当頭はおかしい。
「ガォゥゥ~(いい加減にしなさいよ!)」
「きゃぁ~殺される‥」
ゾラは怯えてナイフを取り落しこっちにロニオを押し出した。
そのせいでロニオが前に倒れ込む。私はすかさず身体を滑り込ませてロニオを抱き留めた。
「くぅぅん(大丈夫?)」
「‥ね、姉様なの?」
ロニオの可愛い顔が目の前にあって思わず顔をこすりつける。
「くぅぅぅ~ん(もっ、かわいい)」
「やっぱりお姉様なんだね?でも、どうして狼になってるの?」
「ぐる?(えっ?)」
私はやっと自分の姿を見下ろす。
ゲッ!何なのこれは‥先からおかしいとは思っていたけど‥
だからゾラや護衛兵があんな顔をしてたの?
でも、どうしてこんな姿に‥
こんな姿と言えばヴィントが古の血を引いているから狼の姿になるって聞いたばかりだけど。
もしかして私にもその古の血が入っているとか?
でも、今まで一度だってこんな姿になった事はなかったわよぉ~。
「ぐぅぉぉぉん(どうしよう~)」
「きゃぁ~殺される~」
ゾラが私の咆哮を聞いてさらに慌てふためきふらふらしながら部屋から出て行くのが見えたが私はそれどころではなかった。




