26殿下。不敬ですよ
放課後は殿下が家までついて行くと言うので激しく抵抗した。
だって大ごとにしたくない。
それに迷惑。
もし一緒になんか帰ったらエディオ殿下が私に告白でもしたら‥
私はどうすればいいの?
王族が一声かければヴィントとの婚約なんか吹き飛ぶに違いない。
そうなったら、私はエディオ殿下の妾にと命令書なんかが届いて学園を卒業と同時に閨の係として召し上げられる何てことになりかねない。
ううん、勘弁してよ。
だからお見舞いにも来ないでとはっきり伝えておいた。
その夜エディオ殿下から花束と手紙が届いた。
色とりどりの花束はお見舞い。カードにはけがを負わせて申し訳なかった。落ち着いたら話がしたいと書いてあった。
手紙は王宮に呼び出しの内容だった。
私は急いでお父様に知らせを届けるよう指示をした。
わが領地から王都までは馬でかければ半日で着くので呼び出しの日時にはぎりぎり間に合う。
何だか嫌な予感がした。
翌日。エディオ殿下は馬車乗り場で私を待っていた。
馬車が着くなり扉を開けると覗き込んで来た。
「アマリエッタ、具合はどうだ?傷は痛むか?」
私の顔を見るなり心配していたとばかりに聞いて来る。
「殿下。大袈裟です。こんな傷大したことはありません」
「そんなわけないだろう?いいから手を」
殿下がすっと手を差し出す。
私は仕方なくその手に手を乗せて馬車を下りた。
「ゾラ様はどうされてますか?もう気になさらないよう言って下さい」
「あんな奴の事など庇うことはない。あいつはしばらく休ませる。だって、あいつがいたらアマリエッタも安心出来ないだろう?まったく、あいつは気性が激し過ぎる。婚約の事ももう一度考えるつもりなんだ」
「もう、殿下。そんな子供みたいなこと‥国と国の約束なんですよ?」
ゾラ様はあいつ呼びになっていた。
私達は学園に向かって歩き始めた。
「調べたらあいつは国でも問題を起こしていたんだ。知っていたら婚約なんか結ばなかった」
「そんな事言って、国王に叱られますよ」
「父上はわかってくれるさ。そうだ。あの手紙見てくれたか?」
「ええ、怪我のお詫びにかこつけてわざわざ王宮に召喚でしたね」
「召喚じゃないだろう。お詫びがしたいんだ。一度俺の婚約の事も話し合う時が来たと思っているんだ。アマリエッタも婚約を考えなおす時なんじゃないのか?」
直球過ぎて目が狼狽えた。
えっ?どうして知ってるの?
私の顔色を伺う殿下がやっぱりなと眉を下げた。
「ヴィントはシルフィが好きなんじゃないのか?アマリエッタだって気づいてるんだろう?」
「そんな事わかる訳ないじゃありませんか!」
「うそだ!ヴィントと婚約解消するつもりなんだろう?だったら俺と‥」
「殿下。不敬ですよ」
「不敬って‥それをお前が言うのか?」
殿下は少し呆れた顔で言う。
「だってゾラ様から見れば失礼な話じゃないですか。こんな所で勝手にこんな話。私は続けるにしても解消するにしてもきちんと相手と話をするのが礼儀だと思います」
「ああ、もちろんそのつもりだ。だから王宮に来てくれるよな?」
「まあ、一度はきちんと話をするべきだと思いますから‥私もゾラ様に勘違いされたままなのは嫌ですからね」
「傷つくな。その言い方‥俺はお前が好‥「殿下。不敬です!」‥‥そういうところもす「だから!」はいはい、わかったから」
「って言うか、いつまで手を繋いでおくつもりです?」
私ははっとして殿下の手を振り払った。
「あのな‥まあ、いいか。アマリエッタランチは一緒に食べるからな」
殿下はそう言うと教室に入って行った。




