27王宮に呼び出されました1
そしていよいよ呼び出しの日。
お父様が当日にタウンハウスに到着した。
呼び出しは午後からなので充分間に合ったが。
父は当然驚いた様子だ。おまけに私の頬にはガーゼまで。
「アマリエッタ。何があったんだ?」
「私だってよくわかりません。ゾラ様が私に嫉妬されて頬を殴られて怪我をしたことを詫びたいと言われてますが‥エディオ殿下はゾラ様との婚約に満足していないらしくてそれが原因ではないかと」
父は私の頬のガーゼを見てうなずいた。
「怪我の具合は?」
「大したことはないんです。殿下が大げさに‥」
「そうか。では、殿下の事は後だ。それよりお前とサルベート公爵令息との婚約はどうなってるんだ?」
「表立ってお話はありませんが、どうやらヴィント様のお婆様がこの婚約に反対されているらしいのです。それに彼には別に好きな女性がいらっしゃるみたいですし」
父は渋い顔をした。
「お前はどうしたい?この婚約は王子の婚約者候補として3年間お前たちを拘束したからと特別な計らいで公爵家との婚約になった事は知っているな?」
「はい、もちろんです」
「王命に近い婚約ではあるがこちらが嫌だと言う権利もあると言う事なんだ。だからアマリエッタお前がどうしてもいやだと言うなら断ってもいいんだぞ」
「ええ、ですが他にも問題があるのです。実はエディオ殿下はゾラ様との婚約に乗り気ではないようで」
父は眉を上げる。
「だが、相手はバーラ国の王女だったはず、王家もそんな婚姻を取りやめることは無理だろう?」
「ええ、それはもちろん殿下もわかっておられるんですけど‥それ以外に女性を娶りたいと思っておられるのではないかと‥」
父ははっと顔を上げると私を見た。
「もしかしてそれがお前なのか?」
「そうみたいなんです。いえ、直接言われた訳ではないんです。でもそんな気がして」
私はそれとなしに告げる。
「あぁぁ、お前は殿下が休養に来られた時とても仲が良かったからな‥子供の頃の楽しかった思い出をそのまま引きずられているのではないのか?」
「ええ、きっとそうなんですよお父様。殿下は私を買いかぶり過ぎなんです。私は殿下のおそばに入れるような立場ではないのに‥いえ、そんな堅苦しい生活は私には無理です。お父様だって私が息が詰まるような王宮生活が無理だって知ってるでしょう?」
私はお父様に詰め寄る。
「ああ、アマリエッタは寂しがりで甘えん坊で感情が豊かで意地っ張りで貴族とは相反するような子だからなぁ」
父は困ったもんだという顔で私の髪をそっと撫ぜた。
「アマリエッタ。取りあえずサルバート公爵家との婚約はこのままにして殿下の話は断る事にしよう」
「ええ、それしかないですね。でも、時期が来たらサルバート公爵家にもお断りの話をお願いします」
この1週間ヴィントからは何の連絡もなかった。
これはどういう事かもう答えは出ていると思っていた。
私はいつまでもうじうじ気持ちに区切りがつかない状態は耐えられないとはっきり覚悟が出来た。
「アマリエッタはそれでいいんだね?」
「はい、覚悟は決まりました」
私はお父様の顔をしっかり見つめてそう答えた。
お父様はそれをしっかり受け止めると私を抱きしめた。
「辛かったな。これが終わったらしばらく領地に帰るか」
お父様の優しい言葉が心に染みて行く。




