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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

ギャランディーハンター明美

もう日の沈んだ部屋に轟音が響いている

「もうやめてくれ! そこはギャランドゥーではなく十二指腸だ!」

「おだまり!! 柔毛だって立派な毛よ!」

 ふるさと納税の返礼品で手に入れた核弾頭(違法)によって主要国家全てを滅ぼした明美はこの世のすべてのギャランドゥーをむしりとり、それをヘアバンクに寄付する慈善活動を行っていた。

「もうすぐシフトなので帰ります」

下半身の20%を失った青年は暗闇に消えた。

「もうすぐ12年になるのね」

 明美は所々かけたロケットを取り出した。そこには目鼻立ちのはっきりとした青年とまだギャランドゥーにまみれていない頃の明美の姿があった。まだふるさと納税を知る前、年収1000万を超えてしまった明美の彼氏ジャクソンは政府からの激しい税の取り立てに耐え切れず、明美の前で爆発四散した。ファールフライがよく飛んでくる試合でのことだった。後日明美は母親と一緒に区役所に火をつけ、母だけに罪を着せた。今思えば、これから修羅の道を往く明美の最後の親孝行だったのだろう。

「愛に生きたかっただけなのに」

 後になって分かったことだがジャクソンの遺体からは致死量の放射線が検出された。これは明美のために原子炉側を普段から歩いていたジャクソンの優しさからくるものだった。それ以来明美の行動理念は一つ、カミソリ負けで泣いている女の子を一人にしないこれだけである。

どうも世間一般ではこの行為を偽善と呼ぶらしいが、明美にとっては生きる希望そのものでありどんな論理でもそれを否定することはできなかったのだ。事実現時点で明美の追跡を免れたギャランドゥーはなく、家賃を12年間滞納することに成功している。

 だが、どんなにギャランドゥーを引きちぎっても救われない魂が一つある。明美はそれに気づくのにあまりにも多くの時間を要した。口では誰かにためにと言っておきながら、その実ジャクソンを失った悲しみを埋めるために毟っていただけに過ぎないのだ。この際動機は関係ないだろう。事実救われている人が多くいるのだから。しかしこの毛にまみれた手でジャクソンを抱きしめることなどできない。いつしかギャランディーハントこそがジャクソンを遠ざける要因になってしまったのだ。それに気づいた明美にはギャランドゥーと柔毛の違いにも気づけないほどにまで精神をすり減らしてしまった。

「この暮らしももう長くはもたないでしょうね」

明美は半ば自暴自棄のように見える。事実手首には多くの切り傷が見え、明美の公式アカウントでは彼女のリスカが2分に一度挙げられている。リスカbot界の巨匠である。

 そろそろ私の番だろうか、この手記をここに残す。いつの日か勇気あるギャランディーダンディーが明美を滅ぼしてくれることを祈る。


2:風吹けば名無し

>>1 お人形片づけるで~



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