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ドナルドソン侯爵家

 好き勝手にやっているのと自由気ままというのは、意味が違う。


 ドナルドソン侯爵家の人たちは、わたしのことが気に入らない。


 それはそうよね。


 当主が承認しているとはいえ、悪評高い公爵令嬢がやって来てわがもの顔に振る舞っているのだから。


 その証拠に、最初は敵意と悪意満ちる中で生活がスタートした。


 とくに義父にあたるモーガン・ドナルドソン、それから義母のアイラは、まるでわたしが彼らの息子を殺して侯爵家をのっとるつもりでもあるかのように敵意に満ち満ちていた。


 使用人たちも同様である。


 それはそうよね。


 義父母が散々わたしの悪口を言っている。そのわたしにたいして、みんながいい印象を持つわけがない。


 というわけで、わたしがここに来た当初は毎日が大変だった。と言いたいところだけど、それも適当にかわしたりやりすごしたりで結構面白かった。つぎはどんな意地悪やいやがらせをしてくるのかと、楽しみにしていたくらいである。


 ドナルドソン侯爵家が武闘派の家系の為、モーガンもまた軍で将校をしていた。が、モーガンは無類のギャンブル好きに加えてレディ癖が悪い。彼は、早々に引退して当主の座を息子に譲らねばならなかった。彼は、引退後も本来ならおとなしく領地や屋敷の管理をすべきところを、ギャンブルやレディ遊びをやめることが出来なかった。そして、妻のアイラである。彼女は、そのような夫の不行跡を諫めてもききいれないどころか、暴力をふるわれてしまっていた。彼女は、そこからくるストレス解消や現実逃避をする為にひたすら金貨を消費するようになった。それこそ、湯水のごとく散財し続けた。


 ドナルドソン侯爵家は、この二人によって家運が傾き落下し、あらゆる意味でヤバい状態に陥っていた。


 当主を継いだばかりのフィリップがすこしでも軍で地位を上げる必要があるのは、その為である。


 当主不在の間、モーガンが目を光らせるべきところをまったく顧みなかったのをいいことに、ドナルドソン侯爵家の領地では、管理人や執事たちが好き勝手にしていたのは当然の成り行きだったのかもしれない。


 よくあるように不正や横領が横行しまくっていたばかりか、管理不行き届きで領地内では暴力や残虐行為がはびこっていた。


 モーガンは、それに気がついていたとしても無視した。あるいは、そもそも気がついていなかったのかもしれない。


 あらゆる帳面を見れば、ごまかされていることが一目瞭然だった。


 彼の節穴の目は、そんな程度の低いからくりをも見抜けなかったのである。


 わたしは、どうしようかと迷った。


 このまま知らぬ存ぜぬで好き勝手をしてもいい。


 わたしのすることなどたかだか知れている。


 ドレスや装飾品に興味はなく、美術品や珍品に興味があるわけではない。かといって、ギャンブルや男遊びをするわけでもない。


 このままボーッとときをすごし、侯爵家の家人たちと適当に付き合いながら心身を休める。


 正直、侯爵家が傾こうが爵位を取り上げられようが離散しようが関係ない。


 なにせわたしは、契約上の妻なのだから。なんの責任も負い目もない。


 どのくらいの期間契約上の妻であらねばならないのかはわからない。だけど、その間に侯爵家が潰れるようなことになれば、目覚めが悪いこともたしかなこと。


 わたしが嫁いだから潰れたのだとと、噂されるのはいい。わたしの噂といえば、悪いものばかりだから。


 しかし、契約上の夫に言いがかりをつけられでもしたら面倒くさいことになる。


 わたしとしては、せっかくこの国にやって来たのだから、静かにすごしたい。目立たず平和に生活をしたい。


 自由気ままにすごせればいい。


 そう願ってやまないのだけれど、周囲がそうさせてくれないの現状。


 それはともかく、結局、動くことにした。


 ボーッと静かにするのも飽きてしまうかもしれない。それならほんのちょっと刺激を得ても、ではなく与えてもいいかもしれない。


 というわけで、適当に動いてみることにした。


 まずは、義父母の生活改善から始めることにした。





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