19彼の屋敷に行きます4
使用人がお茶を運んでくるとリビアンの侍女も下がって後は4人になった。
何を話そうかと迷っているとロニオが早速話を始めた。
「リビアン。きょうねぇ、お姉様が騎士のふくをつくって来てるんだ。これを飲んだらいっしょに騎士ごっこをしない?」
少し自慢げにロニオがリビアンに言う。
「騎士のふく?あの‥アマリエッタさま、それはぼくに?」
リビアンは金色の髪で碧色の瞳を見開いて尋ねる。
私はうれしくなってリビアンに「ええ、気に入ってくれるかな?」そう言いながら持って来た包みを広げた。
リビアンは立ちあがって私の所に走り寄ろうとした。
「こら!リビアン行儀が悪いぞ」
「お兄様ごめんなさい」
「あの、私の方こそごめんなさい。お茶の途中なのに‥これを飲んだら見せてあげるから安心してね」
「はい、それ、ぼくのためにつくってくれたの?」
そわそわしながらもお行儀よく果実水を飲むリビアンが可愛い。
「はい、ロニオと色違いにしてみました。そうだ。こちらに模造剣があったら後でお借り出来ますか?」
「うん、ぼく、もってるよ。ロニオ。後でいっしょににあそぼうよ」
「うん」
良かった。ふたりは意気投合したみたいで一安心。
「アマリエッタは裁縫も得意なのか?プリンを作ったり子供の服を作ったり‥多才なんだな」
「そんな事はありません。料理は少し作りますが簡単な物ばかりですし、裁縫と言ってもフェルトのような生地を縫う程度ですから」
「それでも小さな子供を喜ばせるには充分だろう?」
「まあ、母が亡くなってロニオは寂しい思いをしていますから少しでも寂しさを和らげてやりたいと思って来たので」
「じゃあ、俺達の結婚にぴったりだな。俺は結婚したらリビアンとロニオとは一緒に生活するつもりなんだ。アマリエッタもそのつもりなんだろう?」
「ええ、もちろん。ヴィント様がよろしければ」
私はヴィントがそう言うまで結婚後にロニオの事をどうするかなど考えていなかった。
もう、私ったら‥そんな当たり前の事に気づかないなんてどうかしてる。
だって婚約したばかりで結婚後の事など考えてもいなかった。
でも、こうやってヴィントがはっきりとふたりの面倒を見るつもりと分かってすごく安心した。
これなら彼との結婚を前向きに考えて行けるかもしれないわ。
お茶が終わるとリビアンはさっと立ち上がりロニオを部屋に誘った。
「お兄様。ロニオをへやに連れて行っていいでしょう?」
「ああ、もちろんだ」
「アマリエッタさまも行こう!へやに着いたら騎士のふく見てもいいでしょう?」
リビアンもロニオもはしゃいでいる。
私とヴィントは後ろからふたりの跡を追いかける。
リビアンの部屋に入るとすぐに騎士の服を取り出した。
「これなんだけど‥どうかしらリビアン」
リビアンが差し出した服を手に取るとすぐにそれを着た。
ロニオも急いで騎士の服を着てマントを羽織る。
ソードベルトも装着しておもちゃ箱から模造剣を2本取り出し一本をロニオに渡すと残りの模造剣をソードベルトに差し込むとマントを羽織った。
その間にヴィントは木馬をもう一つどこからか持って来てリビアンのものであろう木馬の隣に置いてくれた。
「どう?お兄様。ぼくも騎士にみえる?」
「ああ、ふたりともすごくカッコいいぞ」
「リビアン気に入ってくれた?」
「うん。すごく。アマリエッタお姉様ってよんでいい?」
「ええ、もちろん」
リビアンはものすごくいい笑顔で笑った。
ちょーかわいい。
「ロニオきいた?ぼくたちカッコいいだって」
「うん。リビアンあそぼぉ~」
ふたりは木馬にまたがり模造剣を振り回しマントを翻す。
ひとしきり木馬で模造剣を振り回すとそれでは物足りなくなったらしく今度は部屋の中を走り回る。
私はここでも助けを待つお姫様役を仰せつかり、部屋の隅で助けを待つ。
さしずめヴィントは悪の大魔王張りの悪者役にされてふたりはヴィントにもう攻撃を仕掛け無事に姫(私)を助け出した。
気が付けば私は最初の嫌な出来事も忘れてものすごく楽しい時間を過ごしていた。




