23久しぶりに学園で
その翌週。ヴィントは学園を休んだ。理由は体調不良。
それって、もしかして私の作ったサンドイッチにあたったとかじゃないでしょうね?
ううん、そんなはずはないわ。私もロニオだって食べたんだもの。私達は何ともなかったんだからヴィントやリビアンがお腹を壊したとは考えられないはずよ。
心配だけどマリー様に会ったら何を言われるかわからないと思うと見舞いに行く事には躊躇した。
数日後学園でヴィントと顔を合わせた。
何だか気まずい。
「ヴィント様。具合はもう良くなられたのですか?」
「ああ、アマリエッタ心配してくれたのか?それはすまなかった。いや、リビアンが熱を出して、あいつ甘えん坊で俺がそばにいてやらないと不安がってな」
彼は照れ臭いのか後頭部をポイポリかきながら話す。
「アマリエッタに心配してもらえるなんてなぁ…」
ぼそぼそ小声でつぶやいている。
「心配するに決まってますよ。体調不良なんて言われれば‥あの‥もしかして私の作ったサンドイッチに問題があったとかではないんですよね?」
もちろんそんなはずはないって思っているけど。
ヴィントの目は点になる。
「ハハハ。まさか。そんなことあるはずがないだろう?リビアンはどうやら子供のかかる病らしいんだ」
「もしかしてハルオンです?」
「ああ、そうだ。もしかしたらロニオに移ったかもしれないな。ロニオは大丈夫か?」
「ええ、ロニオはもうかかりましたから心配ありません。それよりリビアンの容体は?」
「ああ、数日高い熱が続いたせいでかなり衰弱しているんだ。高熱は治まったけどすっかり弱ってるよ」
「まあ、可愛そうに‥私が行ってスープやゼリーなんかを作ってあげたいけど、先日あんな事を言われたばかりだから‥とにかく乳製品やバナナ。カボチャのスープとかパンがゆなんかもいいわ。消化が良くてリビアンが好きな物をしっかり食べさせて上げて‥そうだ。帰りにプリンのすごく美味しい店があるからお見舞いに届けてもらえませんか?」
私は思いつく限りのことを口早に話して行く。
「アマリエッタ。ほんとに君って人は‥」
いきなりヴィントに両手で手をすくい上げられるように包み込まれて手の甲にキスを落とされた。
「なっ!いきなり‥もっ、ヴぃんとさま」
「か、かわいすぎる‥くぅぅぅ、リビアンが羨ましい」
口ごもる彼は真っ赤になって俯き肩が震えている。
手を握って来たのはあなたなのに。
やっぱりヴィントは私を好きって事?
でも、シルフィ様との関係もはっきりしないし、もしかしてふたりとも好きだったりして‥
うそ。そんなの想定外だし。そんな気持ちなんてわかりたくもない。
どうしてこんなにもやもやするのよ。
私、自分で思っているより彼の事好きなのかも‥
いやだ。私どうすればいいのよ!
「ちょっと!ヴィント様。アマリエッタ様とは距離をおけって言われてるじゃないですか!!」
シルフィがつかつか近付いて来ると私とヴィントの間に割り込んだ。
私は急いでヴィントに握られていた手を振りほどいた。
ヴィントが手を振り払われ戸惑ったみたいだったがそれはすぐにシルフィへの怒りに変わった。
「おい、シルフィ何するんだ。今、アマリエッタと話をしてるんだぞ!」
「何よ!マリー様がこんな婚約解消させるって言ってたわ。アマリエッタさん。あなた図々しいのよ。あなたみたいな人がヴィントといっしょになれるはずがないでしょ!離れなさいよ。すぐに婚約はなくなるんだから‥覚悟しなさいよ!」
「シルフィ。勝手な事を言うな!俺はそんなの認めてない。お婆様が何を言おうと婚約は解消しない。なっ、アマリエッタ信じてくれ!」
「そんな強がり。いつまで続くのかしら?国王だってマリー様が認めないって言ったら言うことを聞くに決まってるじゃない」
私はふたりの会話のやり取りを交互に聞いて行く。
もう、どうなるのよ?
もう少し前だったら婚約解消を喜んだかもしれない。
でも、今の私はヴィントを婚約を解消したくないって心が叫んでいる。
こんな二股男なのに?
でも、私はまじでヴィントを好きになってしまったらしい。
「はぁ、はぁ、はぁ、アマリエッタすまない。少し気分が悪いから失礼する‥」
ヴィントは辛そうに身体を折り曲げふらふら私から離れようとしている。
シルフィが駆け寄り彼に肩を貸すとヴィントはそれにすがるように彼女の肩に腕を回した。
そしてふたりはその場を離れて行く。
これって‥これって‥
私は言葉も失ってその場に立ち尽くしてしまった。




