13王宮に遊びに行く1
翌日は学園は休みで約束通り王宮に行く事になった。
迎えの馬車が来て私とロニオは一緒に王宮に向かった。
ヴィントとはあれっきり話が出来ていなかった。
だって、あんなところ見せつけられたら‥
私はむしゃくしゃした気分だったが、今日はロニオとピューリ殿下に楽しく過ごしてもらわなくてはと前日少し準備をした。
「お姉様、それはなぁに?」
ロニオは私が持っている荷物が気になるようだ。
「これ?なにかな?ロニオとピューリ殿下がすっごく楽しめるように姉様は準備をしたのよ」
そんな事を言ったのでロニオのワクワク感を煽ってしまった。
「見せて、どんな楽しい事なの?」
ロニオは私のドレスの袖を引っ張ってその包みを覗こうとする。
「ロニオ。あなただけ見たらピューリ殿下に悪いでしょう?だから着くまで待ってちょうだい」
「ねぇ、お姉様見せてよぉ~。見たい。見たいよぉ~」
ロニオは私の弱いところをよく知っている。涙をぽろぽろこぼしながら泣く。
そんなんじゃいけないと分かって入る。でも、可愛い弟に泣かれると私はすぐに降参してしまう。
「もう、ロニオったら、泣いてもダメな事もあるのよ‥でも、ほんの少しだけなら見せてあげるから、ほら、もう泣かないの」
私はロニオの頬を流れる涙をそっと指で拭ってやる。
「うん、少しだけ」
そう言ってニコッと笑うロニオの笑顔は殺人級だ。
私の殺伐とすさんでいる心に魔法のような癒し効果が。
そっと包みの一部を見せる。
「これなぁに?」
「これは騎士隊が着る服をまねて作った子供用の服よ。これはマントの一部。今日はピューリ殿下と一緒に騎士になって遊ぶのよ。王宮には護衛騎士がたくさんいるの。ロニオとピューリ殿下も今日は騎士になって遊びましょうね」
「僕たち騎士になるの?それってすごいよね。剣はどうするの?」
「王宮には模造剣と言って木でできた剣があるはずよ。それを借りればいいわ」
確か殿下が私の所に来た時にそんな遊びをしたと言っていた記憶があったし貴族の男の子には模造剣は必需品といても過言ではないので大丈夫だろう。
今日のロニオはひざ下のズボンにブーツを履いていて、白いシャツにベストを着用している。
柔らかなフェルト生地のベストを作り茶色の革で肩当てを縫い付けて胸ポケットやウエストベルトも付けた。
紋章型のワッペンもあったからそれも縫い付けて見た。
ついでに剣を下げるソードベルトも作ってみた。
まあ、いらいらして寝れないから気を紛らわそうと作り始めたんだけど、意外とかわいく出来てつい朝方までかかってしまった。
おかげで寝不足ではあるが。
そうやって期待を胸に私とロニオは王宮に着いた。
出迎えは護衛騎士。すぐに案内されてまずは殿下に挨拶に向かった。
エディオ殿下は王宮でも一般的な貴族が通されるらしい客間で私達を出迎えてくれた。
なので、他の王族の方には出会う事もなかったのでほっとした。
まあ、王子妃教育で何度も王宮を訪れてはいたがそれでも客としてきたのは初めてだ。
殿下はソファーに座りくつろいでいる。私達は案内されて殿下の向かいのソファーに腰かけた。
すごく緊張する。こんなところ来るべきではなかったんじゃ?
だって場違いだわ。王子妃教育の時はローザンヌ達も一緒だったしそれにこんな豪華な部屋じゃなかったから。
「アマリエッタ、そんなに硬くなるな。いつもと同じでいいぞ。そのドレス似合ってるな」
エディオ殿下が私を見て嬉しそうに話をする。
そう?王宮に行くんだからって少し張り切り過ぎた感もあるけど‥
今日のドレスは王都でも有名なデザイナーのドレスだが生地は厚手でレースなども付いていないすっきりしたデザイン。
淡いピンク色から下に向かうにつれて濃い赤色になって行くグラデーションカラーのものでデコルテは見せるけどそんなに襟ぐりも大きく開いていなくて裾の広がりも控えめなデザインになっている。
子供と遊ぶにはピッタリじゃない?
「ありがとうございます。ほら、ロニオ殿下にご挨拶でしょ?」
ロニオは緊張しているのかずっと顔が笑っていない。
「やあ、君がロニオかい?俺、いや、僕はエディオと言うんだ。よろしく頼む」
「はい、王国の若き太陽。エディオ殿下にご挨拶申し上げます。僕はロニオ・ロータネクです。5歳です。今日はお招きありがとうございます!」
ロニオは緊張しながらも完璧な挨拶が出来た。
すごいじゃない。ロニオったら可愛い。
私は可愛すぎるロニオを抱きしめたくなったがぐっと堪える。
殿下も驚いてロニオに話をする。
「ほう、すごいな。俺が5歳の時にはここまで挨拶は出来なかった気がする。ロニオ、今日は君と同い年のピューリと遊んでくれるか?」
「はい、殿下。お姉様がピューリ殿下と僕に騎士の服を作ってくれたんです。だからピューリ殿下と騎士ごっこがしたいです!」
なっ!ロニオ。余計なことを‥
「アマリエッタが?いつそんなものを作ったんだ?あっ、そう言えば昨日のプリンすごく旨かったな。それに今度は服を作ったのか?アマリエッタの才能には驚かされるな」
「そんな期待するほどのものではありませんから。フェルトでベストを作っただけで‥」
「いいから見せて」
私は仕方なく包みを開く。
殿下は立ちあがってそのベストとマント。それにソードベルトを手に取る。
「ㇰッ!すごい。これはピューリも大喜びするぞ」
そこにピューリ殿下がやって来た。




