第0話ー灰の刻印
初心者です。完全に趣味で書いてるんで、日本語がおかしいところもあるかと思いますが温かい目で見てください。
楽しんでくださると幸いです
轟音とともに、空が炎に染まっていた。鋼のぶつかる音、兵士たちの叫び声、そして魔法が炸裂する音――すべてが混じり合い、王国全体を震わせていた。戦争が、すぐそこで繰り広げられていた。
少年は、その場で立ち尽くしていた。奴隷として、ただ命じられた通りに働く日々の中、彼には戦争の意味など理解できなかった。ただ、目の前で起こっている出来事が、何か取り返しのつかないことだという感覚だけが彼の胸に迫ってきていた。
王国の城壁が揺れ、遠くの塔が崩れ落ちるのが見えた。兵士たちは必死に敵国の軍勢に対抗していたが、その戦線は徐々に押し返されていた。彼らの動きは焦りに満ちており、逃げ場のない絶望感が漂っていた。
“逃げろ”――どこかでそう聞こえたが、少年の足は動かなかった。
空気は熱を帯び、戦場の匂いが街中に充満していた。爆発音が響き、瓦礫が飛び散る。敵の進軍が王国の中心部に迫り、周囲は恐怖と混乱で溢れていた。奴隷である少年にとっては、命じられた場所から動くことさえ許されていない。だが、それでも、彼は何かがこの先にあると感じていた。
ふと、空気が変わった。城の方角から、異様な熱波が襲いかかってきた。
少年は顔を上げた。目に映ったのは、天を切り裂くような炎の柱。それはただの炎ではなかった。何か得体の知れない力を感じさせる。まるで、生きているかのように、渦を巻いて城を飲み込んでいく。
“何だ……?”
彼の胸に冷たい恐怖が広がった。その炎の中心に、何かがいた。はっきりとした形ではなかったが、少年の目には、炎の中で動く影が見えた。人でもなく、獣でもない。巨大な存在が、ゆっくりと蠢いている。誰も、その正体を知ることはなかった。
足が動かない。恐怖で全身が凍りつき、思考さえ止まってしまった。目の前で起こっている光景は、現実のものとは思えなかった。ただ、炎と影の中に潜む「何か」に、彼の視線は釘付けになっていた。
轟音が再び響き、城が崩れ始めた。瓦礫が空中を舞い、炎がさらに燃え上がる。その瞬間、上空から崩れ落ちた瓦礫が彼の頭上に直撃し、首元に激しい熱と痛みが走った。
“痛い……”
少年は倒れ込み、意識が遠のいていく。焼けつくような痛みが、彼の首元を襲い、視界がぐらついた。音が遠のき、周囲の喧騒が次第に静かになっていく。ただ、目の前の炎の中にあった巨大な影だけが、はっきりと彼の頭の中に残っていた。
どれくらいの時間が経ったのだろう。
少年は、崩れた瓦礫の下で目を閉じたままだった。痛みも、周囲の喧騒も、すべてが遠い。意識が薄れ、ただ静寂だけが耳に響く。どれほどの時間が経ったのか、彼には分からなかった。何時間、いや、何日が過ぎたのかもしれない。もはや、それを確かめる力さえ、残っていなかった。
ふと、耳元で微かな声が聞こえた。
「……生きているか?」
その声は、遠くから聞こえてくるようだったが、どこか優しさを含んでいた。少年はわずかに瞼を動かし、ぼんやりとした視界の中に、黒いローブをまとった人物が立っているのが見えた。
彼の体は、ゆっくりと持ち上げられた。冷たい手が彼の肩に触れ、意識を失いかけていた少年を抱きかかえる。少年は、かろうじて目を開け、その人物の胸元に目を向けた。そこには、灰色の不死鳥のようなシンボルが刻まれていた。
「まだ、間に合う。」
その言葉が耳に届いた瞬間、少年は完全に意識を手放した。